第44話 鬼ヶ岳登山、「緩やかな下山道でも気を抜くな!」編

 山頂から続いていた、アップダウンが連続する岩場の稜線歩きを何とかクリアして、鍵掛峠に着いた山楽部御一行。その難度の高い稜線歩きを終えてホッと一息入れたのもつかの間、御一行達は稜線を降りて出発地点である癒しの里の登山口に向けて下山を開始して行く。

 この稜線の分岐点から南に下る登山道は林間のコースになのだが、暫くの間は急斜面の登山道が続くのである。下山道に入って直ぐに急斜面の岩場の洗礼を受けながら降りて行くので、メンバー達の緊張度も増して行く。


「稜線から降りてすぐに、急斜面の登山道が続いていますね。岩場に成っている箇所も多く一時も気を抜けませんわ」

「そうよね、なかなかに急な登山道を降りて行くので、先ほどまで降りて来ていた稜線の登山道に匹敵する位の難度が有るわね」


「ただ、先ほどまでの登山道とは違って、暫くは急斜面を降りて行くだけだから、気は楽にして下山して行けるわ」


「でも気を緩めては行けませんよ、華菜。ひたすら降りて行くだけだけど、下山している時は転んだりする危険性が有りますから、緊張感を絶やさずに行きましょう」


「星野の言う通りだぞ。降りて行くだけだと楽そうに感じられるが、下山こそ危険が潜んでいるんだ。一時も気を緩めてはいかんからね!」


 急斜面の登山道を降りて行くメンバー達に、気を抜く事無く下山する様にと声を掛ける先生。これから暫くの間は、ひたすら山を降りて行く登山道に成るのだが、一見すると降りるだけなので楽そうに感じられる。

 だが、下山する時の方が転び易く下半身に掛かる負担も大きいのである。その下山時のリスクを改めて教える為にも先生は、あえて激を飛ばしたのではなかろうか。メンバー達は先生からの激を貰って、改めて気を引き締めて慎重に登山道を降りて行く。

 そして、急斜面の登山道を降りて行く事30分、ようやく斜面が緩やかに成って来た。御一行達は、慎重さが功を奏したのか一人も転ぶ事無く、急斜面の登山道を通過する事が出来た様である。


「隊長! 先ほどから斜面が緩やかに成って来ましたね。これで、難所の急斜面の登山道は終わったと言う事なんでしょうか?」


「その通りだよ、星野。稜線の分岐点から続いていた急斜面の登山道も、この辺りで終わる事に成るんだ。ここから先は登山道が比較的緩やかに成って行くから、今回の鬼ヶ岳登山も山場を越えたと言う事だな」


「そうなんですか、鬼ヶ岳の登山は山場を越えたと言う事なんですね。これで僕も一安心しましたよ。女性陣の皆さん、聞いての通りです。山場を越えた様なので、少しは気を楽にして登山道を歩いて行きましょう!」


「隼人ったら、急斜面の登山道が終わった事を聞いた途端、有頂天に成っているじゃない。急斜面が終わったと言っても、まだ緩やかだけど下山をしなければ成らないのよ。気を楽にして! 何て言ったらダメじゃないの。

 ここは部長だったら、この後も気を抜かずに下山をして行きましょう! と言う感じに言わなきゃダメだと思うわ」


「そ、そうですね。友香里の言う通り、まだ登山が終わった訳では無かったですね。部長の僕が、気を緩める事を言うなんて良くないですよね。これは失礼しました。気を楽にして行こう! と言ったのは撤回しますよ……」


 隼人の口から出た、気を楽にして行こう! と言う緊張感のない言葉を聞いた友香里は、すかさづ言葉を訂正する様に声を大にして言うのであった。その迫力ある様子を見た隼人は、しょぼくれた顔をしながら、自分の言った事を直ぐさま撤回をする言葉を述べた。

 その様子を見てた華菜と穂乃花も、その通りと言わんばかりに頷いて居るのであった。と、その時! 「キャー! 足が滑ったわ!!」と言う悲鳴と共に、華菜が緩やかな登山道にも関わらづ、足を滑らせてお尻を強打してしまったのである。


「痛ったあーい! お尻から、もろに転んでしまったわ。痛ててててー!!」


 緩やかな登山道にも関わらづ、足をすくわれる様にして見事に、すってんころりんと転んでお尻を強打してしまう華菜。手を着く暇も無くお尻を直接、地面に叩きつけられてしまったのだから、これはかなり痛そうである。


「大丈夫、華菜! かなり激しくお尻を付いてしまったわね。小さい小石が転がっているから、足の裏が滑る様にして転んでしまったのね」

「手を付く暇が無かったから、もろにお尻を叩き付けてしまった様ね。私が手を貸すから起き上がってみて、華菜!」


「手を貸してくれて有難う、友香里。何とか起き上がれそうよ。よっこいしょっと!!」

 痛がって蹲る華菜を心配した友香里は、手を差し伸ばして起き上がる手助けをする。その助けを借りて、何とか華菜は立ち上がれる事が出来た様である。


「派手にお尻を打ち付けてしまったな、杉咲。かなり痛そうな顔をしているが、身体の方は大丈夫かな。動かせそうかな?」


「ふう〜何とか起き上がれたわ。まるで足を救われた様に、あっという間に転んでしまったから受け身も取れなかったわよ。打ち付けたお尻は痛いですけど、身体の方は動く様なので大丈夫そうです」


