第147話 死なないはずの男
俺――
そして同じ日に召喚された同じ高校メンバーである
更に俺達を誘ったリーダーの
その間に俺達は一歩先に進む。まあ人類が探索している迷宮など、全体の1パーセントにも満たないという。宝は山ほどあるし、競争しているわけでもない。だが他者より先に進むというのは、それだけで十分な価値があるのだ。
そんな事を、自信満々に考えていた。もし時を戻せるのなら、全員殺してやりたい。
もちろん――俺も含めて。
〇 ● 〇
再び雨が降って来る。ぽつぽつとではなく、いきなり滝の様に。まだまだ天気は不安定な様だ。
周りに転がる死体……死体……死体……。もう誰も彼女に近づこうとすらしない。
ご立派な鎧を着た先輩は、コケたまま逃げるように
それよりも
先ほど思いっ切りぶん殴られたが少し返してやったからな。相当に驚いているだろう。
とはいえスキルで強化されただけでスキルその物じゃない。大した痛みは返らなかったようなので少し癪だ。こっちは死ぬほど痛かったんだがな。
「やってくれるじゃないか。それがお前のスキルって訳か。聞くと見るとじゃまるで違うな。どうしてあの時使わなかった」
塔での話なのは言うまでも無いな。他で戦った覚えなど無いし。
まあ、あの時は俺の本体はとっくに逃げていた。戦う気がそもそもなかったしな。
だからあの時
「お、おい、どういう事なんだ! そいつはスキル無しじゃなかったんだろ! スキルって何だよ!」
「事情は後で説明する。それより
ん? あいつのスキルは分からなかったが蘇生系か?
しかし死ぬと帰るって設定の世界で自己蘇生とかどうなんだろう?
なんて思ったが、動き出す様子はない。うん、普通に死んだままだな。
というよりも
「どういう事だ、
「お、俺だって知らないよ! 何があったんだよ! 教えてくれよ!」
▼ △ ▼
この世界には斬り落とされた手足でも、あるいは潰された内臓であっても、それこそどんな損傷でも治すアイテムがある。慎重に扱わねば危険ではあるが、命には代えられない。
その中でも特級に認定されるような治療薬は、どんな怪我でも瞬間的に治癒できる。
残念ながら自分達はまだ手に入れていないが、こいつは”特殊な事情”で持っていたはずだ。
しかもこのスキルはその名の通り、本人の意図に関わらず発動する。当然不意打ちも意味が無い。
だからこいつはどんな攻撃を受けても死ぬ事が無い。事実上の不死身と言って良い、
実際にこいつをどう殺そうか……それが悩みの種だった。
だが現実は見ての通り、どう見ても死んでいる。理由を知りたいのはこっちだ。
それに
何も判らない。予想すべき材料すらない。だが――、
「覚悟を決めろ、
だが、そんな言葉を
バケツをひっくり返した土砂降りの中、もう小さくなっていく
所詮は……。
いや――首を振り、怒りや未練を振り払う。
アイツは仲間でも何でもない。確かに僅かの期間だけ仲間だった。だけどあの日、それは脆くも崩れ去った。
それ以来敵だった。殺すタイミングを計っていたのは俺だ。今更逃げた所で、責める資格はない。
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