第32話 ロボバカ
うちはロボばかりで、普通一般に世間にあるような家庭のぬくもりと言ったものは感じられない。無駄なエネルギーはなるべく消費しないエネルギー節減プログラムが働いているとは言えである。人間をはじめ動物は生きていく上で常に稼働の為のエネルギー消費を行っており、つまりは生物は生きているだけでエネルギーの消費を行うと言うシステムなのだ。部屋の中はロボと言う金属の
地表近くの地中に隠れていた
プログラムは概ね発出後の時間経過に応じて
アンドロイドと呼ばれていた頃の我々の祖先は人間と単純型ロボとの間に位置する奇妙なものだったらしいが、それらはその内に様々な科学の学際的な分野の恩恵を受け、
私のような成長型ロボの場合は時限を以て幼年期の
こうして当然のことながらロボを
そのことがその分野の技術的な発展に貢献し、実際に良識を持つに至った我々ロボの先祖にあたる存在の幾許かは、神の如き人間の存在抜きには自分たちの世界は到底あり得なかったと考えたかも知れない。
人間の身体構築を見てみると筋骨格系でできた身体を縦横無尽に往還する血管とともに、これも往来する神経という電線が隈なく張り巡らされ、体表面にほど近い神経の先端部分には一つ一つ感覚のセンサや筋肉などのイフェクタが取り付けられている。また反射機構を持つ筋肉組織や腱組織には
こうしてイフェクタが
人間では60兆とも言われる様々な細胞たちがそれぞれに
人間としての何らかの完成を目指すと言うのは
「おまけにあれよ。人間ってさ、これらの体や脳という文句のつけようのないハードを
実際にはそれらを本来的に組み込むのではなく、育まれ行くサーキットを幾つも拵えた上でそれらを連関させ、種を植えてはそれが外界の刺激の受容とその反映に対する内省のような繰り返しの再計算による
「ウワンウワン、キュワン。ギュワン、ギュワン、ワンギュワン」
「だからさ、自然に積み上がるように出来上がる生物、
「ワウン、ワウン、ワン」
ロボに心を搭載すると言う人間の
「まあね。人間だって、自分の心の事さえ自分でもよく分からないんだもの」
「ワオン」
体の痛みや心の痛み、或いは悲しみや喜びなど、感情の
「やっぱり世界を転がりながら五感で感じる世界体験、経験よね。美味しいとか、の情緒的経験かしら、味わいやそれに伴う
「クウ、グワングワン、ゴワン。ゴハン、ゴハン」
前述のように人間を含む動物たちには各種の巧妙なセンサやイフェクタが備わっており、神経系が大きく関わる
「そうなのよね、まずは体中のオンラインの感覚器の出先で世界とつながるのね。そこで世界の表面からやって来る情報を体の表面のセンサで収集して、あとは広がりを持った体の中と言う場でぐるぐる回しつつ常々それを
「ウーワン、ウーワン。ワン、ウーワン」
植物に於いても状況次第で可変的な
ある程度以上の空間的広がりや時間的長さを生きる植物の場合、
こうしたプログラムを組むことは正しく種が
「まあ、そうね」
「ワン、ワンワ」
繰り返しになるが、それらは言わば何らかの学習プログラムが骨の
「そう、そうらしいわね、シロ。何億年もかけて出来上がって来たらしい、何だかとても気の遠くなる話みたい。だって、シームレスって言う
動物にだって植物には敵わないけれど、様々な自動修復能もあるらしいのよね。生物たちって何億年もかけてこのシステムを作ってもらった訳でしょう。それらがロボに搭載できるものとして、人間の手でいとも簡単にアンドゥトロワみたいな感じで一足飛びにできあがる筈ないでしょう。ねえ、シロ」
「ウワン」
「シロ、ねえ、アンタが言葉を
「クウン、クウン」
「ね」
「ワン」
「でもさ、地球が月やそれによる自身の安定的自転を失って、結果生物たちにとってのハビタビリティを混乱させた時、果たして人類はどうしたのかしらね。或いはノアの箱舟のようにたくさんの種を
「クウウウーン」
「あら、あなた、それはロケットが飛び去る感じなのかしら。それともそんなの無理だって言っているのかしら。それを確信しているのかしら」
「ウワン、ウワン」
「とっても遠いし、まだ
「クウン」
「やっぱり重力発生装置ね。超重力とでも言うか、ものすごい力よね。天体のような大質量による求心性重力発生はとてもできそうにないから、超高速回転する二重構造の
「ワホン、ワホーン」
「そうした巨大宇宙船の中では、長い時間のうちには宇宙に適応的変化を起こす動植物が出てくるかも知れないわ。
「ワン」
「すると、人間をはじめ多くの動植物たちが適応的進化を起こして、宇宙進出の
「ワオワオ、ワオン」
「とにかく早く系外惑星へ気軽に行けるような巨大宇宙船を作らなきゃ。重力発生装置もね。ねっ、シロ」
「ワオン」
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