 華菜は痛そうな顔を見せながらも、背筋を伸ばしたり足を屈伸したりして身体が動くのをアピールして見せるのだった。その華菜の様子を心配して見ていた隼人も、大事には至らないのが見て取れた為、ホッと一息ついた後に話し出した。


「いきなり転んでしまった時は驚きましたが、如何やら大事には至らない様で本当に良かったです。……それにしても僕が、気を楽にして歩いて行きましょう! と口にした途端、華菜が転んでしまう事態に遭遇してしまいましたね。

 僕がその様な言葉を言ってしまって、皆さんの緊張感を途絶えさせてしまったのがいけなかったです。やはり登山口に戻って登山を終えるまでは、気を抜かずに行かなければダメでした。僕が軽率な事を言ったばっかりに、転んで痛い思いをさせてしまって申し訳なかったです!」


 隼人は、自身の軽率な言葉により皆の緊張感を緩めさせてしまい、結果的に華菜を転倒させてしまった事を悔いて、頭を下げて謝りの言葉を女子達に述べる。その様子を見ていた女子達は暫くの間、ジッと隼人の顔を見つめて居たがニッコリと微笑んだ後、口を開いた。


「確かに隼人は、未だ登山が終わってないにも関わらづ、気を楽にして行こうと言ったのは問題が有ったかも知れないわ。でも、あたしが転んでしまったのは、隼人の一言があったせいではないわ。

 あくまでも、あたしの不注意によるものだと思うのよ。だから、自分一人のせいだと思い込まない様にしてね」


「華菜の言う通りよ。隼人の言った事が元で転んでしまったりしたら、華菜だけじゃなく他の人達も転んでしまったハズだわ。一人一人の注意力が大事だと言う事なのよ。だから自分を、そんなに責めない様にして欲しいわ!」


「そんなに責任を一人で感じないでください、隼人。最終的に登山口に到着して登山行程が終了するまでは、登山道が緩やかに成ったとしても気を抜くなと言う事ですね。今の出来事を今後の教訓にして下山して行くのが大事だと思いますわ」


「女性陣の皆さま、温かい言葉を有難うございます。登山が終了するまでは、一時も気を抜かない様にする事が大事だと言う事ですね。

 この様な緩やかな斜面でも気を抜けば、滑って転んでしまうと言うのが分かりましたよ。なので、ゴールの登山口に着くまでは、一時も気を緩める事無く慎重に降りて行く様にしましょう!」


 謝りの言葉を聞いた女子達は、隼人が悪いのではなく、自分達一人一人の注意力を上げる事が大事だと言う事を伝える。その女子達からの温かい言葉を聞いた隼人は、ホッと一息付いて笑顔を見せながら感謝の言葉を述べるのだった。

 すると、そのメンバー達の話のやり取りを静観して聞いて居た先生は、うんうんと頷きながら口を開いて話し出した。


「女性陣は、星野だけを責める様な事を言わなかったから、偉いと思うよ。私が思うに星野は確かに、気を楽にして行こう!と言ったが、その言葉が原因で杉咲が転んだ訳ではないと思う。

 登山道と言うのは緩やかな斜面だとしても、気を緩めてしまうと足をすくわれて、いとも簡単に転んでしまう事が有る。今、歩いている登山道は小さな砂利が多いだろう。この砂利が靴の足の裏と地面との間を転がる様に成ってしまって、足をすくわれた様に転んでしまうんだよ。

 だから、この様な砂利が有る登山道を降りる時は緩やかな斜面と言えども、気を抜く事なく慎重に、しっかりと地面を踏み締めながら歩く様にすると良いんだよ!」


「そう言う事なのね。あたしが転んだのは、地面に沢山転がっている小さな砂利が悪さをしたせいなのね。この小さな砂利がスッテンコロリンと、あたしを転ばせてお尻を強打させてしまったなんて以外だったわ。この後も砂利道が続くから、慎重に歩いて行く様にするわ」


「先ほどまで歩いて来ていた急斜面の登山道では転ばなかったのに、こんなに緩やかな斜面で、いとも簡単に転んでしまうなんて不思議な感じがするわ。だから登山道とゆうのは、緩やかな斜面でも危険が潜んでいると言う事なのね。痛い思いをした華菜には悪いけど、今の出来事を今後の教訓にして行きましょう」


「女性陣の言う通り、今回の事は今後の教訓として活かして行く様にする事が大事なのが分かりましたよ。登山道を歩いている時は、斜面が急であろうがなかろうが、常に危険と隣合わせだと言う事ですね。とにかく、この事を肝に銘じてこれからの下山道を歩いて行く様にしましょう!」


