第35話 発足? 清流学園コスプレ部!!

 初恋の相手、土岐田流星への人生初の告白を終えた穂乃花。だが、土岐田の返答は[付き合う事は出来ない]と言うものだった。野球部の部室裏での告白を終えて[失恋]をしてしまった穂乃花は涙を流しながらも、やっとの思いで自宅へと戻るのであった。

 自宅に戻ると直ぐに自室へと一目散に入りドアを閉めると、自分の机に向かい椅子に座ると、両手を机の上に置いて顔を埋めて声を上げて泣き出してしまう。


「えっ、えっ、え〜ん……グズ、グスン……涙が止まらないわ。うっ、うえ〜ん……」


 土岐田に想いを寄せて来た穂乃花は、失意のどん底に落とされてしまって居たのだ。そして、顔を埋めて20分位の時間が経った時であろうか、ようやく穂乃花は顔を上げたのであった。

 泣き尽くした顔には、滝の様に涙が流れた跡が残って目が真っ赤に成り、泣き過ぎたせいか鼻からは鼻水が垂れており、その顔には疲労の色が見えて居たのだ。


「グス、グスン! あっ、凄い鼻みづが垂れているわ。ちょっと待って、わたくしの顔が凄い事に成って居るじゃない~」


 やっとの思いで顔を上げた穂乃花は、机の上に置いてあった鏡に顔を向けた途端、泣き明かした自身の顔が凄い事に成って居るのに気づくのだった。


「嫌だわ~泣き過ぎて目が真っ赤な上に、鼻みづが垂れていて鼻ちょうちんに成ってしまっるじゃない。もう~これが、わたくしの顔なの? 凄く不細工な顔をしてるじゃない。

 もしかしたら、こんな変な顔だから土岐田さんにフラれたんじゃないのかしら。きっとそうよ、フラれた原因は、わたくしの顔が不細工だったからなのよ!」


 鏡を見て、泣き明かした自分の顔が不細工だったのが原因で、土岐田にフラれてしまったのでは? と自己嫌悪に陥ってしまう穂乃花。


〔だが穂乃花さん、どんな人でも泣き過ぎたら目は真っ赤に成るし、鼻みづだって垂れ流してしまい、普段よりも醜い顔に成ってしまうんです。普段の時の穂乃花は十分に可愛くてチャーミングな女子だから自信を持ってください。

 だから穂乃花がフラれたのは、土岐田が言っていた通り[野球に全てを打ち込んでいる間は誰とも付き合わない]と言う理由からだから、決して不細工だからと言う理由では無いので安心してくださいね、穂乃花〕←作者談


「こんなに不細工な顔のままで夕食に出向いたら、お父様とお母様に心配を掛けてしまいますの。流れ出ている涙と鼻水をしっかりと拭かなきゃダメですわ」


 穂乃花は自分の泣き崩れた顔を両親に見せまいと、ハンカチで涙を拭き取り、ティッシュで鼻水をかんで拭き取って行く。


「ふう〜ハンカチとティッシュで拭き取ったから、これで見られる顔に成ったかしら。うん、これで大丈夫ですの」


 鏡を見ながら涙と鼻水を拭き取り、見られる様に成った顔を確認した穂乃花は、ホッと一息入れて一安心して居るのであった。すると暫くして気が落ち着いて来た穂乃花は、ブツブツと呟き始めたのだ。


「あ〜あ、人生初の初恋は無惨にも散ってしまいましたの。勇気を出して告白したけど、当たって砕けろ! の言葉通りに成ってしまったわ。せめて土岐田さんにはプレゼントを貰って欲しかったのだけど、それさえも叶わなかったなんて。

 ……うん、もう気分を切り替えなきゃ。この失恋の痛手を解消するには、わたくしの趣味のコスプレに燃える事なのよ。そう、コスプレで皆んなからの注目を浴びて、わたくしが光り輝くのよ」


 見事に散った初恋の痛手から立ち直るには、自分の趣味のコスプレに燃えるしかない! と考えた穂乃花は、机の後ろの壁に張られて有るポスターをジッと見つめるのだった。


「今月は、今年のコスプレイベントの中でも最大のイベント[LOVEフェスタ]があるわ。しかも今年の東海大海は沼津のキララドームで開催されるのよ。それに、コスプレ参加者が各ブースに分かれてコスプレ撮影会を行い、極めつけはコスプレライブを行うわ。

