第19話 コピーロボ
コピーロボは定義上それ自身には主体的に生きると言う意味はなく、当初高額であったとは言え、主人に仕え影武者のように身代わりとなって働き、単純に個人の人生をサポートするのみであった。
ロボットは有難くも
「いわゆる存続権ってやつね。生きてるんだから、そんな法律ぐらいは当然あった筈でしょう。何でもそうでしょうけれど、人間とかロボとか、ロボ人間とか言って、
「ワンワワワン」
人間は何もせずともロボが
「そりゃそうよ。当然でしょ」
「ワワンがワン」
そうなるとロボに比べ
「まあね。人間って過渡期を任されたもの達って言う位置づけだったのね。悲しいけれど、それは重要で貴重な任務であった筈よ、ね。暫く地上に存在した恐竜たちの様に、独自で意義のある存在だったのよ。殆どの生物たちは発生と進化や絶滅を繰り返してきたらしいから、当然、人類が地球での生存に適応不能になった時には、ネオ人類でも出てこない限り、
「ワンワンワン。ウーワン、ウーワン、ワン、ウーワン」
「宇宙開発なんて言っていたこともあるらしいのだけれど、結局私たち地上の生物の多くはこの地球で生きるために進化したから、重力のない宇宙空間ではなかなか適応できなかったらしいのよね」
「ワン」
当初一般的ではなく、非常に高価であった
こうしてロボが人間存在に成り代わって存続してくれた。そのうちにそれは一般人でも無理をすれば手の届く
「じゃあ、龍之介たちのひい曾お爺ちゃんは、そんな粗悪なコピーロボだった訳ね。そんな生まれついての不完全さを抱えて、かつ若くもないそんなお爺ちゃん人間のコピーロボって嫌だったかもね。想像を絶する哀れさと言うか、生まれついてのお爺ちゃんなのだもの。ふつう生まれてくるのは赤ちゃんなのであって、それは言わば新品だもの。お爺ちゃんのお顔は少しは修正したのかしら」
「バウワウ、バウ。バウワウ」
「人間たちのように色々と不満があったり、もしかすると人間同様、自分の事を受け入れ難くて嫌だったかも知れないね。不完全さの程度はともあれ、人間だって不完全だって言う意味ではより一層劣悪なのだから、ロボはまだましとはだとは言っても、
「クウン、クウン、クウォーン。クウォン、クウォン」
奇妙な事態は
「やっぱり龍之介君のひい曾お爺ちゃんの場合と同じよね。他にもどこかの著名人たちのコピーロボ同士が老いらくの恋に落ちて婚姻関係を結んだって言う話を聞いたこともあるわ。第二のロボ人生と言う訳。その彼らの子孫たちがまた別にそれぞれに残っていくと言う事態に発展する訳でしょう。ロボの恋が破局した場合、数百年の時を経た
「クウン、クウン。ク、ウン、ウン」
それと知った当時の国王陛下が自身の母である
「だとすると、その国王たちの家族が次々とコピーロボとして生き残ったら、死後の自分もロボにしようと考えたお金持ちも当然出て来た
「ウワン、ワン。ラストワン」
「ロボが国を治めるのか、それともやっぱり王位は
「ウワワン、ウワン。ウワワンワン」
「おまけに国王に子供がいたら、若い王位継承者たちは前国王のコピーロボの国王が事故か何かで壊れたりダメになったりしない限り、王位に就けないだなんて不幸よね。継承者が事もあろうにその前に死んじゃったりしたら大変よね。それは困ると言うような王朝内の人間がいて、昔の王朝でよく見られたらしい毒殺のようなロボ国王の暗殺事件が起こったり、人間の時のような王位継承の派閥問題による内紛が起こったりね」
「ワウウ」
「そんな事態の
「クウン」
人類の後に来るのが当面はロボであったのだが、その過渡期にはハイブリッドとも形容のできる初期型コピーロボも全盛を迎える。それは両者の幸せの結合的複合とも言えるのかも知れない、
「そう。理想的な、
「クワン、クワン。ワンワン、ウワウワ」
何とすばらしい事であろうか。人間滅亡後の世界を担うべきロボ。人類はある意味では素晴らしい存在を創造したのである。ものごとには状況を掻き回してくれるトリックスターがいなければ面白味がない。
「何と言っても善玉ロボだけじゃつまらないから、ネジの抜けた悪玉の悪魔ロボにもご登場願わないと、と言うことだったのかしら。私やシロなら、さしずめ精霊ロボとかお化けロボとかなのかな」
「ワウン、ウン。ウウン、ウン」
やがて人類の生存に適さないような地上の生存環境の
問題を提出し、これを解決のルートに乗せ、解決手段とその実行能力を持つものの手に委ねる。その後の状況の査定も大切である。人間が人間社会における諸問題を解決するために常々行ってきたことでもあり、その後ロボに求められてきたものだ。ロボがこれを行うには一抹ならざる不安があったらしい。これらを入り口から出口までの一切をロボが行い得るのかどうか。思い出しても見て欲しい。本来ロボは人間のためのものなのだ。その定義に従えば、人間がいなくなってしまった世界にはロボはもはや不要なのであり、そこでは
「まあねー」
「ワウウーン」
自動制御機構を備えた自在な振る舞いを見せる自動機械は作成するのがなかなか困難で、ある時までのロボティクスはそのレベルにまでは到達してはいなかった。そこまでのロボともなれば、サービス対象の人間は不要となる。人間や動植物、虫たちにおける場合の
人間存在が消えた後の世界に存在するロボのために、上記のような自動制御機構等の解明が望まれたのだが、困難を極めた。それが達成されないと人間存在を抜きにしたロボの自在性が確保できないのだ。何よりもまず、何の命令も無しにロボが勝手に振る舞えるようにならなければならなかった。
「そうよね。汚れたらきれいにするとか、保守点検するとかね。
「ワン」
しかしこうも言えるかもしれない。進化を遂げ、既にして人間レベルを
話の少し先までを見通せるなら、人間を遥かに超越した知性の持ち主であるロボにとって、彼らのちょっとした議論の相手のような
「でも、それぐらいはできないと、この地表ではなかなか自律的には存在していけないわよ。ね、シロ」
「クウン、クウン」
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