 華菜の思いもよらぬ場所での転倒騒ぎが、怪我の功名と言ったら良いのだろうか、結果的に皆んなの結束を高める事に繋がった様である。自然を相手にしている登山に於いては登山行程が完了するまでは、気を抜かづに行動する事が大事だと言う事を心に刻むメンバー達であった。


「これで分かっただろう。登山口に戻ってゴールするまでは、一時も気を抜くなと言う事だよ。この事を肝に銘じて、今後の登山に向かって行く様にしなさい。では、気を取り直して下山を再開しょうではないか!」


〚はい! 気を抜かづに、登山を再開します!!〛





 大きな掛け声を上げて、下山を再開した山楽部御一行。今回の転倒騒ぎの出来事は、皆んなの気を戒めて登山と向き合う事に成り、より一層、部員間の結束を高めた様である。

 更に結束を高めた御一行達は、緩やかな登山道を慎重な足取りで歩んで行く。そして歩く事30分、御一行はV字谷に成った場所に辿り着く。谷には沢が流れており、沢を並走する様に登山道が伸びている。

 沢の流れが出て来たと言う事は、山の麓に近い所まで降りて来たと言うサインでもあるのだ。その麓が近い事を告げる沢の出現に、今まで緊張した面持ちで下山して来た御一行達の顔は、少しだが穏やかに成って来て居る様である。


「さあ皆んな、沢の流れが始まる場所まで降りて来たよ。この沢の流れが有ると言う事は、山の麓に降りて来たと言う事なんだ。この沢に沿って20分ほど登山道を歩いて行けば林道へと出る様に成るんだ。

 その林道を暫く歩いて行けば朝に出発した場所の癒しの里に辿り着く事に成る。もう少しでゴール出来るから、もうひと踏ん張り頑張ってくれたまえ!」


「やはりそうなんだ! 沢の流れが有ると言う事は、山の麓に降りて来たと言う知らせなんですね。とうとう麓の近くまで降りて来ましたよ、皆さん! 

 ……あっ、ここで緊張感を緩めすぎてはいけませんね。麓に降りてきたと言っても、まだまだ登山道は続きますから今一度、気を引き締めて歩いて行きましょう!」


「まあ隼人ったら、先ほどの転倒騒ぎでの教訓を忘れてはいない様ね。麓に降りて来たと言う安心感を感じるところなのに、そこを戒めて緊張感を維持する様に言うなんて、私は感心したわ。流石は山楽部の部長だけの事はあるわ~」


 沢沿いを通る登山道に来た山楽部御一行。麓まで降りて来た事で、ホッと一息付きたいところなのだが、隼人の口から出た言葉は、気を引き締めて行こう!と言うものだった。緩やかな斜面での転倒騒ぎの教訓を活かさそと、皆んなに戒めの言葉を述べるのだった。


「おお〜星野よ!先ほどの転倒騒ぎの教訓が見事に活かされているではないか。それでこそ山楽部の部長と言ったところだな。部長である君の言葉は、部を引き締めてくれるからね。頼もしい限りだよ。

 皆んな聞いての通りだ!ゴールが近いとは言っても、まだまだ登山道が続く。登山口に戻るでは、気を引き締めて緊張感を持続しながら下山をしてくれたまえ!」


「頼もしい部長の一言は、部員の士気を高めてくれるわね。これで、あたし達もやる気が漲って来ましたよ。この後も気を引き締めて下山して行きましょう」


「何だか、隼人がカッコ良く見えて来ましたの。登山口に戻るまでは緊張を解さづに歩いて行きましょう。それじゃあ、ゴールの癒しの里登山口に向けて頑張って歩きましょう~」


 隼人から登山に向かう為の戒めの言葉を聞いた女子達は、部長としての威厳を感じ取る。そして一同は、緊張感を持続しながら登山を遂行する事を肝に銘じると、ゴールを目指して再出発して行く。

 沢沿いの登山道は緩やかではあるが、V字谷に成っている崖の上に登山道が作られている。なので一歩、登山道から足を踏み外してしまうと滑落してしまう危険性が有るのだ。そうならない様にする為にも御一行達は真剣な顔つきで足元を良く見ながら慎重に歩んで行くのだった。

 そして、緊張感を持続しながら歩く事20分が経過した頃、御一行達の行く手に開けた広場が見えて来た。どうやら林道が始まる地点へと辿り着いた様である。


「よ~し! 林道へと辿り着いたぞ。ここまでくれば癒しの里登山口までは目と鼻の先だ。皆んな、ここまで頑張って降りて来れて素晴らしかったよ。ここからは林道歩きと成るから、少しだけ気を緩めて歩いて行っても良いからね。

 ただ、舗装されていない林道だから、路面には石ころが剝き出しに成っているから、つまづいて転ぶ事のない様に気を付けて歩いて行く様にな!」


「林道へ来たと言う事は、癒しの里に大分近い所まで来ているんですね。勿論、林道へ出たからと言って気を抜く事はしませんよ。登山口に戻るまでは登山が終了した事には成らないですからね。女性陣の皆さんも足元に気をつけながら、歩いて行きましょう!」


