【 とにかく召喚だ 】
第252話 とにかく召喚だ
こうして約10日後、新たな召喚者を呼び出す儀式に俺は参加していた。
前回と違い、今回からは俺は認識を外し、他者からは俺が分からないようにした。
前がちょっと油断し過ぎていたんだよ。
あそこで先輩とかが呼び出されていたら、多分――いや、間違いなく俺に気が付く。結構鋭いからな。そうなると相当に面倒だ。
一応、3庁の長官たちや、 ケーシュやロフレにも話してある。事情を細かく話すわけにはいかないので、”全ての召喚者が味方とは限らない”という事で納得してもらった。
やはり同じ人間。この世界でも、似たような事例はあるのだろう。実にあっさりと承諾してもらえたのはありがたい。
どちらにせよ不許可が出るとは思っていなかったが、話の速さと互いが不快にならない点は凄く良かった。
こうして、新たに6人の召喚者がこの世界に加わった。
男性が3人、女性が3人。全員、見た事もない人たちだ。まだまだ同じ人間が呼び出される可能性が高いという仮説は実証できそうにない。
彼らが目覚めるまでの間、俺はミーネルに案内してもらって最初に俺が召喚された場所に案内してもらった。
以前と変わらない服装。そして笑顔。くそう、寝取ってやりたい。浮気はどこまで許されるんだろう。そんな邪な考えが頭をよぎる。
だけど、『実は妊娠したんです。まだまだこれからですが、もし無事生まれたら祝福してあげてください』と言われた瞬間、そんな考えは吹き飛んだ。
あの貧相な男の子供だと考えると悔しくてしょうがないが、彼女はもう割り切っている。そして幸せなんだ。
胃に穴が開きそうだけど、祝福しよう。産まれてくる小さな未来のために。
そして目的の場所に辿り着いたわけだが――ちょっと呆れた。
あれからの破壊工作の影響か、他で戦っている間に
そして周囲も資材不足のせいだろう。ロンダピアザを囲む壁と同じ材質だった壁面は、石組に変わっていた。因みに中も。
ここまでやるなら解体してしまったも良いじゃないかと思うが、それはそれで記念碑として残したいそうだ。
随分とみすぼらしくなったが、呆れたのはそこではない。
ここは高校生の俺、が初めて地上に出た遺跡だ。
当時は地下墓地かと思ったが、それはあながち間違いではない。
周囲をぐるりと囲みように並べられた石棺。あれは俺を召喚するために犠牲になった人達の棺だ。この世界は火葬なので、中には家族ごとに纏めて数人から十数人の骨が入っているという。
それがずらり。改めて、俺という
もっとも、今の俺には地球も乗っているからな。こんな事で潰れてはいられない。
そしてあの時は気にもしなかった中央の部屋に入ると、そこはある意味何もない場所だった。
時計の塔が無い以外は、召喚の部屋を少し狭くした程度か。見たところ、他にはないもない。
「どうして俺を召喚する場所としてここを選んだんだ?」
「特に意味があったわけでは無いのです。ここはですね、神殿に行けない方のために、母が建てた祈りの場なんです」
神殿……あの高層ビルか。階段はあるが、基本はエレベーターでしか移動できない。出入りは結構大変だ。もともと予約制だそうだし、召喚者が来てからは希望者が殺到して大変だそうだ。
別に先見の明があったわけではないだろう。
今は復興のためにあの翡翠色の金属は全部持っていかれているし、ここはもう最初の召喚者を呼び出した犠牲者の為の墓地になっている。
それでもここを作った事で俺は呼び出され、結果としてラーセットは救われた。同時に、地球もまた生き残る機会を得たのだ。感謝しないといけないな。
ただやっぱり、ここに俺が召喚されたのはただの偶然だ。スキルがそう告げている。
おそらく、多くの犠牲者を出した強い祈りが俺の左手に刺さった時計の針に反応したのだろう。
まあ無駄足だったが、それが分かっただけでも良しとしよう。
その2日後、召喚者達に目覚めの兆候が現れたと知らせが来た。
うん、しっかり時間通りなのはありがたい。
経験から分かってはいたけど、まだまだ不慣れだからな。色々と心配もあったわけだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます