第36話 LOVEフェスタ、始まる!!

 沼津キララドーム。沼津駅北口を降りて徒歩2分の所に有る、様々なイベントが開催出来る無柱空間の大ホールである。そのイベントホールで、コスプレ界最大のイベントと目される[LOVEフェスタ]の東海大会が開催されるのである。

 その東海大会には、地区予選の県大会を勝ち抜いた精鋭コスプレイヤー12名が出場をするのだ。穂乃花は有名コスプレイヤーの肩書通りの活躍ぶりで難なく静岡県大会を通過して居たのである。

 参加するコスプレイヤーは開会式で、まづは顔合わせのコスプレ姿を観客の前で披露し合い、その後に各個人のブースに分かれてコスプレ撮影会に臨む事に成る。


 そして撮影会を終えた後は、いよいよメインイベントであるコスプレライブを開催して観客に披露するのである。そのライブ後には観客による投票が行われ1位の得票を得た人が[LOVEキング]の称号を手に入れ、東京で行われる全国大会に駒を進める事が出来るのだ。

 その全国大会に進むコスプレイヤーを決めるべく、またLOVEキングの称号を手にしたコスプレイヤーを見届ける為、多くのコスプレファンが沼津キララドームに集結して開会式前から熱気が立ち込めて居たのであった。

 その熱気ムンムンのドーム内の中で1人、明らかに怪しい出で立ちの怪しそうな背の高い男が居た。その男はハット帽子を被り、コートを身にまとい、顔には黒縁メガネとマスクを付けて、一見すると変なオジサンに見えてしまうほどである。


「おいおい、初めてこの様なオタクのイベントに来てみたが、観客たちが一人一人カメラを持ちながら多数集結して凄い熱気に成ってるぞ。これがコスプレイベントと言うモノなのだな。だが、肝心のコスプレイヤー達は何処に行ったのだ。我が部のコスプレイヤー[穂ノン]は一体、何処に雲隠れして居るんだ!」


 一人、会場内で怪しい格好をして、ある意味目立ってしまって居る男。如何やら、初めてのコスプレイベント観戦の様である。んんん? 先ほど、我が部のコスプレイヤー[穂ノン]と言ってましたね。

 我が部、我が部? と言う事は部活の顧問だと言う事なのか。その、部活の顧問の先生が何故ここの場へ来たのだろう。


「ふう~女子達には内緒で、星野さんを捕まえて情報を得てから気に成って仕方が無かったんだよな。まさか教え子が、コスプレイベントに参加をするとは思ってもみなかったよ。

 星野さんには、私は見には行かないから応援を頑張って来なさいとは言ったが、やはり気に成って来てしまったよ。大丈夫だ、完璧な変装をして来たから山楽部の皆んなには、まづ気づかれる事は無いだろう」


 穂ノンのブースから少し遠ざかった建物の柱の陰に隠れるようにして、様子を伺って居た人物。その人は、何を隠そう山楽部の顧問である山岸先生だったのだ。

 如何やら女子達には内緒で、隼人から隠密に情報を仕入れて居たのだ。余ほど気に成ったのだろうか、メンバー達には気づかれまいと怪しい変装をしてまで、会場に訪れて居たのである。


「とにかく、私の変装は完璧だ。これならメンバー達がみても分からないだろう。だが、余り近寄るのは禁物だな。やはり、この離れた位置から見守るのが良いだろう」


 先生は、自分が教師で有りながら教え子の姿を見たいばかりに、コスプレイベントの会場入りした事に後ろめたい気持ちで居る様である。ゆえに、メンバー達に気づかれない様にする為に変装をして駆けつけて来た様なのだ。

 だが、このコスプレイベントの華やかな雰囲気の会場の中で、ただ一人怪しい格好をしてる大柄な男子が佇んで居るのは、逆に目立ってしまって居るのだ。それに普段、学園で多くの時間を接して居るメンバー達なら、おそらく気づいてしまうのではと思うのだが。

 そんな自分の本当の姿を見破られてしまうのでは? と言う危機感は、今のところは先生には無い様である。果たして、この後は如何なって行くか今後の動向を見守って行きましょう。


 そして、場面は代わりキララドームの入り口前のエントランスに目を向けてみよう。そこには、何やら3人の男が頭に長い鉢巻を縛り、特攻服を着て集まり、話をして居るグループが有ったのだ。

 その特攻服には、胸と肩には[穂ノン親衛隊」、背中にはドでかく[穂ノン命]と刺繍が施されている。1人はリーダー格なのであろうか、えんじ色の特攻服で、残る2人のメンバー達は黒色と紺色の特攻服を、それぞれ身にまとって居たのである。


 ※特攻服とは、もともと1970年代に暴走族やヤンキー達が着用していた長ランの服である。1980年代に入るとアイドルの熱烈なファンである親衛隊と呼ばれる人達が着用する様にもなったのだ。現在でもアイドルのライブでは熱烈的なファンが特攻服を着用して、応援を行って居る姿が見受けられるのである。


