第43話 鬼ヶ岳登山、「隊長&隼人、急峻な岩場を登る!」編

 第2関門の急斜面の岩場のロープ降りを無事に終えた山楽部御一行は、次の中継地である鍵掛峠に向けて下山を再開して歩んで行く。

 鍵掛峠までの稜線歩きは引き続き岩場の登山道が続く。しかもアップダウンが連続していて、登山道を上がったり下がったりを繰り返しながら少しずつ山を降りて行く様になるのだ。

 ただひたすら降りて行く登山道の方が気持ちは楽だが、このようなアップダウンが有る稜線の登山道を降りて行くのは精神的にも、かなり辛く感じてしまうのである。


「先ほどから岩場の登り降りが連続していますね。通常の様なひたすら降りて行く登山道よりも、この様な登山道は精神的にもキツくて疲労度が増しますよ」


「隼人の言う通り、下山していると言うのに岩場を登っている時が有るから身体に負担が掛かって来て、汗が出て来ますの」


「稜線歩きが、こんなにも疲れると思わなかったわ。何で、平らな登山道じゃないのかしら。普通に降りて行くだけだったら、どんなにか楽なのになあ」


「友香里は愚痴をこぼしちゃダメよ。この様なアップダウンが連続する登山道は、レベルの高い山々には付き物だと思うわ。そうですね、隊長!」


「そうだな沢井の言う通り、難度の高い山々に来るとアップダウンが連続する稜線歩きは、ごく普通に有るものなんだよ。だから、今歩いている登山道で参ってしまっていたら、今後に臨む難度の高い山々には登れなく成ってしまうからね。だから、この鬼ヶ岳の稜線歩きで経験を積んで、今後の糧として欲しいと思う!」


 アップダウンが続く稜線を進むメンバー達は、身体にも負担が掛り精神的にも辛い事を口にする。だが先生は、その弱音を吐くメンバー達に対して、今後の糧とする様に諭すのであった。先生から発破を掛けられた事により、より一層緊張感を高めた顔つきで岩場の稜線を歩いて行く隼人と友香里、華菜、穂乃花。

 そして、苦しく辛い稜線歩きを進んで行く事15分。御一行達は見通しの良い開けた岩場の上へと辿り着く。その岩場に来た時、目前に何かを目撃した様で御一行達は一斉に足を止めたのであった。そして先生は、目の前に聳える岩場を指さしながら口を開く。


「よ~し、全員が足を止めたね。皆んな、目の前に立ちはだかっている切り立った岩場を見てくれたまえ。この稜線の登山道において、一番大きく切り立った岩場に成るんだよ!」


 先生が指さす方向に目を注ぐメンバー達。そこには、高さ15mはあろうかと思われる切り立った岩場が聳えていたのだ。その岩場を見たメンバー達は、顔色を変えながら口を開いた。


「ちょっとちょっと、何なのこの切り立った岩場は! もしかして、この岩場を越えて行かなければ成らないと言う事なのかしら?」


「何て高さの有る岩場なのかしら。華菜の言う通り、この岩場を越えるとなると、大変な労力が要ると思うわ。と言うより、そもそも登る事が出来るのかなあ」


「でもでも、こんなに切り立った高さの有る岩場なのに、ロープや鎖が張り巡らされていないわ。登る為の補助具が無いのに、如何やって登る事が出来るのかしら?」


「友香里の言う通り補助具がなさそうだね。だけど、この切り立った岩場を乗り越えて行かないと下山が出来ないって事でしょう。ん~と、見たところ、かすかに人の踏み後らしき道が有りますよ。そうすると、この道筋を通って岩場を越えて行くのではないかと。そうですよね、隊長!」


 切り立った高さの有る岩場を見た途端、血相を変えて声を上げるメンバー達。無理も無い、切り立った岩場になのにロープや鎖も張り巡らされていない。そうなると、岩や木の枝を掴みながら這うようにして登らなければ、この岩場を越える事は出来ないのである。

 その慌てふためくメンバー達の顔を何故か静観して見つめる山岸先生だったが、緊張した表情を見せながら話し出した。


「まあまあ、慌てるでない。皆んな、切り立った岩場を見て度肝を抜かれたんだろが安心したまえ。この岩場を越えて登山道が有る訳では無いからね。ここはね、岩場の名所とも言うべき場所なんだ。