「忠告をしてくれて有難う、隼人! ゴールが間近で気が早るところだけど、この平坦な林道でも転ぶ危険性が有るから、気を抜かづに歩いて行くわよ」


「舗装されて無いから、当然ながら石が剥き出しに成っていますの。この、ちょっとのでっぱりで躓いてしまう事が有るから要注意だわ。引き続き緊張感を持続して行きましょう~」


「皆んなゴールが真近だと言うのに、緊張感を持続出来てるわ。今日の経験が私達を成長させてくれたと言う事なのね。もう今後は、登山中に気を抜く事は無いでしょうね。それじゃあ成長した山楽部の皆さん、ゴールを目指して邁進しましょう!」


 平坦な林道歩きに入って行く御一行達であるが、緊張感を抜く事無く、足元に注意を払いながら慎重に歩いて行くのだった。特にメンバー達は今日の鬼ヶ岳からの下山では斜面が急で有る無いにかかわらづ、常に下山時に於いては転倒や滑落の危険性が付きまとっている事を、身を持って体験する事が出来た様である。

 今後の登山を続けて行くうえで下山時での安全面に、特に注意を払う事が大事なのを身に染みて体験する事が出来たのではなかろうか。そして林道を歩く事10分、御一行達の行く手に何やら建物が見えて来た。段々と近づいて行くと、その建物の形がハッキリと分かって来た。どうやら藁葺屋根の古風な建物の様である。


「お~し! 藁葺屋根の集落が見えて来たぞ。癒しの里に到着したんだ。皆んな、ここまでご苦労さんだったな。今、私達は、癒しの里と言う施設の山側の裏手から入って来ているんだ。この施設を通って行けば、朝に出発した登山口に到着する様に成るからね」


「とうとう、癒しの里に辿り着きましたね。皆さん、お疲れ様でした。朝に登山口駐車場を出発した時は表口を通っただけでしたから、園内に藁葺屋根集落が有ったのが分からなかったですね。こんなに趣のある藁葺屋根の建物は、見ていて凄く癒されますね」


「皆さん、お疲れ様でした! まさか藁葺屋根の家が有ったとは驚いたわ。この集落が癒しの空間を与えてくれるわね。癒しの里の名前は、この集落から取ったのではないでしょうか」


「そうね華菜の言う通り、この集落が癒しを与えてくれるから゛癒しの里゛と言う名前が付けられたと思うわ。藁葺屋根の家って、日本の古風な風景を彷彿させてくれて、本当に情緒が有るわ~」


「ここまで、何とか辿り付けましたの。お疲れ様でした。凄く情緒が有る藁葺屋根のお家が出迎えてくれましたね。この家の中には誰かが住んで居るのかしら? 木と藁を使ったお家の中を見て見たいな~」


 藁葺屋根の古風な家が出迎えてくれて、皆んなは今までの登山の疲れが癒された様にホッと一息入れながら、藁葺屋根集落を眺めているのだった。すると穂乃花が言った、誰かが住んで居るのかしら? と言う言葉が気に成ったのか、先生が口を開き話し出した。


「先ほど如月は、藁葺屋根の家の中には誰かが住んで居るのか? と言っていたね。その答えを言うとね、この家の中には人は住んで居ないんだよ」


「えっ? この家の中には誰も住んで居ないんですか。でもでも、目の前に有る何軒かのお家には人が出入りしていますわ。住んで居ないと言うのに、矛盾しているんじゃないかしら」


 先生は、藁葺屋根の家には人は住んで居ないと言う。だが、目の前に有る家には人の出入りが有るのだ。その矛盾点に、穂乃花はすかさづ先生に疑問を投げかけるのだった。


「まあ、如月が疑問を抱くのは無理も無い。実を言うとね、この集落自体が癒しの里そのものと言う事なんだよ」

「その゛集落自体が癒しの里゛と言うのは、どうゆう事なんですか、隊長!」


「まあ要するに、この藁葺屋根の家、一軒一軒が癒しの里の施設と言う事と成るだよ。この家の中には、案内所やお土産屋さん、食事処や休憩所、資料館、それに加えて陶芸や工芸作りを体験できる工房まで有るんだよ。まさにこの集落を使って観光客をもてなし、体験させてくれていると言う訳なんだよ」


「そうなんですか。要するにこの藁葺き屋根の家がテーマパークの様に成っているんですのね。この情緒溢れるお家を使って観光客をもてなすなんて、良い事を考えたものですね」


 穂乃花は、藁葺き屋根の家を使って施設運営を行っている癒しの里に、驚きの表情を見せて感心しているのだった。


〔この、癒しの里に有る藁葺き屋根集落は、40年前に根場地区を襲った土石流災害の時に流失した当時の集落を、再現する為に建てられました。当時を彷彿とさせる藁葺き屋根集落は貴重な文化財でも有るのです。そんな貴重な文化財を見て体験出来る゛癒しの里゛は訪れる者に感動と癒しを与えてくれる施設なのです〕