「お~し、皆んな集合したな。今日はとうとうLOVEフェスタ東海大会の日が来た。俺達が穂ノンを熱烈応援する為に親衛隊を結成して早1年。とうとう我らが穂ノンが全国大会に出場を決めるかどうかの大事な日を迎えている。

 その我らが穂ノンをこの東海大会で1位の座に押しやる為には、俺達が合いの手を入れて他の観客と一丸と成って応援をして行く事に尽きるんだ。良いな、宝田、中野!」

 穂ノン親衛隊の隊長を務める、エンジの特攻服を身にまとった長身の男、後藤隊長。


「了解しました、隊長! 私は穂ノン親衛隊として穂ノンを追いかけ、今まで声援を送って来ました。その我々の声援の成果が実を結び、この東海大会へと駒を勧める事が出来たんだと思います。今日は最大限のエールを送って、穂ノンを更なる高みへと押し上げて上げましょう!」

 黒の特攻服の前ポケットに[穂ノンlove]の手製刺繍が目を惹く、穂ノン親衛隊1号隊員、宝田。


「ぼくは、う、う、嬉しいっす! あの可愛らしい穂ノンが、我らが穂ノンがこんな、ひのき舞台に立てれる日が来るなんて。何としても僕らの応援で全国大会へと誘ってやるんですよ。もう僕は、穂ノンがLOVEキングの称号を手に入れた瞬間が目に浮かん来て、目が潤んで来てます~」

 襟者に[穂ノンは天使だ!]の刺繍を施した紺の特攻服に身を包んだ、泣き上戸の穂ノン親衛隊2号隊員、中野。


「おいおい、中野よ! 何でもう泣きそうな顔に成っているんだ。今日は未だ、俺達は穂ノンに何もして上げて無いんだぞ。その涙は、穂ノンが結果発表で一番を取った時の為に取っておくんだ。

 良いか、よく聞け! 穂ノン親衛隊の諸君。これから各ブースにて熾烈な応援合戦が始まる事に成る。だが俺達、親衛隊の力をフルに出し切って応援すれば穂ノンのブースが際立って目立つ事に成る。そうすれば、他のブースに居た観客達も穂ノンの応援に加わってくれる事だろう。

 だから今日は、全身全霊をかけて応援をして行こうではないか。よし! では決戦の地、キララドームに今から入場をするぞ。付いて来い、宝田、中野!」


「はい、後藤隊長! 必ずや穂ノンを1位の座に押し上げLOVEキングの称号を手に入れられる様に、気合を入れて応援に臨みましょう」


「穂ノンがナンバー1の座を手に入れる様に、皆んなで一致団結して渾身の力を込めて応援して行きしょう。では、いざ出陣! ですね!!」


 3人の親衛隊員は、穂乃花をLOVEフェスタで1位の座に押し上げる為に気合を入れて誓いの言葉を述べると、闘志を漲らせながら入場口をくぐりキララドームの中へと入場して行くのであった。





 そして、隼人と岸本の姿を追ってみましょう。2人は何処に居るのかと言うと、穂ノンのブースの前に居るのかと思いきや、メインステージ前の最前列の付近で立って居たのであった。

 如何やら2人は大会プログラムを事前にチャックしていた様で、まづは開会式の時にコスプレイヤー達が最初のコスプレ姿を披露する事の情報を掴み、早々とメインステージ前を陣取って居たのだ。


「おいおい、観客達が段々と増えて来てるよ。俺達は、早々にステージ前に来て居て良かったな、隼人!」


「最初は各ブースに分かれて登場するのかと思ってましたからね。プログラムを見ておいて良かったですよ。ステージ中央で最高の観覧位置を陣取る事が出来ましたね」


 事前にプログラムチエックを怠らなかった為、開会式を前に最高の観覧ポジションをキープする事が出来て胸が高鳴る2人。と、そこへ何やら3人の男の影が隼人と岸本の背後に近づい来た。

 そう、その3人とは特攻服を身にまとった親衛隊であったのだ。その何やら怪しい服装の男達の接近に気づいた隼人と岸本は、そ~と後ろに顔を向けるのだった。


「まづったな~俺達、親衛隊ともあろう者が2列目の位置に甘んじるなんて、何たる失態を犯してしまったんだ!」

「後藤隊長! 先ほどのエントランスでの前置きの話が長かったせいで出遅れてしまったのですよ」


「そうですよ、前置きの話は無しにして早々に入場して観覧ポジションのキープに向かえば良かったのでは!」


「何を言うんだ、宝田、中野! 入場前に気持ちを鼓舞する儀式が必要じゃないか。その儀式が有るからこそ穂ノンを応援するパワーの源と成るんだ。2列目の席でも臆する事無く、胸を張って全力の応援をして行けば良い!」


「そ、そうですね、流石は隊長であられるだけに微動だにしませんね。分かりました、わたし達はこの2列目の席でも胸を張って応援に臨みますよ!」


「すいません隊長! 先ほどの失言失礼しました。僕達、隊員を鼓舞する為に注ぎ込んでくれたお言葉、有難うございました。この2列目ポジションから気持ちの籠った応援を穂ノンに届ける様にしましょう」


 隼人と岸本の目線の先には[穂ノン命 ]と刺繍された特攻服を身にまとって話し合う3人の男達が居て、その派手な姿を見た2人は固まってしまうのだった。


(うわ〜何だか、ヤバそうな人達が後ろに来てしまったな。こんな不良達が着る様な奇抜な服で来るなんて、何だか怖いよ。それに、穂ノン命と刺繍がされてるなんて、如月さんのファンの人達と言う事なのかな?)