 ここから左下を見てごらん。下へと伸びて行く登山道が見えるだろう。今、立って居る場所から岩場を左の方へ降りて行けば、下山する登山道へと通じているんだよ」


「そうゆう事だったんですか、隊長! てっきり、この岩山を越えて行かなければ成らないと思っていましたよ。ああ~良かった、ホッと一安心しましたよ」


「隊長が、まじまじと真剣な顔をして岩山の方を指さすものだから、私もこの岩山を越えてくものだと勘違いをしてしまいました!」


「隊長が真面目な顔をするものだから、騙されてしまいましたわ。こんな崖の様な岩山を登る事に成らなくて、本当に安心しましたの」


「ふう~とにかく、この岩山を登る事に成らなくて良かったですよ。そうと分かれば、この岩場を降りて左下に伸びている登山道の方へと進みましょう~」


 先生から、目の前の切り立った岩場は通過せず左下へと降りる登山道へと進む事を聞かされたメンバー達は、手の平を返した様に安堵の表情を浮かべる。そして隼人の口からは早速、登山道を降りて行こう! と声が上がった。

 だが一人、先生だけは何処吹く風の表情を見せている。そして先生は暫くの間、岩山をジッと眺めてた居たが、ようやく口を開いた。


「皆んな聞いてくれ! これから、今いる岩場を降りて左下に伸びる登山道を進む訳なんだが、その前に! ちょっと、寄り道をさせて欲しいんだ」


 突然、寄り道をさせて欲しいと言う言葉を聞いたメンバー達は、キョトンとした顔を見せて驚く。そして隼人が、どうゆう事なのかすかさず先生に問い掛けた。


「えっ? 寄り道をさせて欲しいとは一体、何処に寄って行くと言うのですか、隊長!」

「よくぞ聞いてくれたね、星野。実はね、この切り立った岩場のてっぺんに登ってこようと思うんだ!」


 やっと口を開いた先生から飛び出した言葉は、目前に聳える切り立った岩場の上に立つと言うものだった。その驚きの言葉に、メンバー達は唖然茫然としながら先生を見ている。


「隊長! 何を言い出すのかと思えば、この岩場の上に立とうなんて言うなんて、余りにも無謀すぎますよ」


「そうですよ、隊長! こんなに急な崖斜面の岩場を登ろうなんて、危険極まりないから止めた方が良いですよ!」


「わ、わたくしも、止めた方が良いと思いますの。もしも、足を滑らして落っこちたら大変な事に成りますから、考えなおしてください」


 先生の無謀な゛岩場登頂発言゛を聞いて心配した女子達は、血相を変えながら止める様に声を上げるのだった。だが、その心配する女子達の様子を見たにも関わらず、先生は何処吹く風と言った表情を見せながら話し出した。


「まあまあ、そんなに心配するでない。この岩場はかなり切り立った崖斜面に成っているが一見すると、その出で立ちに圧倒されてしまって、しり込みをしてしまう。

 だが私の今までの経験上、登れない事はないと思うんだ。ほら、僅かに踏み後らしき道筋が有るだろう。そこを登って行けば岩場のてっぺんに立てるハズさ!」


「女子達の心配する言葉を一喝してまでして、この際立った岩場を登ると言うなんて、僕は本当に驚きましたよ。山経験が豊富な隊長が登れると言うからには、この岩場のてっぺんに行けるのだと思いますが、そこまでして立ちたいと言う理由は何なんですか?」


「おお~星野よ、良い質問だね。それは、頂きの上に立ちたいと言う、山好きの血が騒ぐと言う事なんだ。この空を貫く岩場のてっぺんに立って、ポーズを決めたいんだ。そして、その私の勇姿を諸君に撮って貰いたいんだよ!」


「そうなんですか。登山好きの血が騒いでしまって、はやる気持ちを抑えきれないと言う事なんですね。何だか隊長は、童心に帰った様な感じで嬉しそうですね。聞きました女性陣の皆さん。

 岩場の上でポーズを決めたところを写真に収めて欲しいそうです。隊長の期待に答えて童心に帰った姿を撮って上げようと思うのですが、如何でしょうか?」


 隊長から、岩場の上でポーズを決め込む姿を撮って欲しいと言う事を聞いた隼人は、そうしたらどうかと、すかさず女子達に聞くのだった。その事を聞いた女子達は暫く考え込んだ後、口を開いた。





「登山好きの血が騒ぐなんて、隊長らしいわね。そんなに岩場の上に立った勇姿を写真に収めて欲しいと言うなら、私達で撮って上げても良いんじゃないかしら」


「危険な事はしない方が良いと思ってたのですが、隊長がそんなに登りたい様なら、もう止めたりしないわ。安全面に気を付けて登ってくださいね。わたくし達は、隊長の勇姿を下から見守って居ますわ」


「あたし達の忠告を一切聞き入れないで、こんな急な岩場に登ろうとするなんて、流石は登山の申し子みたいな隊長らしいわね。その期待に答えて写真を撮って上げましょうか。

 ……そうだ! 良い事を思い着いたわ。こうなったら、隊長だけでは無くて隼人もこの岩場を登って、隊長と一緒に写真に納まったらどうかしら?」


「ちょっと待ってくださいよ。いきなり何を言い出すんですか、杉咲さん! こんな危なそうな岩場を登って行くなんて、僕には到底無理な事ですよ。こんな難所を登れるのは、登山のベテランの隊長ぐらいなものですよ~」