 そのライブイベントで見学者から高得点を得られたブースは、フェスタ最大の名誉である[LOVEキング]の称号が与えられるのよ。その称号が貰えれば、東京ビックリメッセで開催される本大会に出場が出来るわ!」


 如何やら、コスプレ界の最大のイベント[LOVEフェスタ]の東海大会が沼津のキララドームで開催される様である。穂乃花は、そのコスプレ界のビックイベントに漲る闘志を燃やして、失恋のショックを払拭しようと考えて居るのだった。


「ん~とお、コスプレライブで勝ち抜く為には、強力な助っ人が必要に成るわ。開催要項にも[助っ人の参加も可能]と書かれて有りましたの。

 そうよ、わたくしが光り輝くには、助っ人のプラスαの力添えが必要ように成るのよ。そうすればLOVEキングの称号を手にする事が出来る様にも成るわ。それには、コスプレ姿が際立つ人が必要に成るわね」


 穂乃花は、コスプレライブを勝ち抜く為には強力な助っ人が必要であると考え、スッと椅子から立ち上がると2人の名前を口にしたのだ。


「……あっ! 身近にコスプレ姿が似合う人が居るじゃない。そう、沢井さんと杉咲さんと言う素敵な方が居るわ。そうよ、2人にコスプレイベントに参加出来ないか話を持ち掛けてみるのよ!」


 如何やら穂乃花は、助っ人にはコスプレ姿が似合う友香里と華菜が適任だと考えた様だ。その身近に居る友人が強い味方に成ってくれるハズだと、目を輝かせながらLOVEフェスタのポスターを見つめて居るのであった。すると、その時! 穂乃花の部屋のドアを⦅コンコン⦆っと叩く音が響きわたる。


『穂乃花~夕食が出来たわよ。そろそろ、ダイニングルームに来なさい~』

 如何やら夕食の準備が出来た様で、母が穂乃花を呼びに来たのだ。


「は~い、今からそちらに行きます。遅れてしまってすいません」

『帰って来るなり、部屋に閉じこもって居たから心配したじゃない。何か有ったの? 大丈夫、穂乃花』


「何も有りませんわ。沢山の課題が出ていたから、目を通して居たんです。先にダイニングルームに戻っていてくださいお母様。身の回りの整理整頓をしたら、そちらに行きますので」


『そう、それなら良いのだけど。じゃあ、先に戻ってるわね穂乃花』

 帰って来るなり部屋に閉じこもって居るのを気にした母が声を掛けて来たのだが、心配は掛けまいと上手くサラリとかわす言葉を伝えて事無きを得た穂乃花。


「ふう~何とか、上手く胡麻化せられましたの。お母様とお父様に心配を掛けてはいけないわ。泣き過ぎて、まだ目が少し赤いけど、顔は何とか見られる顔に戻ったかな。よし! 笑顔で夕食に臨まなきゃ。コスプレイベント参加の話は来週の早い内に2人に話しておきましょう~」


 穂乃花は、鏡を見ながら自身の顔に乱れがないかチェックを終えると、ニッコっと笑顔を見せながらドアを開けてダイニングルームに向かって行くのであった。何はともあれ、失恋のショックから少しだが立ち直って来た穂乃花にホッと一安心ですね!





 そして翌週の月曜日。山楽部の部室では、いつもの山道下山トレーニングに向かうべく着替えを済ませて準備万端と成って居るメンバー達の姿があったのだ。あとは山岸先生の到着を待ってトレーニングに出発するばかりと成って居た時だった。穂乃花が皆んなの前で、徐に話し出したのであった。


「あのう~わたくしから、沢井さんと杉咲さんに話したい事が有りまして。聞いて頂きたいのですが、、」

「あら~如何したの如月さん。改まって、わたし達に話が有るなんて。一体何かな、その話って。恋愛の事かな?」


「その真剣そうな表情を見ると、凄く大事な話の様ね。もしかして、この間の恋愛話の続きなのかな。これから告白する気で居るから、その事の相談をしたいと言う事かしら?」


(うっ、話が有ると言ったら、やはり恋愛の事だと思ってしまうのね。もう告白したけどフラれてしまって華々しく散ってしまいましたの。ここは、失恋した事は内緒にしておきましょう。とにかく今は、2人をコスプレイベントに参加出来ないか聞いてみる事にしましょう)


 穂乃花から[話したい事があるの]との声が友香里と華菜に掛けられて、これから女子3人の話が始まると思われた、その時!