(おいおい、この男達が着て居る服は暴走族や不良達が着用する特攻服と言うんじゃないかな。何でそんな怖そうな人達がここに来てるんだ。穂ノン命と刺繍されてるからにはファンなんだな。こんな感じの人達に付きまとわれたら、如月穂乃花が可愛いそうだよ!)


[穂ノン命 ]と刺繍された特攻服で応援に来て居る男達の姿にビビる隼人と岸本。どうやら2人は派手な特攻服を着てるからには、ガラの悪い暴走族や不良の人達だと思って居る様である。だが、この3人組は実際のところは、その様な人達では無く普通の一般人であるのだ。

 彼らは穂ノンの熱烈なファンで有るが為に、その自分達の熱心な気持ちを形にして表らわそうとして、派手に目立つ特攻服でアピールしてるのだ。


 この派手な特攻服の3人組に今は不安を抱えて居る隼人と岸本だが、同じ穂乃花を応援するファンとして後に打ち解けて行く事に成って行くのである。そして、特攻服の3人組にビビりながらも隼人と岸本がメインステージの前で待つ事20分。

 いつの間にかステージの前には沢山の観客達が集まって来て、すし詰め状態に成り今か今かと待ち侘びる人達でごった返して来たのだ。その観客達の熱気が最高潮に達して来た、その時!

 何やら会場中に賑やかな音楽が流され始めた後、キャビンアテンダントのコスプレ衣装を身にまとった女性がステージ上に出て来た。如何やら開会を告げる為に現れた司会者の様で、ステージ中央の所に来ると大きな声で話し出した!


「さあ、お集まりの皆さん、司会者のミポリンだっよー! 今年もやって来ましたLOVEフェスタ東海大会。各県予選を勝ち抜いた12人のコスプレイヤー達が、ここ沼津キララドームに集結しました。

 この沼津の地で誰がトップの座、LOVEキングの称号を射止めるのかは、ここに居る観客の皆さんの投票によって決まります。そこに居る、貴方、貴方、貴方の力でコスプレイヤー達を頂点へと押し上げる事が出来るのです! 

 一体、誰がこの激選を勝ち抜き、LOVEキングの称号を手に入れ全国大会へと駒を進めるのか楽しみな所で有ります。では、いよいよLOVEフェスタが始まるよ~! 皆んな、準備は良いかな~気合は入ってるかな~?」


 赤い丸メガネを掛けたコスプレ姿の司会者は壇上に登場するや否や、ハイテンションの喋りで観客達を指さしながら問い掛ける!

〚準備はオッケー! 気合入ってるよー!〛


「おいおい、声が小さいぞー! もっと大きな声で叫ばないとLOVEフェスタが始まらないぞーー!!」

 イマイチ、声の小さい観客に痺れを切らした司会者は、自身の耳に手を当てて聞こえませんポーズを決め込む!


〚準備はオッケーー!! 気合は入りまくりーーー!!!〛

 2度目の観客の声出しが、十分に大きい事に「うんうん」と頷く司会者。


「よーし! 大きな声で宜しい。皆んなの意気込みを受け取った所で開会を宣言するよ。では~LOVEフェスタの始まりだい! 壇上に出でよ、12人の精鋭コスプレイヤー達よ!!」


⦅パン! パパン!! パパパパ、パパン!!!⦆


 司会者の大きな掛け声と共に、巨大なクラッカーが打ち放されて、頭上からは花吹雪が舞い、遂にLOVEフェスタ開催の幕が上がった。その派手な演出と同時に壇上の幕が上がって行く。その幕の後ろには出場するコスプレイヤー達がズラリと一列に並び、ポーズを決め込んで控えて居たのだ。


「いよいよ、壇上に姿を現した12人のコスプレイヤー達。どのコスプレイヤーも、とっても素敵で可愛らしい着こなしで光り輝いて居るね! では出場者の紹介から行くよ。

 まづは三重県代表のサクラ、もりりん、クルミンの3人だ! 3人共、何と! 東海大会初出場なんだ。3人共、ステージの前に出て来て、アピールを頼むよ~!」


 司会者は壇上に現れた参加コスプレイヤー達を大きな声で褒め称えると、各県ごとの代表コスプレイヤーの紹介に移り、まづは三重県代表からの紹介が成されて行く。

 続いて、愛知県代表、岐阜県代表と紹介が成されて行く度に観客からは歓声が上がり、お目当てのコスプレヤーの姿を写真に収めるべく、あちらこちらでフラッシュがたかれているのである。