 隊長の岩場での写真撮影の話しの中で、華菜から突然、隼人も登って一緒に隊長と写真に納まったらどうかと言う話が上がった。だが隼人は、危なそうな岩場を登るのは御免だとばかりに手を顔の前で振りながら拒絶するのだった。


「そんなに嫌がらなくても良いじゃない。男なら、ここは度胸を見せて、この岩場を乗って見せて欲しいわ~」


「そうね~華菜の言う通り、難所の岩場登りに立ち向かうと言う隼人の意気込みを見せて欲しいわ。さっき、岩場のロープ降りを終えた時に隼人が言っていたじゃない。今度、難所が有った場合は先進を切って臨む様にしますと。早速、その言葉を実行に移す機会が来たって事よ!」


「ああ~そうですわね、友香里の言う通りだわ。次に難所が有った時は前を進みます! と言っていましたの。もう、有言実行を目の前で果たす時が来たんじゃないかしら。頑張ってみてください、隼人!」


 切り立った岩場登りを拒絶する隼人に、女子達は勇気を見せて登って欲しい事を告げる。どうやら、つい先程の岩場のロープ降りの時に、隼人が口にした言葉を実行に移して欲しい様である。


「あ〜いやいや、ちょっと待ってください。先ほど言った言葉は、あくまでも登山道上に有る難所を抜ける時に、先陣を切って前を進むと言ったまでです。確かにここの岩場は、切り立っていて難度が高そうですが、下山する為に通る登山道では無いですよね。

 だから、僕が言った言葉には当たらないと思うのです。ですので、あえて危険な岩場登りをしたくはないですよ」


「ちょっと、何を弱気な事を言っているのよ。そんな弱気な事を言ってないで【この岩場登りに挑戦して、僕の勇姿を皆んなに見て貰うんだ!】と言う感じのノリで、あたし達に見せて欲しいわ。そうなったら、隼人は凄く勇ましくてカッコ良い人だなって思うわよね。友香里と穂乃花もそう思うでしょ!」


「そうね華菜の言う通り、ここは男らしく勇ましい姿を、わたくし達に見せて欲しいわ。そうしてくれたら、隼人のカッコよさに惚れてしまう人が続出してしまうわね」


「そうそう、率先して難度の高い岩場にも臆する事無く挑戦して、頂きの上に立って居る隼人の勇姿を見たいわよね。その姿を、私達が写真に撮って上げて、エールを送ってあげるわ。だから、岩場登りに挑戦すると言って欲しいわ、隼人!」


 女子達から、率先して岩場登りに挑戦する男らしい姿を見せて欲しい! と声が上がる。当初は血相を変えて拒否していた隼人だったが、女子達からの思いがけない応援の言葉を聞いた事により心境に変化が出て来た様で、ニコやかな笑顔を見せた後、話し出した。


「女性陣の皆さん、そんなに僕の岩場登りの勇姿を見たいんですね。……分かりました! 良いでしょう。この切り立った岩場を登って、岩場登りが何たるかを皆さんにお見せしましょう。僕の登る勇姿を目に焼き付けさせて上げますよ!」


「良く言ったわ、隼人! それでこそ、山楽部の部長を務める者だけの事はあるわ。貴方の岩場登りのスキルを私達に見せてね」


「流石は、隼人だわ。あたし達からのエールを受け取って、やる気満々に成った様ね。頑張って岩場登りに挑戦して、てっぺんでガッツポーズを決めて欲しいわ!」


「わたくし、岩場登りに立ち向かう隼人の姿に感動しましたの。きっと、素晴らしい岩場登りのスキルを見せてくれるに違いないわ。隊長と一緒に、頂きを目指して突き進んでね!」


「女性陣の皆様、熱いエールを僕に下さり有難うございます。皆さんの期待に答える様な、岩場登りのスキルを披露して見せますよ。そして、岩の上でガッツポーズを決めて見せます!」


 隼人は、女性陣からのエールを貰った事で、俄然張り切ってやる気を出した様で、切り立った岩場登りに挑戦して行く事を宣言する。やはり、女子達からの黄色い声援と言うのは、男子の心を突き動かすと言う事なのか。とにかく隼人は、やる気満々に成った様である。

 その女子達と隼人のやり取りの様子を静観して聞いて居た先生だったが、隼人が岩場登りに挑戦する事を宣言した事に、喜びの表情を浮かべながら口を開いた。


「よーし! 良く決心したな、星野。それでこそ山楽部の部長を務めるだけの事は有る。この険しい岩場でも、ちゃんと道筋を見極めて登って行けば、やってやれない事はないんだ。私がまづ先に登って行くから、君は私が手を着き足を着いた場所を参考にしながら後に付いて登って来るんだ。