「あの~これから女子3人で話しが有る様ですけど、僕はこの場に居ても良いのでしょうか。もし、如月さんが聞かれたくはない話しであれば、席を外す様にしますけれど」


 これから始まるであろう女子3人組の話が気に成りつつも、穂乃花に気を使って席を外した方が良いのでは? と自ら進言する隼人。


「あら、隼人さん! そんな気遣いをしてくださらなくても大丈夫ですわよ。今から話す事は、わたくしの趣味に関しての事ですから隼人さんにも聞いて欲しいと思って居ますの」


「えっ! 僕も同席して良いんですね。如月さんの趣味に関する事なんですか。となると、もしかしてコスプレに関する話が有ると言う事ですね」


「まあ、そう言う事かしら。コスプレに関して話が有るのですけど、聞いてくださりますか沢井さん、杉咲さん、そして隼人さん!」


「あっ、そうゆう事なのね。てっきり恋愛の事で相談が有ると思ったわ。でも、コスプレの事での話って何なのかしら~」


「そうそう、私も恋愛の事かと思ったわ。そうか~趣味のコスプレの事で話しが有るのね。じゃあコスプレの話しで、どうゆう事を私達に聞いて欲しいのかしら?」


(お二人さん残念でした! 恋愛の事で、僕は真っ先に如月さんから相談されていたんですよ。うんうん、女子達よりもまづ僕に相談を持ち掛けて来るとは、僕って人望が厚いんだろうな。ところで、如月さんは自分の趣味のコスプレの話を何故、2人に持ちかけるのだろう?)


 恋愛の事では無く、趣味のコスプレに関しての話が有ると言う事に一体、どの様な話が持ち掛けられるのだろう? と、興味深々で穂乃花の方に目を注ぐ隼人と友香里、華菜。すると3人にジッと顔を見つめられた穂乃花は、恥ずかしそうな表情を見せながら話し出した。


「あのですね、わたくしの趣味はコスプレをする事なのは皆さんご存じですよね」

「うん、勿論知ってるわよ。如月さんは有名コスプレイヤーですものね」


「勿論、私も知ってるわよ。如月さんの、コスプレ姿は凄く素敵だわ」

「コスプレが趣味な事は、この山楽部では公然の事実ですよ。では、そのコスプレの事に関して何かの相談事が有る様ですね。教えてください、如月さん!」


「そう! 山楽部内では、わたくしがコスプレイヤーだと言う事は公然の事実ですよね。だからこそ、わたくしの秘密を知り得て居る山楽部の皆さんに話したく、協力をお願いしたい事が有るんですの」


 穂乃花は、3人が自分の秘密を知って居るからこそ協力を仰ぎたい! と口にすると、テーブルの上に置いてあったバックに手にして、何やら丸く筒状にしまってあったポスターらしき物を取り出して開いて行く。

 そのポスターは、あのコスプレイベント[LOVEフェスタ]の宣伝広告だったのだ。


「皆さん! この宣伝ポスターを見てください。実は、今月の25日の日曜にコスプレ界最大のイベント[LOVEフェスタ]と言うコスプレイベントの東海大会が、何と! 地元沼津のキララドームで行われるんです」


 穂乃花が皆んなに見せた宣伝ポスターには、この様に書かれていたのだ。

[LOVEフェスタ2021 東海大会 キララドーム沼津にて開催決定! 2021年7月25日(日) 中央イベントホール コスプレライブで頂点を目指してLOVEキングの称号を手に入れろ!!]