「それにしても、もの凄い歓声とフラッシュの嵐だな。皆んな、お目当てのコスプレヤーを写真に収める為に必死ですね!」


「そうだな、初っぱなから、こんなにも激しい撮影合戦が繰り広げられるとは思って無かったよ。今は岐阜県代表が登場してるから次は静岡県代表の紹介に移るよ。いよいよ、穂ノンの出番が来るからデジカメを用意して待ち構えなきゃな!」


「うん、僕もデジカメを出して穂ノンの登場に備えるよ。あっ! 今、岐阜県代表がステージ中央から退いたよ。もう次期、静岡県の代表が登場するよ」


 残るコスプレヤーの紹介は、静岡県代表のみと成り、我が清流学園コスプレ部の星、如月穂乃花の登場をデジカメを持ちながら今か今かと待ち侘びる隼人と岸本。


「さあ最後は、いよいよ開催地である静岡県の代表が登場するよ! 観客の皆んな、写真撮影の準備は万端かな? では、静岡県代表の、ルミ、穂ノン、桃子の3人に登場して貰いましょう〜!」


 司会者の合図と共にステージの前に出て来る静岡県代表の3人。我らが穂ノンは3人の代表が並ぶ中で中央の位置に立ち、壇上からポーズを決め込みながら観客にカメラ目線を送る。

 すると、一斉にフラッシュがたかれて撮影が始まると同時に観客から歓声が上がる。その中でも穂ノンに寄せられる声援が多いい中で、あの特攻服の3人が一番大きな声で声援を上げた。


「穂ノン、今日の君は最高に可愛いぞ! 地上に舞い降りた天使だーー!!」

「こっちにカメラ目線頼むよ、穂ノン! 良いよ~超絶可愛いいよ~!!」


「今日は、魔法少女コメットさんのコスプレ姿なんだね! そのフリルスカートが素敵、素敵だよ。俺達にコメットさんの魔法をかけて~穂ノン!!」


(後ろの特攻服姿の穂ノンファンは、熱狂的な応援を始めやがったな。そうか、この位の威勢の良さがなきゃ穂ノンのファンとは言えないんだな)


(凄いぞ凄いぞ、後ろの特攻服のファン達。穂ノンを褒めちぎる言葉を送りながらノリノリに成ってるぞ。よーし、僕もいっちょ穂ノンに魔法をかけて貰おう~と!)


「穂ノン! 僕に僕にコメットさんの魔法をかけてー!!」

(何なんだよ、隼人! 俺を差し押さえて、穂ノンに声援を送りやがって。俺も負けづに魔法をかけてもらうぞ!)


「俺に俺に俺に! コメットさんの魔法をかけてくれ、穂ノーーン!!」


 親衛隊の熱狂的な声援に刺激を受けた隼人と岸本は、親衛隊に負けまいとばかりに、魔法をかけてくれ! と穂ノンに雄たけびを上げた。その様子を壇上から見ていた穂ノンは、すかさずリアクションを起こした!


「それじゃあ、貴方達に魔法をかけるわよ~くるりん、くるりん、くるくるりん、マジカルコメットーー!!」

 穂ノンは魔法のステッキを、くるくる回しながら観客に向けて呪文を唱えると、


〚うわ~コメットさんの魔法で、くるくる回る、回るよ、回る~~〛

 と、その場で身体を回転しながら、コメットさんの魔法を受けた表現をする観客達。


(そうか、コメットさんの魔法を受けたら、くるくると身体を回転させるんだな。遅れたが、やってみよう!)

(これが、コメットさん魔法を受けた時のお約束の動作なんだな。俺達も回って回って、魔法を受けたリアクションをするんだ)


 周りの観客達のリアクションに刺激を受けた隼人と岸本は、同じ様に身体を回転させた!


「コメットさんの魔法で、回るよ、回る、くるくる回る~! おっと目が回る~」

「あららら~魔法の力で僕の身体が、回る回る、くるくるりん! 目が目が回るよ~お~とっとととと!」


 隼人と岸本は他の観客達に負けじと、くるくる身体を回転させて行くが、回転し過ぎて遂にはよろけて倒れ込んでしまうのだった。その倒れ込んでしまった2人を目にした穂ノンは口を開いた。


「あら~魔法が効いて倒れる人が出たわ。コメットさん魔法の効果は抜群だわね~! イエ~~イ!!」

 壇上の穂ノンは、自分のかけた魔法? によって倒れこんでしまった隼人と岸本の姿に、ご満悦の表情を見せて喜んで居るのであった。


「は〜い! 流石は静岡県大会を1位通過した穂ノンさんですね。登場するや否や観客を虜にしてしまい、魔法をかけられて転倒する人まで出てますね。穂ノンマジックが炸裂したと言う事でしょうか!