「この藁葺屋根集落自体が、癒しの里の施設に成っているなんて僕は驚きましたよ。ん〜と、それなら、ちょっと寄り道して家の中を皆んなで見学しませんか?」


「そうね、そうしたら良いんじゃないかしら。せっかく通り掛ったから藁葺屋根の集落の中にも入ってみたいし、お土産物も見てみたいわ」


「外から見てるだけでは無くて、実際に家の中に入って木と藁の温もりに触れてみたいわね。隊長、この施設の中に入る時間を頂けませんか? 皆んな、入りたい気持ちでいっぱいに成っていますので、お願いしたいのですが」


 この情緒ある藁葺屋根集落を目の当たりにした隼人と友香里、華菜は、見ているだけでは無くて、実際に家の中に入って施設を体験したい様である。その事を先生にお願いをする3人だったのだが、当の先生は、何やら渋い顔を見せながら話し出した。





「君達の言う通り私も中に入ってみたいのだが、あいにくこの藁葺屋根の集落は癒しの里が管理する施設なんだよ。だから、中に入るには入園口で入園料を払って入らなければ成らないんだ。

 見ての通り、簡単な木の柵が有るだけだから容易に中に入れてしまうんだけど、実際のところは乗り越えて中に立ち入ったら入園料を払わづに入ってしまう事に成るからね。なので、ここは我慢して今回は外から見学するだけにしようではないか!」


「そうですよね。当然ながら有料施設だと言う事なのですね。こんなに低い柵だと簡単に施設内に入れてしまうのですが、そんな事をしたら、泥棒みたいな感じがしてしまいますから、その様な事は止める様にした方が良いと思うわ」


「そんな、タダで入れる施設が有る訳は無いですよね。今は登山中ですから、ここは我慢をして通り過ぎて、出発地点の登山口を目指して移動しましょう~」


「そうしましょう、僕達は未だ登山中の身ですからね。この癒しの里に入るのは、またの機会と言う事にしましょう。何時かまた来れる時が有りますよ。その時は、ちゃんと入園料を払って見学をしましょう!」


 目の前に有る藁葺き屋根集落に入るには、入場口で入園券を購入する必要が有る様である。木の柵を乗り越えれば簡単に入れてしまうのだが、当たり前の事ではあるが、不正に入場してしまう事に成るので、そこは我慢して入らない様に決める御一行達であった。

 そして気を取り直して、最終目的地の登山口駐車場を目指して、藁葺き屋根集落の道路沿いを歩いて行く山楽部御一行。暫くすると集落を抜けて広い道路へと突き当たると、左に曲がり道路沿いを歩いて行く。

 そして、癒しの里の入場口前を通り過ぎ200mほど歩んで行くと、車の往来が有る県道が見えて来た。ここを渡れば、ゴールの登山口駐車場である。


「よし! 今は車の往来がないぞ。今が渡るチャンスだ。皆んな一斉に、道路を渡ってくれたまえ!」

 先生の合図と共に、一斉に道路を渡って行くメンバー達。速やかに渡り切り、とうとう登山口駐車場に到着したのであった。


「ヤッター! 駐車場に戻って来たよ。鬼ヶ岳から無事に帰って来れましたね。皆さん、お疲れ様でした。山頂での展望が素晴らしかったから、苦労して登った甲斐が有りましたね」


「まあ隼人ったら、無事に帰って来れたなんて言うなんて大げさな言い方をするわね。まあ、今日の登山道はスリル満点だったから無理もないと思うけど、何はともあれお疲れ様でした」


「お疲れ様です。そうよね、鬼ヶ岳登山は危険箇所も有ったから、何事もなく帰って来れたのは良かったと思うわ。今日の登山を終えて、私達のスキルが更に上がったんじゃないかしら〜」


「鬼ヶ岳の名前通り、岩場有り、梯子有り、ロープや鎖場有りの鬼の様な難度の登山道でしたの。わたくし達が難度の高い登山道を克服出来た事は、今後の登山の糧となりますね。でも、苦労して登って見た山頂での展望は最高の山でしたわ。鬼ヶ岳に登ってみて良かったです!」


「ふう〜ゴールの登山口駐車場に着いたね。皆んな、この難度の高い鬼ヶ岳の登山を終える事が出来て、素晴らしかったよ。これで君達のスキルアップがはかれた事は間違いないぞ。ご苦労様でした!」


 御一行は両手を上げて喜びを表現しながら、登山口に到着する。そして、難度の高かった鬼ヶ岳登山を振り返りながら、お互いに労をねぎらう。その皆んなの顔には山を登った達成感と、難度の高い登山道を克服出来たと言う安堵感が満ち溢れているのであった。


「さあ皆んな、この後は恒例の温泉タイムが待っているよ。この鬼ヶ岳でのハードな登山の疲れを癒すには温泉が一番だからね。速やかに温泉に出発したいから、登山装備を降ろしてトランクにしまってくれたまえ!」


