第16話 ロボボボボン
人間であれば自身の利権に関連した悪事を働き得る政治家であったとしても、それが賢明で
「ロボを用いた悪巧みを行う人間もきっといたことでしょうね。もし、人間たちがずる賢さや悪巧み、
すると、ずる賢く悪い企みの意義までも学習しちゃって、倫理観の
「ウー、ワン。ウーワン。ワン、ウーワン」
「高性能であるだけに、人間にとっては恐るべき脅威、強敵となるに違いないわ。そんな箍の外れたロボが議会に派遣されたら大変よ。ロボ議員たちは巧妙に政治的事実を
「ウワン、ワン。ワワワンワン」
政治は人間のためには必要だが、一般に人間ほど社会性や他社との関係性に
「ま、そりゃそうようね。当たり前っちゃア、当たり前。それがロボのロボたる
「ワンワワン、ワワワワン。ンワワワワーン」
ロボは人間や生物のように生存競争も縄張り争いなどもしない。
「そこがロボの魅力ね。正しく平和の使者、そして実践者よね。ロボをこのように
「ワンワン、ワハン」
しかしながら、そのうちに万が一の突然変異で人間に
「そこ、そこ。ロボの理想郷が崩壊していくところかな。でも、それもこの女子高校生の想像的創造に過ぎないんだけどね」
「ンワ、ワン」
人間本人たるコピー原本が死んだ後のコピーロボの
「生体型ロボは生きているのだから、廃棄って幾らなんでも可哀想よね。ねえ、シロ」
「ワン、ワン、ワン。ワワンがワン」
「何言ってんだか。でも確かに、コピーって、増えてんのか増えてないんだか分かんないわよね」
ロボの存在権に
独自存在権の付与における慎重論もあり、長い議論の末にコピーロボ個体の希望によって再登録の上でそれが賦与されることとされた。そのロボが希求する存在様式の問題や、非自律型ロボの所有権を持つ雇用主による決定権の問題、自律型コピーロボにおける本人存命時の独自存在権などについて存在様式の面でも議論がなされ、様式によって無国籍や国籍の別の問題など、非常に
コピーロボの通常の運用面での個体的諸問題について、困ったものとしては同一時間帯に異なる現場で有名個体の複数のコピーロボが存在する特殊な場合など、多くの街を統合的に監視している千里眼ネットワークメディアのヴュワーロボを通じて、それらが二次的に検出されては混乱を引き起こす可能性があったことだ。二つ、三つのロボ個体がいれば通信し合ってそれぞれが
「そんなことぐらい容易に想像できたはず。同一個人の複数のコピーロボが自律性を以て勝手に活動し始めたらどうなるか。そんな事分からないとも言えるし、何でもあり得るとも言えたはずよ」
「ワンン、ンン・・・、ンワ」
宇宙空間をはじめとした危険な地帯への半自律型ロボ派遣に於いては、命令に従順なロボという選択が派遣側にとって好都合であった。高性能コピーロボは高価であることもあって、ある程度の実用化後も一般化しなかった。ホログラフィック現前するロボの場合、妥当性の面からは会議そのほか様々な状況で用いられた。
戦役などにおいては、
「そりゃそうよ。聞けば、思うようにいかないのが人間の世界だったらしいからね。ちょっと怖いけれど、一寸先は闇ってやつ。その闇を照らすべく現れたのがロボだったのですもの」
「ワン、ワハン。ワハハワハハン。ワンワハン」
以前にも述べた通り、生体の超精密コピー型ロボにあっては、認識における主体性やその持つ世界観、或いはそれを含み持つ世界観の観点からは、それが存するのは寧ろ人間の領分においてであった。その感覚や意識はもはや彼ら自身しか知り得ず、彼ら自身の表明によって初めて他者が知り得るところのものとなる。彼らには生物学的な祖先が存在せず、出生証明がなく、登録証明があるだけだ。さらに彼らを取り巻く問題は多岐にわたるものだ。人間、準人類、類人種といった構成員の一つとして、この並びに列すると話は早く、敢えて
「まあ、そうなのかなあ。とすると、ワンコはその下になるのかなあ」
「ワンワン、キャンキャン、キャインキャイン」
「でもさ、シロ。そのワンコのコピーロボもあるよ」
「ワ、ン」
原本である本人の死後、コピーロボが本人になり代わるのはいわば手続き上の話、あるいは法の問題である。その際ロボ個体の心理面の問題は置き去りにされる。コピーロボ自体は自身として人間の本人と
「でもさ、写し取られたものと、原本とがお互いに向き合っていたらどうなのかしらね。それでも独自存在であると、揺るぎないと言いきれるのかしら。おそらくは奇妙な違和感のような感興がわきおこるのよ。そして、そこには、よくある、どちらでも構わない本物偽物論争も
「ワンワワン。ワワワワン」
「双子とか三つ子の真理に近いのかしらね。単に似て非なるって感じ」
「ワンワ、ワンンワ。ワンンワ、ワンワ」
「それは回文。母音だけじゃないから、単純に重ならないわよ。そうね、写し取った、単なる多回転対照体的存在みたいなね。でもね、どの二つも異なるのよ。厳密にはね、ありとあらゆるものがね、位置や時間、そのほかの座標をはじめとしてのさまざまな情報がさ」
「ワオン」
何世紀も前に人間は再細胞の核を脱殻した卵細胞の中にいれて、発生させた生物種を作出して様々な種を作り出した。中には、子供のような無邪気さで、
ある
「何だか良く分からないけれど、コピーにもいろいろとあったのね。昔の、人工的な始原細胞からの発生による複製と言うのは、量子コピーとは異なるようでいて、案外同じようなものかも知れないわね。
いずれにしても
「ワンワン、ワウン。ワウワウワン。ウワウワウワン」
「こら、ウとワがコピーミスみたいで
量子コピー個体が、
「あら、田中様のお母様。亡くなった筈のご本人のようなご本人に向かって言うのも何ですけれど、この間は本当にご愁傷さまでした。ですが、こうしてお見受けする限り、そのことを忘れさせてしまうくらいに、以前にもましてお元気そうで何よりですわ。それにしても、まるで生き写しですのね。とても信じられません」
「ええ、山田様、とても元気です。ありがとうございます。その節は大変ご心配をお掛けしました」
「あなたのお葬式は確か三週間ほど前の事でしたから、まだあなたの四十九日の
「そうですか、山田様。私も病み上がりと言う以上の、物故したばかりのはずなのに、こうして知人のお葬式に出ているなんて、何だか変な感じです。そして残念なことに、私は生まれ変わった後からどうした訳だか涙が出ないんです」
「へえ。そうなんですね。感情があまり
「まあ、そうだったんですね」
「ええ。あの時、あなたが亡くなって復活なさると言う流れは理解できたものの、亡くなって甦ったという事がしっかりと腑に落ちていなかったせいか、混乱していたせいか、心情的には悲しむべきなのか喜んでいいのか、それとも感情を動かさないようにすべきなのかが分からなかったんです。悲しさを引き
「ええ。申し訳ありません」
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