 目前に広げられたコスプレイベント案内ポスターに視線を注ぐ、隼人と友香里、華菜。暫くの間、見入って居た3人だったが、まづは友香里と華菜から質問の声が上がる。


「コスプレイベントが沼津であるのね。この様なイベントが沼津で開催されるなんて知らなかったわ。でも、如月さんはコスプレイヤーだから、この様なイベントに出るだろうけど、私達と何の関係性が有るのかしら?」


「そうよね、如月さんは有名コスプレイヤーだから、イベント参加するのは当然の事だわね。……もしかして、あたし達に如月さんが出場して居る所を見に来て欲しいって事かしら?」


「おしいわ! 勿論、わたくしがコスプレして出場して居る所を見て欲しいけど、お二人さんには、見る側以上の事で協力して欲しい事が有るのよ~」


 どうやら穂乃花は、2人がコスプレイベントを見る側だけでなく、それ以上の事をして欲しい事を望んでいる様である。その事を聞いた友香里と華菜は、それ以上の事ってなんだろ? と摩訶不思議そうな表情を見せて居るのだった。すると、その話のやり取りを聞いて居た隼人が口を開くのだった。


「もしかして、如月さんの言う[それ以上の事]って、沢井さんと杉咲さんにコスプレの格好をして一緒に出場して欲しいと言う事なのかな? 今の話のやり取りを聞いて居て僕は思ったんですけど」


「そう! 隼人さんのお察しの通り、沢井さんと杉咲さんに一緒にコスプレイベントに参加して欲しいって事なんですの。単刀直入に言うと、コスプレライブに強力な助っ人としてお二人さんに登場して貰えたらなと思ってるんです」


「ええ~! 私達にコスプレイベントに参加して欲しいなんて! な、何でまた私達に白羽の矢が立って、如月さんと一緒にイベント参加しなければ成らないのかしら?」


「そ、それはビックリなお誘いよね。ましてや、コスプレライブに助っ人として参加して欲しいなんて。それって、ライブと言うからには歌も歌わなきゃ成らないんでしょ。一緒に参加して欲しい理由を、あたし達に教えて貰えないかしら、如月さん!」


(おお~2人にコスプレイベントに参加して欲しいなんて。如月さんは何て大胆な提案をして来るんだ!)


 コスプレイベントで行われるミニライブに助っ人として参加して欲しい事を聞いた友香里と華菜は、驚きの声を上げて居るのだった。そして、何で自分達をコスプレライブに一緒に参加して欲しいのか、質問の声が上がった。


「はい、何故お二人さんをコスプレイベントにお誘いしたいか、説明しますの。まず単刀直入に言いますと、沢井さんと杉咲さんのコスプレ姿が凄く可愛らしくてコスプレイヤーの、わたくしから見ても素敵で輝いて見えるからなんです。

 お二人さんのコスプレ姿の素晴らしさは、山楽部の部室DIYの時にコスプレ衣装を身にまとった事で実証済みですわ!」


「あ~あの、部室のDIY作業の時に隠密でコスプレ衣装を着てしまった時の事ね。まあ確かに、凄くリアルな衣装だったから、あたし達のコスプレ姿が更に際立ってしまったと思うわ」


「そうね、あの時は部室内でこっそりとコスプレ衣装に着替えたのよね。私はルミリアの衣装を着て、華菜と如月さんはラムルとレムルの衣装に成って、部室内で写真撮影して盛り上がったわよね」


(そうだよ、あの時の女子3人のコスプレ姿は本物と見間違ってしまうほど、綺麗で可愛らしかったんだ。おかげで、先生と僕は本物の異世界キャラが出現したと思って大混乱したんだよ!)


 ※この部室DIYの時に女子3人が巻き起こしたコスプレ騒動は山楽部史上、最もお騒がせな出来事だったでしょう。詳しくは[清流学園山楽部 山楽部始動編]の第19話「山楽部の部室、異世界と繋がる??」をご覧頂ければ、そのお騒がせぶりが分かります。


「そう、あの時の部室でのコスプレ騒動は、沢井さんと杉咲さんの元の可愛らしさが合わさって、アニメの世界から飛び出て来た様な完成度の高いコスプレ姿だったわ。だからこそ、コスプレライブでの強力な助っ人として適任だと考えたのよ。

 今回のLOVEフェスタは各ブースに分かれてコスプレ撮影会を行った後に、コスプレライブを行うの。そのライブ後に観客から投票が有って、その結果次第では一番の名誉であるLOVEキングの称号が与えられるの。