 では観客の皆様、これで参加コスプレヤー達の紹介は終わりました。壇上の可憐な彼女達に盛大な拍手を送ってください〜!!」


⦅パチパチ、パチパチパチ! パチパチパチパチパチパチ!!⦆

 司会者のミポリンから声が掛けられて、観客達から壇上のコスプレヤー達に盛大な拍手が送られるのであった。


「観客の皆んな、盛大な拍手を有難う〜! コスプレヤー達もご満悦の様だね。この後は、各ブースに別れて30分後からコスプレ撮影が始まるよ。皆んな、お目当てのコスプレヤーのブースへと駆け付けてね。さあ、これで開会式を終わりにするよ。じゃあ、また後で会おうね〜!!」


 司会者から開会式終了の言葉が述べらて、賑やかな開会式セレモニーは幕を閉じる。そしてコスプレヤー達はステージ上から退去して、次なる決戦地である各ブースへと散開して行く。そのコスプレヤー達の後を追う様にして、観客達も大挙して移動して行くのであった!





「おいおい、それにしても華やかで賑やかな開会式だったよ。コスプレヤー達が壇上に登場してからの会場の熱気が凄かったな。

 我が山楽部の星、如月のコスプレ姿は際立って可愛らしかったし、何より1番声援が送られて居て撮影のフラッシュが凄かったぞ。これは、この後のブースでのコスプレ披露とライブが楽しみに成って来たな!」


 変装しながら、こっそりと開会式を最後尾の方で観戦して居た先生は、開会式での熱気とコスプレヤー達の華やかな姿に圧倒されて居たのだ。


「よし、今度は如月のブースに移動しなければ。……おっ! 不味い不味い、大挙して観客達がこちらに向かって移動して来たぞ。あの中には星野も居るハズだ。近くで見られたら、私だとバレてしまうやも知れない。とりあえず入り口の方の柱の影に隠れて居なければ!」


 観客達が大挙して移動して来るのを見た先生は、自分が会場入りして居る事を隼人に悟られまいと、慌てて入り口付近まで退くのだった。教師が教え子に悟られない様にして、この様なイベント会場に居るのも大変なのである。


 そして、開会式から30分後。大勢の観客達はお目当てのコスプレイヤーのブースに分かれて、今か今かと撮影会の開始を待ちわびて居るのであった。その中でも穂ノンのブースは際立って多くの観客達が集まって居たのである。

 押せや押せやの観客の人混みの中で、隼人と岸本は前から2番目の列に並んで居たのだが、周りの観客の熱気に押しつぶされそうに成りながらも今か今かと穂ノンの登場を待って居た、その時! 背後から声を掛ける人物が現れる。


「おい、君達! 開会式でも俺達の前に居たではないか。偶然にも、また君達の後ろに来てしまったよ。ところで、君達も穂ノンのファンなのかい? 先ほどの、コメットさんの魔法を受けた時の君達のリアクションは素晴らしかったぞ。俺達、親衛隊も見習いたい位だったよ!」


 2人が振り向いた先には、先ほどの開会式でも自分達の後ろに居た特攻服を着た穂ノン親衛隊が居たのだ。またまた現れた3人組に驚く隼人と岸本。


「あっ! 開会式で熱烈な応援をしてた方達ですね。僕達がやって居た魔法を受けた時のリアクションを褒めて頂き有難うございます。勿論、僕らは穂ノンのファンなんですよ。と言うよりも良く知ってる方なんですけどね。」


「これはこれは、先ほど気合の入った応援をして居た方達ですね。俺達の事を褒めてくれるなんて光栄ですよ。穂ノンは俺達の身近に居る女子なんです。だから、今日は応援に駆け付けたんだよな、隼人!」


「何いー! 穂ノンを良く知ってるだと。そ、それはどうゆう事なんだ。君達は、我らが穂ノンとどの様な関係なのだ! クラスの仲間、ただの友達、それともそれ以上の関係? 俺達、親衛隊には知る権利が有るんだ、教えてくれないか!」


「何々、君達が穂ノンと、どうゆう関係なのか気に成るな。わたしにも教えてくれたまえ!」

「う、うえ~ん、もし君達が穂ノンと良い関係だったとしたら、ぼくは悲しく成るよ。本当のところ如何なのか教えてくれ~」


 隼人と岸本の[穂ノンを良く知っていて、身近に居る女子なんです]発言に、目の色を変えて隼人と岸本に詰め寄って来る親衛隊の3人組。その威圧感を受けて驚く2人だったが、にこやかな顔を見せながら口を開いた。