「そうでした、温泉に行くんでしたね。鬼ヶ岳の登山は完了したと言っても、まだ山行き行事は終わってないですからね。女性陣の皆様、後は身体を癒す温泉入浴が待っていますよ。早速、登山装備を車にしまってしまいましょう〜」


〚はい! 了解しました。速やかに登山装備の片付けに入ります!!〛


 先生と隼人から声が掛けられ、女子達の威勢の良い返事と共に一同は一斉に登山装備を降ろして車のトランクにしまい込んで行く。温泉に早く行きたい気持ちがはやっている様で、あっという間にしまい終えて車に乗り込むのだった。


「皆んな、凄く早くしまい終えたな。車に乗り込むまで2~3分位しか掛かってないじゃないか。それだけ、温泉に早く行きたいと言う事なんだな。それでは期待に答えて一刻も早く温泉に行こうではないか。ここから車で僅か3分で着く所に有る、西湖畔の゛泉の湯゛に行くからね。では、出発するとしよう!」


「図星ですよ、隊長! もう、気持ちが温泉場に行っていて、僕の身体が早く入りたい! って言っているんですよ」


「今日の登山がハードだったから、沢山の汗をかいたし疲労度も凄いのよ。早く温泉に入って身体を癒したいわ~」

「登山の後は温泉に入って疲れを取るのが一番よ。今から行く゛泉の湯゛は、どんな泉質の温泉なのか楽しみだわ!」


「皆さん、温泉に行く話が出たら急に元気が出ましたわね。それだけ、身体を癒されに行きたいと言う事なのね。それでは隊長、泉の湯に向けて車を走らせてくださいませ~!」


「おう! 泉の湯に向けて車を走らせるぞ。温泉に入るのが楽しみに成って来たな」


 メンバー達の心は温泉に向けられ、はやる気持ちを抑えられない様である。その心を受け取った先生はエンジンを始動させると、泉の湯を目指して軽快に車を走らせて行く。

 その後、泉の湯に到着した御一行達は、肌をツルツルにさせてくれる効果のある゛美肌の湯゛とも言われている泉質の温泉に入り、登山で疲れた身体を癒したのであった。その後、車で帰路についた山楽部御一行達は、無事に沼津へと帰着して散開し、各々の自宅へと着いて、山行き行事を終えたのであった。

 今回の鬼ヶ岳登山では急な岩場が多かった為、梯子登りや、鎖場やロープの登り降りの経験を積んだ事により、メンバー達のスキルアップがはかれた事は間違いないだろう。この難度の高い岩場の登山道をクリア出来た事は、夏の鳳凰三山に向けての予行練習に成ったのではなかろうか。その鳳凰三山の夏合宿まで、あと1か月。

 それまでの間には、中級レベル6の山行き行事が有る。その中級レベルの山行き行事に臨み、更なるスキルアップをはかって行くんだ。そして、この勢いで夏合宿の鳳凰三山に臨め! 清流学園山楽部!!





 そして、鬼ヶ岳登山の山行き行事が終わり翌週の週末木曜日。山楽部の部室内では、次の山行き行事の説明が成されていると思いきや! そうではなく、明日から行われる夏休みの親睦会として解散される、リゾートアイランド宮池島、お泊まり親睦会の説明会が開催されていた。


「はい、明日の金曜日から2泊3日の予定で開催される、宮池島のお泊まり親睦会の案内プリントを渡したいと思います。今回の企画は如月さんのご両親のご好意により宮池島の別荘に泊まる事と成りました。それに加えて所有しておられますクルーザーに乗船させて頂き宮池島までの交通手段が確保出来ております。

 如月さんがご両親に口を聞いて頂いたお陰で、宮池島のお泊まり親睦会を開催する事が出来たと思います。改めて、皆んなで如月さんにお礼を言いましょう。有難うございました如月さん!」


〚如月さんのご好意、感謝してます。本当に有難うございました!〛


 お泊まり親睦会の説明会の冒頭で、今回の親睦会開催の立役者である穂乃花に対して、深々と頭を下げながら感謝の言葉を述べる山岸先生と隼人、友香里、華菜。その神様を崇様な眼差しを見せながら頭を下げている皆んなを見た穂乃花は、戸惑ってしまって居る様である。


「あ〜やめて下さい、 そんなにかしこまって頭を下げられたら、わたくし困ってしまいます。山楽部の皆さんのお役に立てれればと思い、当たり前の事をさせて頂いたまでです。

 両親も、わたくしがお世話に成っている部活動のお役に立てれればと、快く引き受けてくれました。むしろ、その感謝の念は、旅行当日に両親にして上げてくださいませ」


「いやいや、この位の誠意を見せるのは当然の事だよ。今回の親睦会は如月さんが居てくれたからこそ、実現出来た行事なんだよ。だから私達の誠意を受け取って欲しいと思う!」