 だから、わたくしは一番に成れる様に助っ人の力が欲しいの。きっと、お二人さんの協力を貰えれば会場中の視線が、わたくしのブースに注がれるのは間違いないですわ。是非とも沢井さんと杉咲さんの、お力をお貸しください!」





 穂乃花から、熱のこもったコスプレイベント参加勧誘の言葉が発せられて、たじろぐ友香里と華菜。だが隼人だけは「うんうん」と頷きながら聞いて居るのだった。


(そうだぞ、そうだぞ、如月さんの言う通りだよ。沢井さんと杉咲さんのビジュアルの良さが合わさって、完成度の高いコスプレ姿が披露される事は間違いないんだ。

 これは、思い切って2人共にイベント参加した方が良いと思うな。ここは如月さんの味方をして、2人がイベント参加する様にプッシュしてやらねば!)


「如月さんが、あたし達にイベント参加して欲しい理由は分かったわ。でも、ライブと成ると、あたし達も歌や踊りを披露しなきゃ成らないって事でしょう。参加を決めたとしても、それが出来るかどうかが問題よね」


「華菜の言う通り、そのライブに参加するって事は歌や踊りも必要になるわ。私達が百歩譲ってライブ参加したとしても、歌えない踊れない様なコスプレイヤーではまづいと思うわ」


「良かったわ~ライブに参加したい意思は有るのですね。歌や踊りの事は心配なさらないでください。わたくしが、ちゃんと指導しますわ。ライブは2回行う様にする事を考えてるのですが1回目は、わたくしの単独ライブで行きます。

 その後の2回目のライブで沢井さんと杉咲さんに参加して貰い、3人でのライブを行おうと考えてます。でも心配なさらないでください。2回目のライブでは、わたくしがセンターに立ってメインで歌いますから、お二人は両サイドを固めて合いの手を入れながら踊ってくれて頂ければよいですわ!」


(如月さん、いつになく積極的で、2人をコスプレライブに誘おうとして居るよ。何だか今日は、いつものもの物 静かな如月さんではないよな。これは、何か落ち込む事が有って、その事を忘れようとして頑張ってるところも有るかもな。

 ……もしかして、先週末の土岐田さんと言う3年生への告白が上手く行かなかったのかも知れないな。う〜ん、気に成るから後日に和也に有ったら、どうゆう状況だったのか聞いてみようっと)


「今日の如月さん積極的で、勧誘の仕方が上手だわね。そうか〜私達は2回目ライブの時に、如月さんの盛り立て役で出演するから、そんなに歌を歌わなくても良いって事なのね」


「あたし達が、如月さんの両サイドで合いの手を入れて盛り立て役を務めると言う事なのね。ん〜と、それなら踊りを教えて貰えば何とか、あたし達でも出来そうだわね」


「前向きな返答、有難うございます! センスの良さそうな沢井さんと杉咲さんなら、踊りの方は練習すれば出来ると思いますの。だから、是非ともお二人のお力添えを貰いたいですわ。如何でしょう、コスプレライブに参加すると言う事で宜しいでしょうか?」


 もう2人はコスプレライブに参加して貰えるのだと言うノリで、積極的に話を進めて行く穂乃花の姿を見た友香里と華菜は、戸惑った表情を見せながら即座に返事を出来ないで居るのだった。すると、その様子を見て居た隼人が、2人を後押ししようと口を開くのだった。


「お二人さん、如月さんが必死に勧誘してくれてる訳ですし、覚悟を決めてコスプレライブに出てみては如何ですか? 沢井さんと杉咲さんのコスプレ姿は天下一品ですし、きっと上手く如月さんをサポートしてライブを盛り上げてくれる事が出来るハズです。もうこうなったら、コスプレ部を3人で作ってみたら如何でしょうか?」


「ちょっと~隼人くんったら、あたし達を後押ししてくれるなんて意外だわ。そんなに、あたし達のコスプレ姿が可愛らしいのかしら。そんなにヨイショされたら、本気に成ってしまうわ。如何しようか友香里、こうなったら頑張って参加してみない?」


