第28話 ロボ、ロポロポ

 限りある命を持った人間のように様々なもののツケを次代に回すこともできず、それらはすべて自分で解決しなければならなくなり、限りない時間の中、物事を万事万端、あきらめなくともよくなったとも言える。

「つまりさ、格段に優秀なロボが出てくると、彼らはさまざまな生物を研究して、これまで人間が成し遂げられなかった生物や人間の創造ということを、もしかすると遺伝子の開発から初めて、新生や不死に纏わる領域すべてを全うして成し遂げてしまうかもね。余談だけどさ、深海だったか熱水鉱床だったか不明なんだけど、どこかの生物が自分のDNAのリンの代わりにイオウを使っていたと聞いたことあるなあ。あれってホントだったのかなあ。

 ロボを創造した筈の人間が、今後はその当のロボによってほかの生物ともども再創造されちゃうとでも言えばいいのかな。他にも人間たちの間の戦争を無くしたり、金融 詐欺さぎを無くしたり、そんな罪作りな人間たちを教え導いてくれたりね。そんなにロボに期待されても困るって言われるかも知れないけれど、平和をはじめとした真に人間を救うような役に立つものを作ったりさ。えへん、絶対的平和に限りなく近づいた、何の面白みもない相対的平和、始めましたなんてさ。考えるだけで偽善者っぽくって、何となくウキウキワクワクって事、ないか」

「ウワウ、ウワウ。ウワウワ、ワウワウ。ウガウガ、バウワウ」 

「そんなあかつきには、変異しやすい脆弱ぜいじゃくなゲノムもちゃっかり直して困難な病気も片づけてくれるかもね。人間たちのその他のさまざまな病気も未病にとどめたりね。ほかにもさ、何度も何度も繰り返したウイルスパンデミアのときのような得体の知れない危ないウイルスも見つけるや否や、毒性の高い変異型ウイルスを圧倒しては、そいつらを成敗せいばいしてくれるマジョリティ変異型ウイルスで、なおかつ無害な変異をもつ無毒型のミュータントを放ってはあっという間にパンデミアを収束させてしまうのよ。だから、ワクチンも薬も何も要らないわ。ほかにも人間の欲望ってきりが無いから、何でもロボがやってくれそうね。

 老化防止のためのうまいやり方となるようなテロメアがらみのメカニズムを見つけて、決してロボ化しなくても命の追加時間が叶うような、いわば命の延伸えんしん装置が開発されちゃうかも」

「ワンワン、ウワン。ワンワン、ウワン」

「ほかにも不測の事態で死なないようにしたり、体の中にある悪者の何とかソームも全部きれいに片づけてくれるか、うまい具合にそれらをバランスさせて命を長持ちさせてくれたり、ガンにならないようにしてくれるとかさ。ついでにがん細胞ができるやいなやクリアされちゃうようなサプリを作ってくれたりね。すると、そのうちに薬が要らなくなったら、あらいやだ、お薬屋さんが困っちゃうわ。そうなったら、もうケガ科とか歯医者さんとか産科とか、お顔の御直し科ぐらいしか要らなくなっちゃうわね」

「ウワンワンワン、ウワワンワン」

 まあ、人間にとっては我儘わがままを言い続けた結果だった訳だし、成り行きだから仕方がないわよね。まるで彼らの言うSFみたいなものだったのかも。するとその時、ヒトは死ねなくなって、人々が死ねない辛さにおそまきながらに目覚めて、三百年も五百年も生きているとその内に人生やこの地上にんだりして、ようやくその時の現生人類がSDGsが到底不可能だってことに気づいて、その内に系内あるいは系外惑星への探査に取り組んだのよ」

「ワーン、ワン」

「挙句には生き続けることに草臥くたびれたり、自棄じき的になったりね。その内に誰もがサグラダファミリアやヤコブのコンポステラへの巡礼を繰り返したりね。その頃には無差別誘導型同時多発突然死とかが必要悪として設定されたりさ。さらには法制化された誘導型集団大量自殺とかが起こったり、昔以上に死ぬ権利を声高に叫ぶ人が出てきたりしたのよ」

「フガ」

「人間の自己意識の上では、いつかどこかの気力が充実した若い頃の自分がいわゆる自分なのではなく、最も古びた今の自分が自分そのものなのよ。だから、もしロボになるとすれば最終期の自分、つまりは古びて死ぬ寸前の乾涸ひからびて老朽化した最終型の自分が意識される自分としてロボ化するのでしょうね。これって、どうなのかしらね」

「ワン」

「あくまでも仮定の話だから、あなたが如何にこの世界に参加しているとは言っても、あなたは人間の事なんか心配しなくたって構わないのよ、ねえケンタウルシロ。でもあなた、火星や系外惑星への移住計画に参画させられちゃって、何だか不憫ふびんだわ。如何にあんたがPケンタウリbのことが大好きだって言ってもね」

「クウン、クウーン、ワウワウ」

「でもさ、系外惑星って言っても当時は雲をつかむような話だった訳だし、人類やほかの動物たちが系内惑星へ行くのだって、いいえ月へ行くのでさえも一筋縄では行かなかったんだから。ようやく地球が如何いかに安全なのかという事が分かって、もっと地球を大切にと言うキャンペーンが起こったのもむべなるかなよ」

「グウン、クヴン。ワウワウ」




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