 一旦、ここの岩場を降りて平坦なところの場所まで皆んなで降りよう。その場所から、私と星野の岩場登りの挑戦をスタートさせるからね。では皆んな、私に付いてきたまえ!」


 先生は隼人の岩場登り宣言を歓迎して、心底嬉しく思うのだった。そしてメンバー達を引き連れて、今居る岩場を降りて平坦な場所まで歩んで行く。そう、この平坦な場所から切り立った岩場登りが始まるのである。そして一同は、平坦な場所に辿り着くと切り立った岩場を見上げるのだった。


「さあ、この場所から岩場を登り始めるとしよう。私がまづ先に登って行くから、足を着いた位置や岩を掴んだ手の位置を参考して、星野は後に付いて登って来なさい」


「分かりました、隊長の進む道筋を参考にしながら登って行きます。凄く緊張してますが、安全に登れる様に慎重に登る様にします。では隊長、岩山のてっぺんを目指して出発しましょう!」


「おお~凄い意気込みで頼もしいな。それだけやる気が有れば、必ずや岩場登りを成し遂げる事が出来るよ。それでは星野よ、岩場登りを開始するとしようか。女子達はこの場で残って、私と星野の動向を見守って居てくれたまえ!」


「ここからお二人の登って行く姿を、見守って居ますの。くれぐれも安全面に気を配りながら頑張って登り切ってください」


「足元に気を付けながら、安全に登って行ってね。岩場の上に着いたら、カッコ良いポーズを決め込んで、カメラ目線を私達に送ってください!」


「行ってらっしゃい隊長、隼人! 山楽部の男達の底力を見せて頂戴ね。くれぐれも足を滑らせて落っこちる事の無い様に慎重に、ゆっくりと登って欲しいわ」


 女子達から熱い応援の言葉を貰った先生と隼人は、ニッコリと笑顔を見せながら手を振った後、岩山へと登り始める。平坦な登山道の場所から一歩付踏み出せば、斜度は50°位は有ろうかと思われる急峻な岩場登りが待ち受けて居るのだ。2人は、その急峻な岩場に足を着き手を着きながら、ゆっくりと慎重に登って行く。


「この壁の様な斜度の岩場でも、必ず安定して足を着けるポイントが有るものなんだ。その足を着く場所を、まづ見極めて足を着い行くんだ。そして身体は、斜度がキツクな成れば成るほど前傾姿勢を保つんだ。手は掴みやすい岩や木の枝を握り締めてロープ代わりにする様にしなさい!」


「分かりました! 隊長の指示を実行に移して、安全に登って行く様にします」


 先生からの登り方の指示を受けた隼人は直ぐ様、実践して岩場を登って行く。足を安定した岩場の窪みに着き、手は岩や木の枝を掴んでロープ代わりとしながら、慎重に少しずつ上え上えと登って行くのだった。

 少しでも気を緩めれば足を滑らしてしまい、滑落は免れないのだ。その事態を防ぐ為にも、2人は緊張した面持ちで一歩一歩、ゆっくりと慎重に登って行く。


(うわ〜凄い急斜面だよな。鬼ヶ岳の山頂直下に梯子が掛かっていた岩場の斜度を除けば、今までで1番斜度がキツイんじゃないかな。この斜度で足を滑らしたら一気に下まで滑落しそうだな。

 元より、ここは登山道が作られた場所では無いから、そもそもこの岩場に足を踏み入れて良いものなのかな。あっ! 不味い不味い、そんな心配よりも今挑戦している岩場登りに集中しなければ。

 ……それにしても隊長は、この斜度の岩場でもコンスタントに足を着く場所を見極めて登って行くよな。やはり瞬時に見極めながら、素早く登って行く事が大事なんだ。考える時間が長くて止まっていたら、恐怖心が増して身体が動かなく成ってしまうもんな〜)


 隼人は、斜度が50°は有ろうかと思われる岩場の洗礼を受けて、登り出した当初は尻込みをして居たが、この急斜面の岩場をものともせずコンスタントに足を着き、岩や木の枝を掴みながら登って行く先生の姿を見て驚くのだった。

 そして自分も先生を見習って、臆する事なくコンスタントに登って行く事が大事だと悟り、先生の進む後を参考にして必死に付いて行くのであった。


「星野! 三分の二は登って来たぞ。あと5mほど登れば、岩場のてっぺんにでるよ。あと少しだから、気を抜かづ慎重に登って来なさい!」


「分かりました、隊長! 一時も気を抜く事無く登って行き、必ずや岩場の上に立って見せます。岩場の頂上が見えて来ましたね」


 岩場登りも三分の二の所まで登って来た2人は、岩場の頂が見えて来た事で俄然、張り切って頂上を目指して行く。ここまで登って来て足を滑らすことなく、コンスタントに登って来た。だが、ここで気を抜く事無く、気を引き締めて急峻な岩場を一歩一歩慎重に登って行く先生と隼人。