「そうね~隼人くんが、こんなに私達の事をプッシュしてくれるなんて嬉しいわ。それだけ私達の魅力が有るって事よね。うん、こうなったら思い切って参加してみるのも良いんじゃないかしら」


「よし! これで決まったんじゃないですか。もう、お二人さんはやる気満々みたいですよ。良かったですね、如月さん!」


「如何やら、隼人さんの強力な後押しが有ったから、沢井さんと杉咲さんのやる気に火が付いた様ですわ。では、コスプレライブに参加する事で宜しいですね」


「うん、これはもう参加するしかないわね。まあ~そうゆう事でお願いします、如月さん。私達の指導を宜しく頼みますね」


「もう覚悟を決めて参加する事にしましょう。あたし達の魅力で如月さんを盛り立てて、コスプレライブで一番の評価を貰える様に全力で頑張りましょう!」


「参加の返事をしてくださり、有難うございます! 2人が、わたくしを盛り立ててくれれば、向かうところ敵なし! ですわ~」


 如何やら、隼人からの熱い後押しの言葉で気持ちに火が付いた友香里と華菜は、とうとうコスプレライブに参加する事を承諾するのだった。

 その場には、何とも言えぬ高揚感に満ちた空気が立ち込めて、女子3人組はコスプレライブに向けて闘志を燃やすのであった。すると、その燃える女子を見て居た隼人は笑顔を見せながら話し掛けて来た。


「山楽部の女子3人が集まれば凄いパワーを発揮して、鬼に金棒だと思いますよ。頑張ってくださいね。……それはそうと、皆さんがコスプレライブに出ている時は、僕は応援をする事をすれば良いんでしょうか? 皆さんがライブに出場する事を知ってしまった今、盛り立て役に徹したいと思うのですが」


「うん、そうね。わたくしも今、その事をお願いしょうと思ってたところなの。当日は、わたくしのファンの方達が駆け付けてくれると思うなですが、やはり知った顔の人から応援が有ると士気が上がりますの。

 だから、隼人さんから応援の声を貰えばテンションが上がる事、間違いなしですわ。是非とも応援の方、宜しくお願いします!」


「そうですか、部活仲間である僕の応援が、皆さんの士気を上げる事にも繋がるんですね。では、当日のコスプレライブの時は僕が渾身の力を込めて応援しますから、女子の皆さんはステージ上で頑張ってライブを行ってください!」


「分かったわ! 私達は本番までに練習を行って、ライブが成功する様に頑張るわね。本番のコスプレライブでの応援を宜しくお願いね、隼人!」


「隼人に応援を貰えれば、あたし達の士気が上がるのは間違いないと思うわ。見ている人達を釘付けに出来る様なコスプレライブを披露して見せるわね。その為には、穂乃花からの指導を受けて練習に励む様にするわ。穂乃花、宜しく頼むわね」


「いえいえ、こちらこそお願いしますの。わたくしは、沢井さんと杉咲さんからコスプレライブに参加すると言う返事を貰えて嬉しいです。LOVEフェスタまで、あと3週間有ります。それまでにわたくしがダンスと歌を、しっかりと教えますから頑張って完成させて行きましょう~」


 隼人から、当日のライブでは皆んなの士気を上げてライブを成功へと導ける様に、応援を頑張る事が告げられる。その事を聞いた女子3人組は拳を握り締めながら、その応援に答えられる様に、練習をして本番のコスプレライブに備える事を誓うのであった。


「如何でしょう、皆さん。コスプレライブ参加が決まった事ですし、ここで景気づけにシュプレヒキコールを上げませんか? さしづめ、[発足! 清流学園コスプレ部~!!]って言う感じで言うのは如何ですかね」


「あ~良いわねそれ! 景気づけに皆んでシュプレヒコールを上げましょうよ」

「そうしましょう。良い事を考えるわね、隼人。では、皆んなで円陣を組んでシュプレヒコールよ!」


「分かりましたわ、杉咲さん! 皆んなで円陣を組みましょう~」

 隼人からシュプレヒコールを上げる提案が成されて、それに呼応して華菜から円陣を組もう! と声が掛けられ、皆んなは互いに向き合い円陣を組んで行く。


「はい、円陣が組まれたところで、シュプレヒコールを皆んなで上げましょう。では行きますよ~発足! 清流学園コスプレ部~!!」

〚発足~! 清流学園コスプレ部~~!! おおーー!!〛


〔隼人の音頭と共に、拳を高々と上げて大きな声で掛け声を上げる女子3人組。とうとう清流学園山楽部のメンバー達が、顧問の先生には内緒で勝手にコスプレ部と言う名称を付けて、個人の趣味に徹した[清流学園コスプレ部]を立ち上げた瞬間で有ったのだ。

