第11話 ロボボのボ
「まったく、ロボって何なのよね」
「ウワン」
「味方なのか敵なのか、神なのか悪魔なのかさ」
「バフフン」
「おもちゃなのか神なのか。おもちゃなら遊べるけれど、神だと近寄り難いわ」
「ワン」
仕事でも何でもロボ存在によって行われるようになると、状況は置き換えられ、事態は奪われた。人間はただ生きて存在する、そんな非在とでも言うべき存在に
「人間存在に関わるあらゆるものはロボで置き換えられ、人間様は休んでくださいと言う訳ね」
「ワンワン、キャフン」
人間は気楽に生きてよいが、ロボはそうはいかない。ロボには娯楽はないが、こなすべき仕事があるだろう。つまり、その様に作られているのだ。ロボの仕事には一点の曇りも、
あらゆる職業的な事柄には次第に人間存在の介入の割合が減少していった。人間はお金を稼ぐと言う、時間そのほかの価値のようなものの「切り売り」から解放され、つまりは稼いではいけなくなった。「稼ぐ」ことが禁止されたのだ。すべてはロボが
では、働きたい、稼ぎたい、お金を
それまでの人間世界では
そこにお金と呼ばれる
しかし、時にその御ふだが本来の紙切れに代わることがある。つまりは紙くずに堕するのだ。その御ふだは言わば兌換可能な交換券なのだが、その御札を1㎏持って銀行へ行っても1円にもならないことが起こるのだ。地球で起こった第一次世界大戦後のドイツと言う国では1マルクが1/4兆ドル(ほぼ無価値。4兆マルクが1ドルに相当)まで下落したそうなのだが、この時、マルク紙幣はメモ帳にすらならず、文字通りの紙くずとなったらしい。お金と言うよりはお紙だったのだろう。
「なんでもお金で買えるわけではないのにね。困っている人には上げたらいいのに」
「バウワ、ワウワ、バウワウワン」
「お金で罪を犯したり、騙し取ったり、喧嘩したり、命が失われたり」
「バウワウ、ワウワウ。バワワワワン」
ロボがやって来たことでお金が
「それも窮屈ね。社会主義と言うより、不自由主義だよ。労働しちゃいけないなんて聞いたことないわ。働きたい人には地獄よ。まるで開かれた牢獄みたい。どんな成果も還元されないから、ロボか聖人でないときっと耐えられないかも。無理無理、凡人は堕落すると言うより、気が変になるよ。モチベーションが保てないし、それって耐えられないよ。でもね、一日中ボーッとするのもいいかもね、シロ」
「ワンワン、キュワン。ワンワン、キュワン」
ロボには休めと言ってはならない。それは規律違反である。ロボにとっては仕事や作業こそは必要欠くべからざるもの。安息よりは仕事をがロボの建前ではない本音である。目の前のロボが掃除も洗濯も掃除もすべてやってくれる。一方人間は金を稼ぐと言う意味合いの仕事をしてはいけない。呼吸や食事、排泄、入浴はパーソナルな事柄なので仕方がないが、ぺリパーソナルもロボでと言うのなら、思念さえもが吸い取られてはロボが勝手に処理、計算して考え、夢想してくれる。人間はもう寝ているより他はない。お金を使った経済活動、いわゆるマネーゲームさえもできない。これは窮屈である。
「籠の中の小鳥ね。ゲージの中のネズミ、都市封鎖で戒厳令や外出禁止令に我慢を強いられる人間や犬小屋のイヌね。おもちゃのお金で「マネーゲーム」やっても詰んないでしょうしね。月にでも吠えるのかしらね。ストレスからイライラが募って犯罪が起こるかも」
「クウン、クウン、ワウワウ」
先ほども述べたが、国家によっては金銭と言う数字が廃止され、すべては無償で供給された。個人の間で労働対価の受け渡しによる差分の獲得や接収、稼ぎやもうけがなくなったと言う。寝かせたお金がお金を生む、あるいは幻想が架空を生むなどと言った類の下衆の商売なども不要となって雲散霧消したらしい。
「ホントかなあ、なんだか怪しいわよね、シロ」
「ウワン、ウワン、ウバウワウ」
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