 そして最後の一歩を踏み入れ、とうとう岩場の頂上へと到達したのであった。その到着した2人の目の前には富士山と西湖の展望が開けて、切り立った岩場の頂上から眺める壮大な展望が広がっていたのだ。





「お~し! 頂上へ辿り着いたよ。ここまで良く登って来たな、星野。安定した登りっぷりで素晴らしかったぞ。如何だい、この切り立った岩場の上から眺める展望はスリル満点で、また違った感覚で景色を眺める事が出来るんじゃないかな!」


「ヤッター! 頂上に辿り着いたよ。こんな急な岩場を登って来れたなんて、僕って凄いよな。……うひょー! こんな切り立った崖の上に立って居る自分が信じられないよ。あと2mほど先は、断崖絶壁に成っているんだもんな。

 これ以上前に進むと崖から落っこちてしまうから、気を付けなければな。それにしても、この一歩間違えれば奈落の底に落ちてしまうスリル感が、ここから眺める展望をより一層、素晴らしく感じさせてくれて最高の気分にさせてくれますよ!」


「そうだろそうだろ、切り立った岩場の上に居ると言うスリル感が更に気持ちを高揚させてくれて、この場から眺める展望の感覚を高めてくれるんだよ」


「急な岩場を必死に登って来て、断崖絶壁の岩場の上に辿り着いた達成感が何とも言えませんよ。その達成感とスリル感が合わさって気持ちが昂り、ここから見渡す展望を最高のものに感じさせてくれるんですね」


 苦労して登って来た急峻な岩場を登り終えた達成感とスリル感が、気持ちを高揚させて行く。その高揚感が、そこから眺める展望の感覚を更に素晴らしいものに変えて行くのである。

 スリル満点の切り立った岩場の頂上に立つ先生と隼人は、感無量の表情を見せながら暫くの間、ウットリと景色を眺めながら立ち尽くして居たのだった。すると、景色に酔いしれて居る2人に対して、崖の下から甲高い女子達の声が届けられる。


「ちょっとちょっと、何を呆然と立ち尽くして居るのよ。何だか魂を抜かれたみたいじゃない! そんなに凄い展望が広がっているのかしら~」


「隊長! 隼人! そんなに呆然として居ると、うっかりすると崖から落っこちてしまうわよ。正気に戻って、あたし達の方にも目線を送って頂だい!」


「華菜の言う通りボーっとして居ると、足を滑らして落っこちてしまうかも知れないわ。そうならない様に、わたくし達にカメラ目線を送るなり、話し掛けて来るなり、何かアクションを起こしてください!」


 岩場の上で呆然と立ち尽くす先生と隼人を心配した女子達から、正気に戻って自分達の方を見る様にと声が掛けられた。その大きな声を聞いた2人は、ハッとして我に返って正気を取り戻すと、崖の下に居る女子達の方に目線を移して口を開いた。


「いや~すまんすまん。必死に岩場を登って頂上に辿り着き気持ちが高揚して居たところに、目の前に開けた展望を見て呆然としてしまったんだよ。君達の声を聞いて、やっと正気に戻れたよ」


「そうなんです、隊長のおっしゃる通りなんですよ。必死に登って来てテンションが上がってたところに、このスリル満点の断崖絶壁の上での展望が開けて、もう気持ちが昂ってしまって放心状態の様に成ってしまってたんです。女性陣の声を聞かなければ、未だ立ち尽くして居たとこでしたよ!」


 崖の上から見下ろす様にして、下に居る女子達に大声で話し掛ける先生と隼人。やっと我に返った2人を見た女子達もホッと一息入れて、安堵の表情を浮かべながら話し出した。


「良かったわ〜2人とも正気に戻ってくれて。あのまま放心状態で居たら、間違って崖から足を踏み外してしまう感じがしたから、ホッとしたわよ」


「岩場を登り切った後の身体の高揚感が凄いのね。その高揚感が頂きでの展望を更に増幅させてくれると言う事なのか〜」


「身体の高揚感を高めた後に、山頂で眺める景色は最高なのかもね。わたくし達も、その高揚感で眺める展望を体験出来る時が来ると良いのだけど。今後に機会が有れば、岩場登りにチャレンジしてみたいですわ」