「そうよ如月さん、同じ部活に貴女が居てくれたから頼む事が出来たんですもの、感謝するのは当然だから、あたし達の誠意を受け取ってね」


「あのリゾートアイランドに行く事が出来るなんて夢の様なの。だから貴女に誠意を届けるのは当然だと思うわ。勿論、当日に如月さんのご両親に会ったら、丁寧にお礼をする様にするわ!」


「如月さんのご両親のお陰で、あの宮池島に行ける事が出来た事を心底感謝しております。ご両親にお会いした時は、山楽部の部長として丁寧にお礼の言葉を伝えますね!」


 駿河湾沖に浮かぶ、あの有名なトライアングル諸島の宮池島に行けるとあって有頂天に成っている4人。その重要なはからいをしてくれた穂乃花は、もう神様の様な存在に成っている様だ。神様、仏様、穂乃花様状態と言ったところであろうか。


「皆さんが、そんなに感謝してくれて嬉しいがって居る姿を見たら、両親も大変喜ぶと思いますの。有難うございます。それでは、感謝の気持ちを受け取ったところで、そろそろ当日の詳しい行動説明をお願い致しますわ」


「そうだな、私達の感謝の気持ちを受け取って貰えたところで、本題の宮池島説明会をしようではないか。では、行動予定のプリントを渡したいと思います」


 皆んなからの感謝の念を受け取った穂乃花から、宮池島の行動説明をする様に促された先生は、肝心な事を忘れていたと言うばかりに慌ててカバンからプリントを取り出してメンバー達に手渡して行く。


「はい、皆さんにプリントが行き渡りましたね。では、遅く成りましたが、宮池島親睦会の行動予定を説明します。まず明日の集合場所ですが、星野さんと沢井さん、杉咲さんは、原駅に朝7時に集合してください。

 車でピックアップ後、西浦の港へと移動します。如月さんはご両親と一緒に現地に直接、向かうそうです。西浦港で合流後、如月家が所有するクルーザーにて港を出発して宮池島へと向かい、島に到着後に別荘へと移動する様に成ります。

 その日のイベントとして、如月家別荘のバルコニーを利用して夕食はバーベキューを行います。そのあと別荘周辺にて、なんと! 肝試し大会を行いたいと思います。以上が、大まかな1日目の行動予定と成っております」


 手渡されたプリントを見ながら先生から1日目の行動予定の説明が成されて、手渡されたプリントを見入って行るメンバー達。すると隼人が、手を挙げて口を開く。


「先生! 質問があります。1日目の行動予定の中に昼食の事が書かれてないのですが、自分で作ったりするんですか。それとも、皆んなで一緒にどこかの飲食店で食事をするとかでしょうか?」


「おお〜星野さんは気が付くところが違うね。まさか、食事の事が気になるなんてな。安心したまえ、1日目の昼食はクルーザーにて食べる様に成る。如月さんのご両親のご好意により、昼食が用意されているんだよ」


「そうなんですか、ご好意で昼食が用意されているんですか。如月さんのご両親が用意する食事は一体、どんな料理が出るのかなあ。今から楽しみですね、皆さん!」


「ちょっと隼人ったら、そんなに食事の事が気に成るのね。本当に気になるところが違うわよ。嬉しがるのも良いけど、まずは、食事の用意をしてくださっている如月さんにお礼を言わなきゃダメじゃない!」


「あっ! そうでした。杉咲さんの言う通りですね。僕は嬉しがるより先に、用意してくれてる如月さんにお礼を言わなきゃですね。改めて山楽部の部長としてお礼を言わせて頂きます。昼食まで用意してくれて本当に有難うございます。如月さんには本当に感謝しております!」


 昼食の用意までしてくれている穂乃花に対して、またまた頭を深々と下げて感謝の念を伝える隼人。その様子を見ていた穂乃花は苦笑いしながら口を開く。


「まあまあ、そんなにかしこまらないでください。今回の親睦会は、わたくしの両親が食事も含めて最大限の協力をしたいと考えていまして、張り切って居ますのよ。一日目の昼食は、母と一緒に作ったお弁当を用意いたしますわ。楽しみにしていてください」


「うひょー! 如月さんが腕によりをかけてお弁当を作って来てくれるんですね。きっと凄く美味しいお弁当なんだろうな。今から楽しみにしていますよ!」


「隼人ったら、凄い嬉しがり様ね。もっとも、如月さんが作って来てくれたお弁当ななら美味しい事は間違いないと思うわ。有難う如月さん、あたしも楽しみにしてるわね」


「私達の為に、そこまでの事をしてくれるなんて、もう神様仏様、如月様よね。如月さんの手作り弁当を食べながら駿河湾をクルージング出来るなんて、何だか夢の様ね~」


「食事の世話までして頂けるなんて、至れり尽くせりですよ。今回の親睦会は如月家の後ろ盾が有ったからこそ実現出来ているんだ。本当に感謝していますよ、如月さん!」


 交通手段と宿泊場所、それに食事の世話までしてくれている゛如月家゛に対して、またまた頭を下げながら感謝の意を表す先生と隼人、友香里、華菜。何度も頭を下げて感謝している皆んなの姿を見て、照れ笑いをしながらタジタジに成って居る穂乃花であった。