「いやいや教えますから、そんなに怖い顔をしないでください。僕達は穂ノンと同じ高校に通ってる同級生でして、顔見知りの子なんですよ」


「そうそう、俺達が通う高校の同級生なんです。今日は穂ノンがコスプレイベントに参加すると言う事で、応援に駆け付けた次第なんです」


「そうか! 君達は穂ノンと同じ高校に通う同級生なのか。我らが穂ノンと一緒に同じ屋根の下で勉学に励めるなんて、羨まし過ぎるよ~」


「そ、そうなのか! やっぱり穂ノンと顔見知りと言う事なのか。何て羨ましい!」

「やっぱり、同じ学校に通う知り合いだったのか。う、羨ましくて涙が出るよ~シクシク、、」


 この隼人と岸本の[穂ノンとは同級生で顔見知り]発言に、血相を変えて羨ましがる3人組。その中でも、泣き上戸の中野隊員は羨まし過ぎて半べそをかいて居る様である。


「そ、そんなに驚かないでください。ただの高校に通う同級生と言うだけですので」

「そうですよ、僕達は穂ノンとそんなに親密な関係ではない訳で、同じ学年の友達を応援に来ただけですから」


「おお、そうなのか! 高校に通うだけの同級生と言うだけなんだな。我らが穂ノンは俺達ファンの中では天使の様な存在なのだから、これで一安心したよ。……ところで君達。穂ノンを応援する者同士、この後のコスプレライブで一緒に合いの手を入れて応援をしないかい? 出来れば人数が多い方が良いのだが」


 穂ノンとはただの友達と言う事を聞いた親衛隊の3人はホッと一息入れて一安心して居るのであった。すると親衛隊の隊長である後藤から、ライブの時に一緒に合いの手を入れて応援しよう! と2人に声が掛けられた。

 突然の申し出に暫くの間、お互いに顔を見合わせる隼人と岸本だったが、ニッコリと笑顔を見せながら話し出した。


「お誘い有難うございます。ん〜と、如何しましょうか。僕としては同じ穂ノンのファンとして、共同で応援するのも良いと思うのですが。和也は、如何思ってるのかな?」


「そうだな、俺の考えも隼人と同じく一緒に応援すると言う事で良いかな。応援するには、大人数の方が盛り上がるからね。そちらの話しに俺達は乗りますよ!」


「おお〜そうかい、心良い承諾を有難う! ライブが始まったら俺達が合いの手を入れるから、君達は我が親衛隊の身振り手振り、掛け声を見よう見まねで良いから真似しながら一緒に行って欲しいんだよ!」


「歓迎するよ、お二人さん。そうそう、隊長の言う通りに動いて掛け声を上げてれば良いんだよ。こんなふうにね、フレーフレー穂ノン! ってサイリュウムを振りながら言うんだよ」


「君達が一緒に応援してくれる何て、嬉しいよ。ぼくは、隊長から合いの手を教わったんだ。君達も隊長を見習えばすぐ出来るように成るよ。一緒にサイリュウムを、こんな感じで振りながら合いの手を入れて、穂ノンを応援しような~」


 隼人と岸本の快い承諾の返事を聞いた親衛隊の3人組は、満面の笑みを浮かべて歓迎の言葉を述べると、サイリュウムを振って見せながら合いの手の入れ方を実演するのだった。


「ふうーん、そんな感じでサイリュウムを突き上げる様にして振るんだね。教えてくれて有難う。……だけど一つ問題が有るな。俺達は2人共、サイリュウムを持ってないんだよ」


「そうだね、僕達はライブ応援は初めてだからサイリュウムと言う物を準備してなかったよ。持ってないから、手だけ突き上げて振る様にするしかないかな~」


 隼人と岸本は初めてのライブ参加の為、サイリュウムと言う応援グッズの用意が出来てなかったのだ。その事を聞いた親衛隊隊長の後藤が、すかさづ口を開いた。


「そうか、サイリュウムを持ってなかったんだね。大丈夫だよ、俺達は何本もサイリュウムを持ってるから貸そうじゃないか。宝田、中野! お前たちの持ってる物を、お二人さんに貸して上げるんだ」


「はい、分かりました後藤隊長! 私のサイリュウムを貸す様してやります。一本、受け取ってくれたまえ」

「うん、ぼくのサイリュウムも使って欲しいな。はい、ぼくのはメガネを掛けた君がつかってください!」


 後藤隊長から指示を受けた親衛隊員の宝田と中野は、自身の持っているサイリュウムを隼人と岸本に快く手渡すのだった。その好意を受け取った2人はニッコリと笑顔を見せた後、口を開いた。


「みづ知らづの僕達に大事なサイリュウムを貸してくれるなんて嬉しいです。有難うございます!」

「貴方達の好意に感謝します。貸して貰ったサイリュウムを使って、一生懸命に穂ノンの応援をしますよ!」


「はははは! 良いんだ良いんだよ。穂ノンを応援する同じファンじゃないか。穂ノンのファンには悪い奴は居ないからな。この後のライブでは共同戦線を張って応援して盛り上げて行こうな!」


「はい、宜しくお願いします! 我らが穂ノンのライブを盛り上げて行きましょう~」

「俺達の穂ノンをトップに立たせる為に、皆んなで全力で応援して行きましょう!」


 親衛隊隊長の後藤は、これから開催される穂ノンのライブに向けて共同戦線を一緒に張る、隼人と岸本に手を伸ばし握手を求める。2人もそれに答えて握手をガッチリと交わすのだった。

 親衛隊と隼人と岸本の間で、その場に居合わせたファン同士の絆が築かれた瞬間で有ったのだ。その一致団結した空気が流れて居た時だった。館内のスピーカーから女性の声が流れて来た!





