第178話 本人に聞くしかないか
「ええ、それは見た……と言うより何度も見せられたわ。
「気にしないでください。いや、気にしないでくれ。俺は
「……気にしてなかったわ。何かあったの?」
意外とそっち方面には
というか、先輩は誰とも結婚する気なんて無かったのではないだろうか?
その理由も、今はなんとなくわかる。とても口には出せないけどな。恥ずかしいし。
俺は
「それは変ね。
本当に
「幸運や新しい出会いですね。もしそのつもりで付けたのだとしたら、
「ごめんなさい。会う事も難しかったから、いつどうして指輪を付けたかも分からないの。でも驚いたのは本当よ。あの子が新しい恋人を作るなんて思ってもいなかったから」
まあその点は俺も驚いた。だけど――、
「俺は帰った事になっていたしね。この世界で生きていくうちに、他の誰かと恋人関係になっても仕方ないとは思う」
「
「俺もそう考えているけど、それでも
「……やっぱり分からないわ。ごめんなさい。あ、でも――」
「何か気になる事でも?」
「最初の日には、もう
それ自体は別におかしな話じゃないが……。
「私たちはね、ベテランの人たちと合流したの。それで3日目には、もう
「教官組から講習は受けなかったのか?」
「受けたけど、すぐ出発するって言ったから簡素な説明だけだったの。今思えば――ううん、これは余談だったわね」
右も左も分からない世界で、知らない人間にホイホイついて行くやつがあるか。
そりゃ教官組と呼ばれる人間が信用できるなんて保証はない。だけど立場ある人間は迂闊なことは出来ないし、この世界なら尚更だ。そうでなくても、最低限の情報は集めるべきだろうに。
最初に
――いや、こんな事を今考えても仕方が無いか。
「それでね、万が一の事を考えて
「謝らないで、先輩。今は先輩が居てくれるだけで十分だよ。俺に出来る事なら何でもするから、しばらくは心と体を休めよう」
「うん、ありがとう……なら、一つお願いしても良いかな?」
「なに?」
「これからは
先輩も真っ赤だが、俺も恥ずかしくて顔が真っ赤になった自覚がある。
ベッドの中では平気だけど、こうした日常で呼ぶのは慣れていない。
いや、今のこの入浴状態を日常と呼んで良いのかは多少疑問ではあるが。
でも、そんな事を言えるようになった先輩の回復が、たまらなく嬉しかった。
それに、今の話は俺にとっては何よりも重要な情報だった。
だけどそれは、先輩の話と矛盾する。
俺達はこの世界の法則や時の流れからは外れた存在。最初に言われたが、それは嘘ではなかった。歳は取らないようだし、それに時間の感覚が根本的におかしい。それに何より召喚された日も今話した事も、同じ“ついさっきの事”だ。
だから、先輩の記憶に間違いは無い。まあ気にしてない事は流石に曖昧になってしまうけどな。でも
そしてそうだからこそ、指輪を付けた馴れ初めを間違えるわけがないんだ。
やっぱり、無理やりにでも
だけど考えれば考えるほど難しい。容赦なく俺を攻撃してくる上に、スキルでも完全に防げない。だからと言って
やっぱり当面はどうしようもないな。
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