 もっとも、山楽部内のメンバー達で趣味の為に勝手に立ち上げた部の名前なのである。勿論、学園の中では認めらる訳は無く、部員達の趣味のサークルと言った方が良いだろうか〕←作者談


⦅ガチャガチャ⦆

山楽部のメンバー達が[清流学園コスプレ部]の発足のシュプレヒコールを上げた時だった。部室の入口ドアノブを開ける音が鳴り響きドアが開かれた。


「遅く成ってすまなかった。皆んな、お待たせしたな。……んん、如何したんだい?拳を突き上げたまま、キョトンとした顔をして」


 シュプレヒコールの掛け声を終えた途端、余りにもタイミング良く現れた山岸先生に、拳を上げたままバツの悪そうな顔をして居るメンバー達。


「おいおい、やはり私が現れた事が不味かった様だね。部室を開ける直前に清流学園〜何とか何とか! って言ってたのが聞こえたんだが。私の知らない所で何か隠し事をしてやしないかい?」


「あ〜先生! お待ちしてましたの。いえいえ、何でもありませんわ。今日は愛鷹山トレーニングが有るから、気合いを入れようと景気ずけに声を上げて居たのです。そうですよね、沢井さん、杉咲さん!」


「そ、そうですよ。今日は愛鷹山のトレーニングだから気合いを入れる為に[清流学園山楽部〜!]って掛け声を上げて居たのよ」


「そうそう、今日は登山道を歩く訳だから、気合いが必要だからね。それには、自分達の部活の名前を叫ぶのが1番だと思ったんですよ〜」


(このタイミングで先生が入って来るなんて驚いたよ。それにしても女子達は、咄嗟にはぐらかす言葉を思い付くよな。まさかコスプレ部を私的に結成したとは言えないもんな)


 タイミング良く部室のドアを開き現れた山岸先生に戸惑いながらも女子達は、その場ではぐらかす言葉を言って上手く事無きを得るのであった。隼人も、女子達が咄嗟の機転を働かせてくれてホッと一安心して居るのだった。


(何だか、それらしい事を言って私をはぐらかして居る感じがするな。これは何か私に隠してる事が有るハズだ。……まあ、今日のところは深く追求しない様にしておこう。だが後日に、女子達には内緒にして星野さんを捕まえて、こっそりと問い質してみよう)


「そ、そうかね。愛鷹山トレーニングに備えて気合を入れる為に、清流学園山楽部〜! と掛け声を上げて居たのだね。その勢いで今日の登山道の昇り降りを頑張ってくれたまえ。では諸君、気合いを入れてトレーニングに出発しようじゃないか!」


 先生はメンバー達の怪しい雰囲気を感じ取っては居たが深く追求するのを止めて、愛鷹山トレーニングに向かう様に皆んなに出発の指示を出すのだった。指示を聞いたメンバー達はコスプレ部結成の目論みを知られずに済んだ事で、ホッとした表情を見せながら声を上げた。


「はい、着替えも完了してますので準備万端です。では山楽部の皆さん、頑張って愛鷹山を登りに行きましょう!」

〚了解しました! 愛鷹山を頑張って登って来ましょう〜 〛


 隼人の出発の音頭に呼応して、女子達の高らかな掛け声が鳴り響き、山岸先生の後に付いて部室を出て愛鷹山に向かうメンバー達。今日もトレーニング励め! 山楽部の若人達よ!!