〘は~い! ミポリンだよ~さあ、これから各ブースにてコスプレ撮影会を行います。撮影会の後は、いよいよコスプレライブが始まるよ。

 このライブ後に行われる会場の観客一人一人の投票によって、LOVEキングの称号を手に入れるコスプレイヤーが決まりるから、清き1票を宜しくお願いね。それじゃあ会場の皆んな! LOVEフェスタ、始まるよ~~!!〙


 司会者のミポリンから、LOVEフェスタ開始! のアナウンスが流れると同時に各ブースから音楽が流れだして、控室に待機して居たコスプレイヤーが姿を現したのである。会場内からは割れんばかりの拍手と声援が彼女たちに送られる。

 その拍手と声援の中で、ツインテールの髪型でクリーム色のセーラー服を身にまとった穂ノンが登場して来たのだ。その可愛らしいセーラー服姿の穂ノンを目の当たりにした観客達は、一斉に大きな声を上げた!


〚うおー! ハートキャッチいるみちゃん! の、花月いるみの登場だーー!!〛


 観客達の目の前に現れた穂ノンは、変身ヒロインの戦闘美少女アニメ[ハートキャッチいるみちゃん!]の主人公、花月いるみのセーラー服姿で登場したのであった。


「おおー! 穂ノンが、花月いるみのセーラー服姿での登場だぞ。この長い髪のツインテール姿が堪らなく可愛いよ〜」


「開会式での魔法少女コメットさんの姿で現れると思って居たが、ファンを楽しませる為に衣装を変えて現れたぞ。流石は穂ノン、ファンサービスを心得てるよな!」


「ぼくは、戦闘モードの変身姿が見たかったんだな。でも、このツインテールでの制服姿がとっても可愛いんだ。胸の赤い大きなリボンがポイント高いんだよな~」


「よし! 早速、穂ノンの雄姿をデジカメで撮影するんだ。皆んなで、様々なアングルから穂ノンの姿を追って行くんだぞ!」


 隊長から隊員達に撮影の声が掛かり、一斉にデジカメを持って穂ノンの写真撮影に入って行く穂ノン親衛隊。その周りでも沢山の穂ノンのファン達が一斉に写真撮影を開始して、穂ノンのブースは騒然と成って行く。


「俺達も親衛隊の皆んなに負けない位の、穂ノンのコスプレ姿をカメラに収めようぜ、隼人!」

「うん、僕達が撮った写真が一番と思われる様な、良い写真をカメラに収めて行きましょう~」


 この観客の輪の中に居た隼人と岸本も、周りのファン達の熱気に刺激された様で、自身のデジカメで撮影に入って行くのだった。そして、何十人もの観客達からの写真撮影に答えようと様々なポーズを決め込んで行く穂ノン。そのポーズを決め込むたびに、観客達から大きな歓声が上がる。


「穂ノン! 可愛いよ可愛いよ! 君のその笑顔、最高だよー!!」

「その背中を向けた状態で、こちらにカメラ目線を送るポーズが最高に良いよ~」


「君の着こなしは素晴らしいよ! まるでアニメの世界から飛び出して来た様だ」


 観客達に笑顔を振りまきながら、声援に答えて行く穂ノン。おそらく会場中の各コスプレイヤーのブースの中で、一番の観客の多さと歓声が上がっているのである。その撮影会が20分ほど過ぎた時であろうか再び館内放送が掛けられて、司会者のミポリンの声が響き渡った。


〘はーい! 皆んな、盛り上がってるね。お目当てのコスプレイヤーの素敵な写真が撮れたかな? さあ一旦、撮影会を終わりにして、コスプレイヤーの方達には本日のメインイベントであるコスプレライブの準備に入る為、ここで一旦、休憩を取らさせて貰います。

 ライブは20分後に開始されるから、観客の皆さん、固唾を飲みながら待って居てくださいね~!〙


 司会者から撮影会の終了とコスプレライブへの準備の為、休憩に入る事が観客に告げられる。そしてコスプレイヤー達は一旦、控室の方へと戻って行くのだった。参加12名のコスプレイヤー達の頂点を決める大事なメインイベント、コスプレライブに向けて、異様な熱気に包まれて行く会場内。

 その中で一人、穂ノンのブースから遠ざかり建物の柱の影から様子を伺って居た、怪しい変装をした山岸先生は如何して居たのか? その先生の姿は観客の並びの最後尾では有るが応援する観客の輪の中に有ったのである。


「う~ん、離れた柱の陰で見て居たのだが、如月の完成度の高いコスプレ姿を目の当りにしたら近くで見たくなり、いつの間にか観客の輪の中に入って来てしまってたよ。

 この完成された変装なら、我が山楽部のメンバー達に私の存在を見破られる事はないだろう。よし! この後のコスプレライブも観客達の中に混じって応援をして行こうじゃないか!」


