第4話 帰らない人

「愛美ちゃんのパパってなにしてるひとー?」



「……知らない」



「なんで!? 私のパパはねぇ、船を引っ張る仕事なんだってー」



「ふーん」



 友達のパパがどんな仕事なのか、ちっとも興味がない。


 パパの仕事も知らない。


 パパじゃないし。





「おとーさんて呼んでいいよ」



 ある日突然おじさんが言いだした。


 あ、あれは私が小学校へ上がる日だ。



 その「おじさん」も突然だった。


 お母さんが連れてくる友達……彼氏だとは気づいていたけど、お父さんてことはパパになってくれるってこと?


 でもお母さんは「お外でお父さんの話をしちゃ駄目よ」って言ってた。



 おとーさんは毎日帰ってくるわけじゃなかった。



 でも帰らないこともなかった。



 旅行にも連れて行ってくれたし、買い物も欲しい物も買ってもらえた。


 誕生日もクリスマスも必ず。



 でも、授業参観とか運動会とか学校には絶対来なかった。



 おとーさん。







 お風呂だって、二十歳まで一緒に入ってた。

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