 女子達は、先生と隼人の気持ちが昂っている姿を見て少なからず関心を示している様で、次は機会あらば自分達も岩場登りに挑戦したいと思っているのだった。


「女性陣の皆さん、そろそろ僕達が岩場の上でポーズを決めて居る写真を撮って欲しいのですが。お願いしてもよろしいでしょうか?」


「そうだな、やっと高揚感がおさまって来た事だし、写真を撮って貰うとしようか。宜しく頼むよ女性陣の諸君!」


「はーい! 良いですよ撮りますよ。私が撮る様にしますから、カッコ良いポーズを決め込んでくださいね~」

「写真を撮るのが上手な友香里にお任せしようかしら。2人の勇ましい姿を撮って上げてね!」


「カメラマンは決まりましたわ。あとは隊長と隼人が決め込むポーズ待ちですよ。宜しくお願いいたします!」


 カメラマンが決まり、隊長から手渡されていたデジカメを手に持ち構える友香里。その、カメラマン友香里の姿を見た隊長と隼人は、ニッコリと笑顔を見せながら手を振ると岩場の上でポーズを取って行く。


「やはり、ガッツポーズを決め込むのが良いだろうな。だが2人共、両手を上げて居たら、この狭い岩場では身体が接触してしまい危なそうな感じがするな。……そうだ! 片手をお互いに上げれば良いんじゃないかな。私が右手を上げるから、星野は左手を上げてポーズを決め込むんだ」


「隊長! それは良い提案ですね。それなら、2人がコンパクトにまとまれるから、狭い岩場の上でも安全にポーズを取る事が出来そうですね。早速、その様にお互いに片手を上げて、ポーズを決め込んでみましょう!」


 先生は、2人が互いの片手を上げてポーズ取る事を提案する。その提案に快く賛成した隼人は、先生と一緒に片手を上げポーズを決め込んで行く。立ち位置が右側の先生は右手、立ち位置が左側の隼人は左手を上げて゛片手ガッツポーズ、コラボバージョン゛が完成したのである。


「よし! 2人のコラボガッツポーズが完成したぞ。では、シャッターを押すのを頼んだよ、沢井!」

「お願いします、友香里! 隊長と僕とでの共同作業で完成した、コラボガッツポーズを撮ってくださいね」


 先生と隼人がコラボガッツポーズを決め込んだ姿を、岩場の麓から見届けた友香里は、2人に向かって大きな声を上げる。


「共同作業でのコラボガッツポーズ、良く考えたわね。凄く勇ましくてカッコ良いわよ! 2人共、そのままのポーズを維持してね。それじゃあ、シャッターを切らせて貰うわ。ニッコリと微笑んでね~良い感じよ~はい! チーズ!!」


⦅カッシャ!!⦆

 カメラマン友香里の、甲高い声と共にシャッターが切られて、岩場の上でのコラボガッツポーズが写真に収められた。


「はーい! 写真が撮れたわよ。上手く撮れたと思うから大丈夫だと思うわ。写真を確認して貰いたいから、下に降りて来てちょうだい」


「友香里カメラマンが撮ってたから、素晴らしい写真が撮れていると思うわ。気を付けて崖斜面を降りて来てね!」


「隊長、隼人! 降りて来たら一緒に写真を見ましょう。降りる方が危なそうだから、とにかく怪我が無い様に慎重に降りて来てください」


「写真撮影の方、有難う! 素敵な写真が撮れているのを楽しみにして降りるよ。それでは星野、岩山の下山を開始しようじゃないか!」


「友香里! 写真を撮ってくれて有難うございます。今から岩場を降りて、そちらに向かいます。では隊長、岩場を降りて行きましょう!」


 カメラマン友香里が撮った写真を見るべく、先生と隼人は岩場の上から女子達に手を振って合図した後、急峻な岩場の下山を開始して行く。女子達から声が掛けられた通り、急峻な岩場や登山道に成れば成るほど、登るよりも降りる方が大変で危険も伴うのである。

 身体に掛かる負担、特に下半身に掛かる負担は格段に降りる時のが大きい。加えて足を滑らして転倒したり滑落するのも、圧倒的に下山する時に起きるのだ。今、2人が降りようとしている岩場は斜度がかなり急で有り、その危険度はかなり高いといえよう。


「星野、聞いてくれ! 下山する時の方が下半身、とりわけ膝に掛かる負担が大きく成り、そこへ来て足を滑らせ易いんだ。良いか! これだけ急な斜度だから一度、足を滑らすと数メートルは滑落してしまうだろうから、とにかく足を着く場所を良く見極めて、一歩一歩ゆっくりと慎重に降りて行く様にしなさい!」


「はい! 分かりました隊長。下山する時の方が足を滑らし易いのは良く存じております。これだけの急な斜度の岩場降りと成ると、その危険性が倍増されますよ。この斜度で足を滑らせたら、本当に何メートルも落っこちてしまいそうですね。そうならない様に、気を付けながら慎重に降りて行く様にします」