 離れた柱の陰に潜んで居た先生だったが、会場の熱気に飲み込まれてしまい居ても立っても居られなく成り、観客達の輪の中に入って応援をして居たのである。

 先生は隠密でイベントに足を運んでいたのだが、近くで見たいと言う気持ちを抑えきる事が出来なく成ってしまい、コスプレライブでも近くで応援をする事に決めた様である。


「この観客達の最後尾からだと中央に居ては人の頭が有って、どうしても前の方が見にくく成ってしまうな。……よし! 中央では無く、右端なら斜めから見えるから、前の人の頭があまり邪魔に成らないぞ。うん、この場所から見る事に決めて如月に声援を届ける様にしよう!」


 先生は、右端の方に立てば前に居る観客達の頭があまり邪魔に成る事が無く、観戦が出来るのを見つけた様である。実際のスタンディングライブでも、後ろの立ち位置に居る場合は中央よりも左右の端の位置に居た方が、ステージ上を見るに当たって斜めに目線が注ぐ事が出来て見易く成るのである。

 穂ノンのライブ応援に、山楽部の顧問で在る山岸先生も参戦する事に成り俄然、盛り上がりを見せて来た穂ノンブースであったのだ。





 そして、会場内がライブ開始を待ちわびる観客達の熱気で盛り上がりを見せて居た頃、穂ノンブースの控室では穂乃花が次なるライブに向けてコスプレ衣装の着替えを終えようとして居たのだ。


「あとは、この大きな赤いリボンを頭に着ければ完成よ。……うん! これで変身衣装の着替えが完了だわね」

「如月さんが着ると、本当にコスプレ衣装が映えるわね。私も惚れ惚れとしてしまうわ。花月いるみの戦闘モードの変身衣装が完成ね!」


「沢井さん、杉咲さん、着替えの手伝いを有難うございます。この衣装で、わたくしが単独ライブに臨みますわ。そして2回目のライブでは、わたくしと3人で行う様にう成りますの。今までの練習の成果を出して素晴らしいコスプレライブにしましょう~」


「宜しく頼むわ、如月さん! 観客の人達を私達のコスプレ姿で魅了して、歌とダンスで会場内を盛り上げて行きましょう」


「この3週間、練習出来る時間が限られてる中で一生懸命に練習して来たわ。今日は、その成果を出してライブを成功へと導いて行きましょうね!」


 3人は、3週間と言う期間の限られた時間を使って練習して来た事を思い出しながら、その成果を本番で発揮するべく自分を鼓舞する様にして声を上げるのだった。そして、このライブイベントの主役である穂乃花が、友香里と華菜の顔をニッコリと見つめながら口を開く。


「さあ、わたくしの出番が近づいて来ましたわ。まづはこの、花月いるみの戦闘モード衣装で[輝け! ハートキャッチいるみちゃん!]の楽曲を歌って踊って来ますの。

 わたくしの歌とダンスで会場中の観客達の視線を、この穂ノンブースへ向けて見せますわ。それじゃあライブが開始する前に、景気づけに3人で肩を組んで円陣を組みましょう!」


「分かったわ、穂乃花! 円陣を組んで掛け声を上げましょう」

「うん! このライブを成功させて行く為に、景気づけに円陣を組みましょう。さあ、肩を組んで華菜、穂乃花!」


 景気づけに肩を組んで円陣を組もう! と穂乃花から声が掛けられて、それに呼応した友香里と華菜が肩を組んで円陣を3人で組んで行く。


「さあ、円陣を組み終えましたわね。これから、わたくし達の練習の成果を出す時が来ましたの。まづは単独ライブを成功させる為にも皆さんの力を、わたくしにください。

 そして、2回目のライブでは3人の力を結集して最高のライブを観客達に披露しましょう。では、わたくしが音頭を取らさせて貰いますわ。行きますわよ~! 清流学園コスプレ部~~!! おおーー!!!」


〚おおーーう!!〛

 肩を組み円陣を組んだ3人は、大きな声で掛け声を上げるのであった!


「皆さんと、掛け声を上げて勇気ずけられましたわ。では、わたくし観客達の待つ壇上へと行ってきますの!」


「行ってらっしゃい、穂乃花! 貴女の活躍をここから見守って居るわね」

「貴女の魅力なら観客を魅了出来るわ! 穂乃花旋風を巻き起こしてらっしゃい!!」


「お言葉有難うございます。花月いるみ! 決戦の地へと参りますの!!」

 友香里と華菜に後押しされて気持ちが高ぶった穂乃花は、コスプレ衣装のキャラクター[花月いるみ]の名を高らかに名乗り、控室から壇上へと出て行く。


 そして、壇上へと出た途端、「わあああーー!!」「きゃああーー!!」「待ってたぞ穂ノン!!!」と、観客達から大きな歓声と掛け声が上がる。その、どよめく会場内に我らが穂ノンが観客の前に登場を果たす。

 遂に、コスプレライブの火ぶたが切って落とされたのだ。行け、穂ノン! 観客達の心を掴んで頂点を目指すんだ、穂ノン!!

 

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