第3話 帰す?

「お水のむ?」


 まだボンヤリする。


 彼とは、いつもこうなる。



 イク、タイミングが……違う、イかせるタイミングが絶妙なのだ。



「大丈夫?」



「大丈夫じゃないよぉ」



「良かった?」



 問に、こくんとうなずく。



 彼はいつも余裕だ。

 悔しいけど。



 もうキスだけで濡らされてしまう。



 あの女にも同じ愛撫しているの?


 数ヶ月SEXはしてないなんて言ったけど、本当?



 でも本当かもしれないな。


 だってあんなに濃かった。


「愛美がきゅーってしてくるから、やばかったよ」



 それは気持ちよかったから。


 身体が勝手にそうなっちゃった。




 女はその瞬間に、そうなる瞬間に、離したくないと勝手に身体がそうなる。


「貴明さんも、いっぱい出たね」


 こんなに濃いのがゴムの中に出てるんだもん。


 あの女とは本当にしてない?



 それとも、毎日作られてるんだからこんなもの?



「今日とまれる?」


 ちらっと時計見たの、ちゃんと気づいたよ。



 だから聞く。



 困らせたいわけじゃなくて。


 あとどれだけ今日は時間があるのか知りたくて。



「まだ貴明さんといたいの」



 ペットボトルで水を飲んでいるその胸に、頬を寄せる。



 まだこんななに汗ばんで、心臓だってまだとくんとくんしてる。


 まだ帰せない。



「……いいよ」



 彼はちょっと考えて、そう答えてくれた。



 週末、明日は休みだ。

 あの女も。


 でも、彼は今ここにいる。



「ちょっとトイレな」


「うん」



 彼は私の目の前で携帯を開かない。



 きっと今頃、向こうに言い訳のメッセージでも送っているだろうけど、私は聞かない。


 目に入るよりいいもの。


 だって、彼はこっちにいるんだから。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る