 先生から、急峻な岩場降りでは危険性が更に高まる事を告げられた隼人は、緊張した面持ちを見せる。そして、慎重に足を着く場所を見極めながら、一歩一歩ゆっくりと岩場を降りて行く。


(うわ~下山の時に成ると、この岩場がどれだけ急な斜面なのかが分かるよ。登っている時は上を向いているから、さほど急な感じはしなかったけど、降りる時は下を向いていて麓からの標高差も良く分かる。

 なので、高低差を身を持って体感する様に成るから斜面が急なのが分かってしまい、恐怖心で足がガクガクしてしまうよ。でも、この恐怖心に打ち勝たなければ、この岩場を降りる事が出来ないからな。とにかく、足を滑らせて滑落しない様に、慎重に降りて行かなければ!)


 隼人は目前に見る、急峻な岩場の高度感と急激な斜度を身を持って体感した様である。急な斜度の岩場や登山道は下を見下ろす下山の時の方が、麓との高度感と急激な斜度の状態を目の当たりにして、心身が体感した事により恐怖心が増してしまうのだ。

 隼人は、その体感した恐怖心に打ち勝つべく気持ちに気合を入れ直すと、前を降りる先生の動向をお手本にしながら急峻な岩場を降りて行くのであった。





「あと5m降りれば岩場の麓に降りて、女子達の居る所へと辿り着く。転ぶのを防ぐ為にも足を着くところを見極めるのは勿論の事、岩や木の枝をしっかりと掴んで行く事が望ましいぞ。もう少しだから、気を抜く事無く降りて行く様に!」


「岩や木の枝をしっかりと掴みながら降りると、足元の踏ん張りも効きますね。この様な急斜面では足だけでは無く、手も使って全身で降りて行けば良いと言う事ですね。あと少しで麓に着くから、気を抜かづに慎重に降りて行きます」


 あと少しで岩場の麓に降りれるとあって気が早るところだったが、そこは気を抜か づに慎重に降りて行く様にと、隼人に気を引き締める様に告げる先生。気を抜けば、あと数メートルの所で足を滑らせてしまう事にも繋がってしまうので、隼人はより一層、緊張した面持ちに成りながら慎重に岩場を降りて行く。

 そして、この慎重さが功を奏したのか2人は一度も足を滑らす事無く、無事に麓に降りて来て女子達の居る所へと辿り着いた。


「隊長、隼人! お疲れ様でしたの。この急な岩場を安定した足取りで降りて来ていたから、安心して見て居られました。何事も無く、無事に降りて来らた様で良かったですわ」


「麓から2人が降りて来るのを、最初はヒヤヒヤしながら見ていたけど、凄く慎重に気を使いながらゆっくりと降りて来ているのを見ていたら、途中から安心して見て居られましたよ。お疲れ様でした!」


「この急な岩場の登り降りを見事に成し遂げましたね。山楽部の男性陣の度胸と底時力が爆発したって事かしら。何はともあれ、この岩場を無事に降りて来れて良かったです」


「温かいお出迎えを有り難う! 無事に降りて来れて良かったよ。今までの山登りの経験が糧と成って、この急峻な岩山の登り降りが出来た思うよ。その事は、星野が一番身を持って感じているんじゃないかな」


「女性陣の皆さんのお出迎え、感謝します。星野隼人、岩場登りを完遂して戻る事が出来ました。隊長の言う通り今までの登山経験が有ったからこそ、この険しい岩場の昇り降りを成し遂げる事が出来たと思います!」


 岩場登りを完遂した2人を、女子達は笑顔を見せながら温かく迎え入れる。先生と隼人も、何事も無く岩場を降りて来れた事で、安堵の表情を見せてホッと一息つくのであった。そして男性陣の帰還を歓迎する雰囲気の中、カメラマン友香里が口を開いた。


「さあ、男性陣の無事の帰還が出来たところで、岩山の頂上で写真に収めたお二人さんの勇姿を、皆んなで見ようじゃありませんか!」


「おお~そうだったな。沢井が撮ってくれた写真を見なければな。早速、画像を見してくれたまえ!」


 先ほど岩山の頂上で撮った写真を見ようと声が掛かり、周りに居た皆んなは一斉に友香里の持つデジカメを覗き込んで行く。


「おお~岩場の麓から撮っただけあって、岩山のてっぺんに居る私と星野が、空を貫く様にして手を挙げガッツポーズをしている姿がカッコ良く撮れているではないか!」


「これはまた凄い写真が撮れているではないですか! 僕達の身体がまるで空の上に浮いている様な感じがしますね。それに隊長の指導によるコラボガッツポーズ姿が勇ましい姿で写っていて、これはインパクトが有る写真が撮れましたね」


