第208話 いよいよ侵入だ
青白い寄生モンスターの群れは包囲と言うより幾本もの線で行動していたので、隙間だけなら幾らでもある。
「それで、ここから壁を壊して入るの?」
「いや登る。ここで抵抗している人達の邪魔をしたくないんだ」
今この街は、全ての出入り口を閉ざして徹底抗戦している。そんな状態で、俺がトンネルを作って奴らを引き入れたりしたら大変だ。まさに悪逆非道の行為である。
今はここに敵がいないが、近場に通れる所が出来たら目ざとく見つける可能性がある。
実際、連中が幾筋もの流れになっているのは、通りやすい場所を判断する能力があるからなのだろうしな。
「それでどうやって登るの?」
どうやら
まあそういった所しか見せる機会は無かったし、仕方が無い。
「じゃあ――はい」
そう言って背中を見せてしゃがむ。
まあずっと背負って来たのだから
再び背中に感じる二つの膨らみが、俺に力を与えてくれる――なんて言うと、ド変態だな俺。
壁に足を当て、“落ちる”事を外す。ただそれだけで、まるで地面の上をいくようにすいすいと昇る。障害物がない分、地上よりも楽だ。
ましてや背中の二つの膨らみが、使ったスキルによる負担をすぐに癒してくれる。
うん、道中もこうしていればよかった。
まあ、道中は
一度上まで登ったら今度は降りるだけ。
登った
だが俺は違う。
「いやあああああああー!」
大丈夫、落下の衝撃は外すからと言っても聞く耳持たずだ。というか、自分の悲鳴で聞こえていないな、これは。
落下中に全景を確認するが、壁の高さもそうだが中も相当に広い。
超高層ビルは100棟ほどが健在だが、倒壊した跡が50ほどある。酷い有様だが、見通しはそれほど悪くはない。
ビル以外の建物は通常の民家等だ。だが相当数が燃えている。
中に入った連中は手当たり次第に襲うのか、都市の中に広がり破壊の限りを尽くしている。
もうこの街の抵抗も時間の問題だろう。
「中は思ったよりも統率が取れていない。これだと本体を見つけるのは思ったよりも大変そうだな」
「おちるー! ぎゃー!」
うん、ダメだ。細かな話は後にしよう。
俺はとにかく下へと落ちた。
ドスンという音と共に、アスファルトとはまた違うが綺麗に舗装された道路が陥没する。
だけど俺と
上から見た限りだと大きな塊が幾つもあった。
特に奥の壁がすごかったが、あそこには何があるのか……。
行ってみるかと思うが、ほぼ反対側だ。行くだけでも大変だな。
それに、改めて黒竜の事を考えた。狂って異物となり、外で暴れているという。
でも本当にそれだけか? 傷を癒し、時期を待ち、
もし黒竜のように、会話し思考する事が出来るのだとしたら、今戦っている場所にはいないかもしれない。
だとしたら高層ビルの上……いや、ダメだな。全部を確認する余裕なんて何処にもない。
とにかく一番奥まで行くとして、途中で集団となっている
大丈夫、何とかなる。
なぜって? そりゃ現地人がここまで抵抗出来ているからだ。その程度の
落ちた時は目をくるくるさせてこの世の終わりの様な顔をしていたが、取り敢えず水を飲んで少し休んだから完全に回復した。
切り替え早いなーと思うけど、この位じゃないと生きていけないんだろうな。
「作戦は説明した通り。道中で遭遇した細かなやつは、可能な限り避ける。それで各地で抵抗している場所の救援をしつつ情報を集めながら、奥にいる塊を目指す。OK?」
「分かった。つまりは最終地点がトンネルという訳だな」
「トンネル?」
「聞いていなかったのか? ……あ、トイレに行っていた時だな。ラーセットと違い、ここは首都以外にも衛星都市があるだろう?」
あーそれか。確かに気になっていたんだ。
幾ら複数の都市を持っていても、道中モンスターだらけなら独立国家と変わらない。単なる連合国だ。それも、いざという時に何の連携も出来ないな。
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