第36話 ロ・・・ボ・・・(ロボと痛み)
「これはええと、すなわち痛み刺激の
お華さんは書類に目を落としながら
「はい、ええ。人間にとって痛みを伴う心理現象をロボにおいてどう
そこにはロボの心理と言う定義困難で
「そうでしょうね。まずはロボが
「ええ、まあそうです」
「当然のことながら、生体の場合には痛みやその原因となる外傷ほかをちゃんと
「はい、分かります」
「ワン」
「ロボのみで考えれば、端的にはロボの
「確かにその通りだと思います」
「でも、社会における人間のサービングの場面では、人間を
「
「ええ、まあそうでしょう。でも。人間には手加減と言う概念があり、例えば格闘を行う場合には相手を殺さないように、当然ルールに
「そうですね。ですが嘆かわしい事に、人間同士でも相手の心を傷つける行為は常に行われています」
「人間は
「はい」
「ワン」
「インプットされるべき侵害刺激自体は創部に生じる電位差の微細な変化率で検知できるとしても、その事象をほかの体験、即ち人間における
「はあ」
「ワウン」
「あら、シロ、あなたちゃんと分かってるのね。つまり、その何事か善ではない、
「よく分かりませんが、そう言うものなのですね」
「ウワン」
「人間の場合にはそのようにして一々の体験データを
痛みにも相対性があり、センサが破壊されない程度の大きな刺激に遭遇すると、それがその後のリファレンスともなると同時に過去の標準はその後に
「ウワン」
「はい、分かります」
「それにご存じのように人間には
「なるほど」
「
そこでは単なる処理にとどまらず、様々な要素を含んだ色付けがなされては、それぞれが
「ウワン、ワン」
「はい。ですから、その困難性をある程度承知の上で、ここへあなたを訪ねて参りました」
「ええ、そうね。でもね、ニャンコで例えて言えば、それはニャンコ型ロボが塀の高さを見定めて、それにひょいと飛び乗ることよりも格段に難しい事ですの。他にもニャンコは到達すべき地点が想定より高い場合には、その平たく足掛かりの無さそうな塀を多少は滑りながらも、それを計算に入れて登り切ることまでを想定に入れているかの如くでしょう。つまり、適応力が高く、本当に失敗しにくい訳です。さらに痛みとは無関係なのですが、ニャンコの驚くべき素晴らしさは高度数百メートルから飛び降りたとしても、命を保ってのソフトランディングまでをこなすことなのです」
「フワン、フワン」
「このような機能は痛みのことはさて置いても、是非とも戦闘用の実践型ニャンコロボには
「ワン、ワン、ワニャニャン、ニャン」
「はあ。でもまあ実際のところ、ニャンコの事はどうでも好いのですが。人間のように痛みに敏感で、怒りに身を震わせるようなニャンコ型ロボこそは答えの一つでありそうですね」
「ニャンコの感傷回路でしたね。でも、ニャンコにおける応用は実はとても重要ですのよ。ニャンコのすごさはね、あんな可愛さと可愛い体であるにも関わらず何でもできるところにあるの。一見ぼたっとしていてまるで研ぎ澄まされていないように見えるけれど、身体能力上とても戦闘には向いているの。ほぼすべての動作を反射でこなす
「ワン、ニャン、ニャワン」
「はあ」
「だから、ロボにはちょっとどころか大いに難しいの。適度に勝手でいて最適な自動操縦が行われる、そんな無意識的反射的制御と言うかね。言わばニャンコの名人芸ね。でもやはり、ニャンコはすぐ怒るし、基本バカで気も
「はい、いいえ、ですからニャンコは要りません」
「ごめんなさい。ええと、感傷回路ね。構築の難しさはその侵害刺激の入り口のところからその後もずっとある訳なのね。途中の導線があって、人体の場合には何度か乗り換えがあってシステムの破壊を防ぐための
「ワン、パン、マン」
「はい」
「ではまず感覚の入り口のところからね。ロボの場合、キャビティつまり筐体の表面のスキンの材質の表面近傍に
「はい、分かります」
「ワン」
「そうすると今度は動物で言えばその侵害刺激を含めた感覚情報と言う何ものか、つまりは侵害圧、剪断圧の力積とその速度や加速度成分、スキンの破綻部に発生する抵抗や電流量の変化とそれによる電圧などの変化、あるいは温度成分などに分散、損失されるエネルギー情報の様々な成分の事なのですが、それらの情報を流通させる導線、動物で言えば大中小の成分速度を持つそれぞれの神経線維に担当させて、さらにそれらを取り
「はあ」
「ワフ」
「動物では硬くて少しフレクシブルな脊柱骨という防御機構を備えた構成物に守られた、単一の導線が寄り添って集合した太いコードと言う構造物があるのです。脳に向かう道のようなね。ロボの場合、必ずしもこのように一か所に纏める必要は無さそうですわね」
「はい、分かります」
「それにしても、ロボを人間に似せるって言うのは全く大それた考えよね。ロボと言う安直な構造様式で、生体としての人間のようなものを
「はい」
「例えば、ずいぶん昔の事でしょうけれど、お盆を過ぎて機会があって少々田舎めいたところへ行くと、その辺りの
無くしたおばあちゃんへの思いや思い出、おばあちゃんのお
「はあ。ロボにはおじいちゃんもおばあちゃんもいませんからね」
「ウワアオン」
我々ロボは何処へ行くのか TaqAkiyama0011 @tkiwaki1105
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