「流石は、撮り方が上手な友香里だけの事はありますの。絶妙のアングルで、隊長と隼人が写されていますわ。これは思い出に残る写真が撮れましたわね~」


「これだけ険しい岩場の上で撮られた写真は、スリル感がハンパないわね。とんでもない所で撮ったと言う事が、ひしひしと伝わって来るわ。とても上手に撮ったわね、友香里!」


「どうよ~カメラマン友香里の底力を思い知ったでしょ! 写真を撮る時はカメラのアングルが大事だから、2人が岩の上で手を挙げて空を貫いている姿が良く見えるポイントに構えて撮った訳よ。まあこれで、私のカメラマンとしての才能を皆んなに見せつける事ができたわ!」


 友香里の撮った写真を見た隊長と隼人、華菜と穂乃花は、その絶妙なアングルで撮られた写真を褒め称えるのであった。そして褒めちぎられた友香里は、得意げな顔を見せながら有頂天に成って居るのであった。

 この登山途中の稜線に有った急峻な岩場での登り降りは、実際には登山道が作られてはいません。ですので本当は立ち入るべき所では無いのですが、チャレンジ精神が旺盛な人は立ち入ってしまう事が有るのです。

 ただ、登山道以外の場所に入ってしまう時は、道が整備されていない訳なので危険が伴います。ですので、それなりのスキルを持った方が安全面に配慮しながら行動する事が大事なのです。


「こんなに素晴らしい写真を撮って貰えて、私は心底嬉しいよ。これは思い出に残る写真に成るだろう。撮ってくれて有難う沢井。それでは長い事より道をしてしまったが、そろそろ先を進むとしようか。次なる中継地の鍵掛峠に向けて、再出発しようではないか!」


「そうですね、ここで撮られた写真は思い出に残ると思いますよ。それでは皆さん、隊長に付いて鍵掛峠を目指して出発しましょう!」


〚はい、次なる中継地の鍵掛峠に向けて出発しましょう〜!〛


 切り立った岩山での岩場登りへの挑戦を終え、思い出に残る写真を撮って貰い上機嫌な隊長と隼人から出発の合図が掛かる。そして、大きな掛け声を上げて中継地の鍵掛峠に向けて歩き出した山楽部御一行。ここから暫くの間、再び岩場の稜線歩きが続くので、皆んなは緊張感を持続しながら慎重に歩んで行く。

 そして、アップダウンが連続する岩場の登り降りを繰り返しながら、少しずつ標高を下げて行く御一行の行く手が開けて来て、何やら分岐看板が見えて来た。どうやら、鍵掛峠に到着した様である。


「さあ、鍵掛峠に到着したよ。ここから分岐点を南に降りて行けば、朝に出発した癒しの里へと辿り着く様になる。展望を眺めながらの稜線歩きはこれで終わり、これより林間の中を下山して行く様に成る。稜線から降りて行くと、暫くの間は急な斜面の登山道が続くから、この先も慎重に降りて行って欲しいと思う」


「山頂から、ここまで続く稜線の登山道は展望が良い場所が多かったですから、名残惜しい感じがしますね。でも、これから本格的に山を降りて登山口に戻れるって言う事だから、もうひと踏ん張り頑張りましょう!」


「ここまでの稜線の登山道は、岩場の登り降りが続いて大変なところもあったけど、展望を眺めながら歩けた事が本当に良かったわ。ここから下は林間を歩いて行く事に成るけど、森林浴が出来ると思って楽しく降りて行きましょうね」


「稜線を降りて来て大変な時もあったけど、凄く達成感が有って充実した気分に成れましたの。これでまた、わたくし達はスキルアップがはかれたと思いますわ。あとはゴールの登山口を目指して、ひたすら登山道を降りて行くのみですわ!」


「女性陣の皆さん、この大変だった稜線歩きを終えて逞しくなった感じがしますよ。個々のスキルが上がって来ていて、険しい登山道でも難なく熟して行ける様に成って来ていると言う事ですね。

 では、これより林間の登山道に入って行きますが、隊長からの話だと急斜面の登山道が続く様ですので、この後も気を抜く事無く、慎重に下山をして行きましょう!」


〚はい! 気を抜かづに慎重に下山を開始します!!〛


 この後に続く急な登山道を慎重に降りて行く様にと、先生と隼人から諭された女子達は、お互いに顔を見合わせながら頷いた後、大きな掛け声を上げる。その掛け声と共に鍵掛峠を後にしてして、ゴール地点の登山口へと向けて登山道を降りて行く山楽部御一行。

 そして、稜線から降りて直ぐの急斜面の登山道を克服して行く事に、神経を集中する御一行達。ここから先も、一時も気を抜く事無く安全に登山道を進め! 清流学園山楽部~!!







































































































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