「おっと、食事の事で横道をそれてしまったな。続いて2日目~3日目の行動予定を伝えましょう。2日目の朝は別荘で朝食を取った後、如月家の車をお借りして移動して、宮池島のシンボルと呼ばれている野元岳に登りに行きます。

 この山は一部岩場の登山道が有り険しい箇所も有りますが、コースタイム3時間ですので午前中に登山を終えたいと思っております。下山後は麓の街の飲食店にて昼食を取る様になります。その後、来米島、伊景島の景色を眺めながらドライブした後、宮池島のサンセットビーチで海水浴を楽しみます。

 その後、別荘に移動して如月家が用意してくれた夕食を取る様に成ります。そして3日目は、別荘にて朝食を取った後、如月家のクルーザーに乗り帰路に着き西浦港へと戻ります。以上が、宮池島親睦旅行の日程と成りますので、明日からの旅行を楽しく過ごして行きましょう!」


 先生から、宮池島親睦旅行の全容がメンバー達に伝たえられた。バーベキュー有り、肝試し大会有り、登山有り、島内ドライブ有り、海水浴有りの盛り沢山の内容で、リゾートアイランド宮池島を満喫するのである。その親睦旅行に臨める嬉しさで、皆んなの表情は幸せに満ち溢れているのであった。


「先生から2泊3日に変更すると話が有った時は驚きましたが、これだけ内容が盛り沢山に成ると1泊では無理だと言う事が頷けましたよ。これは楽しみな親睦旅行に成りそうですね。

 ……それはそうと急遽、親睦旅行に特別参加して貰う事に成った岸本さんと高坂さんなんですけど、行動予定の方は未だ伝えて無いと思うのですが、如何したら良いのでしょうか?」


「おお~そうだった、君達に伝えるのを忘れていたよ。岸本さんと高坂さんには、私から個別に行動予定のプリントを渡して大まかな事は伝えて有るからね。その辺は心配いらないよ」


「そうですか、僕が心配する事は無かったですね。流石は山岸先生、その辺は抜かりはないですね。親睦旅行に2人の参加を特別に認めてくれて本当に有難うございました。きっと岸本さんと高坂さんも、今頃は心は宮池島に飛んでるんじゃないでしょうか!」


「そうね隼人の言う通り、岸本さんと高坂さんは宮池島に行ける嬉しさでいっぱいなんじゃないかしら。この山楽部以外の2人が特別参加してくれたから、更に親睦旅行が盛り上がる事間違いないわね。明日からの宮池島行きが本当に楽しみに成って来たわ」


 何と! 山楽部以外の部活に席を置く岸本和也と高坂恵美が特別参加をする様である。えっ? ちょっと待て! 何でこの2人が急遽参加する事と成ったのだろう。

 この2人だって所属する部活があるから、夏休みの部活動に出なければいけないハズだ。たまたま日程が空いて居たのか? それとも自分が所属する部活の練習をサボって参加すると言うのか? 謎が深まるばかりである。

 まあ、その謎の部分はおいおいわかるでしょう。何はともあれ部外者の2人が参加する事により、宮池島親睦旅行に風雲急を告げる事は間違いないだろう。


「岸本さんと高坂さんは明るい性格の人達だからな。この2人の参加により、親睦旅行が賑やかに成るのは間違いないだろう。では、そろそろ説明会を終わりにするとしよう。朝早い集合時間に成るから遅れない様に、皆んな早めに寝て明日に備えるんだぞ。それでは、これにて散開しましょう!」


「はい、明日は楽しみにしてます。皆さん先生の言われた通り、集合時間に遅れる事のない様にお願い致します。では、また明日!」


「そう言っている隼人くんが、時間に遅れない様にね。今日は早く寝る様にして、明日の英気を養っておくわ。それじゃあ、また明日に会いましょう」


「わたくし、何か行事が有る前の日は中々、寝付く事ができませんが、頑張って早く寝る様しますの。明日からの3日間、皆さんで楽しく過ごしましょうね〜」


「明日からの山楽部の夏の親睦会、皆んなで楽しんで思い出深いものにして行きましょう。今日はぐっすりと寝て、元気ハツラツで来る様にするわね。それじゃあ明日の朝に会えるのを楽しみにしてるわ!」


 先生の散開の掛け声を聞いたメンバー達は、親睦旅行に向けて抱負を互いに語り合いながら、部室を出て家路へと着いて行くのであった。

 山楽部の面々に、特別参加の岸本和也と高坂恵美を加えた総勢7名の山楽部+‪α‬の御一行達と成り、賑やかな宮池島親睦旅行が開催される事は間違いないだろう。明日からの3日間、この個性あふれるメンバー達が織り成す人間ドラマが展開されて行くのではなかろうか。

 と言う事で、次回からは宮池島親睦旅行編に突入して行きます。一体、どんな話が展開されて行くのか気に成るところでは有りますが、楽しみにして待っていてください。皆様、乞うご期待!!







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