 山楽部のメンバー達が、山岸先生には知らせずに秘密裏に結成した清流学園コスプレ部。勿論、私生活における個人の趣味の為に仲間内で結成した(仮)の部活名で有るから、学園で正式に認められる部活になる由も無い。

 だがメンバー達は、私生活における趣味を楽しむと言う意味でも、俄然張り切ってコスプレ部を盛り上げて行こうと考えて居るのだった。そして早速、翌日からコスプレライブに向けての練習が始まる。練習場所は一体、何処でやるのかと思いきや女子3人の話し合いの結果、昼休みに屋上を使って練習する事に決まったのである。

 自宅でライブの練習を集まって行う事は困難である事、朝と放課後は山楽部の部活動が有る事、休日は各自がアルバイトを持って居る事、以上の事が有ると言う理由から昼休みの時間を利用して屋上で練習を行う事が最適だと判断した様である。


「さあ、昼食を食べ終えましたね。では今日からLOVEフェスタが開催されるまでの3週間、この屋上を使ってライブの練習を頑張りましょう!」


「ふあ~練習の時間を多く取ろうと思って、昼食を10分で終わらせてしまったわ。でもライブの練習の為だから、今後3週間は速やかに食事を終わらせる様にしましょう」


「まあ、ライブの練習時間を取る為には仕方のない事だわ。とにかく短い期間で練習して本番に間に合わせなければ成らないから、頑張りましょう。では穂乃花、今日から指導の方、宜しくお願いしますね」


「分かりましたわ。当日のライブで観客をアッと言わせる事が出来る様に、今日から頑張って指導致しますわ。それでは、今日の初日の練習ですが、まづは見る事から始めたいと思いますの」


「えっ? まづは見る事から始めるの。いきなり、ダンスの練習から入るのかと思ったわ」


「私も、直ぐにダンスの練習に入るのかと思ったわ。だけど、まづは見る事が大事って事なのね。そうすると、何か映像を見て勉強をするっ事よね、穂乃花?」


「そうですよ、正解です! まづは、どうゆう曲で、どんなダンスを踊るのか? と言う事から勉強するんですよ。まづは、この映像を一緒に見て行きましょう~」


 穂乃花はダンスの練習に入る前に、まづは映像を見て勉強する事が大事で有る事を友香里と華菜に告げる。そして自分のスマホをポケットから取り出して、ベンチに座る様にと2人に手招きして座らせると、映像を再生するのだった。


「さあ見てください、始まりますわよ。わたくし達、3人がライブで行う曲は、このアニメの楽曲に成りますの」

 始まった映像を食い入るように見て行く友香里、華菜、穂乃花。映像が始まるとアニメ好きの華菜が真っ先に口を開くのだった。


「やだ~これって、ゾンビがアイドルに成って加賀を救うって言うキャッチフレーズで、年間アニメ大賞で1位を取った伝説のアイドルアニメじゃない」


「そう! 正解ですわ、杉咲さん。あの、年間アニメ大賞を取った伝説のアイドルアニメの楽曲を歌うんですよ」


「私も、このアニメ見た事は有るわ。この映像に流れている曲って応援歌みたいな楽曲でしょう。この楽曲の振り付けって、凄く可愛らし振り付けで踊るのよね」


「そうなのです、今の流れている映像の所の、お尻を突き出してフリフリするダンスが凄く可愛らしいんですのよ~」


「えっ! そうすると私達も、お尻フリフリダンスを練習して行くって事よね?」

「そのお尻フリフリダンスを、あの可愛らしい衣装を着て披露したら、観客たちにスカートの中が見えてしまうんじゃないかしら」


「ああ~その事ですか。それならインナーパンツを履いて居れば、ちらっと見えてしまった時の対策として効果的だと思いますわ」

「ああ~そうか! インナーパンツを履いて居れば、チラ見された時にも対処が出来るわね」


「そうか、その手が有ったわね。ミニスカートの中がチラ見された時の対策をしておくのは女性としての身だしなみよね!」

「あっ、話してる間に最後のダンスシーンに入って行きますの。最後の踊りの所、よ~く見ておきましょう」


 ダンスシーンでのスカートの中のチラ見えにどう対処して行くのか気にしながら、ダンスの映像に見入って居る友香里と華菜、穂乃花。その後も、何度も映像を見直してダンスの身振り手振りを研究して行くのであった。こうしてダンス練習初日の日は、過ぎて行くのでありました。





 そして水曜日の昼休み。清流学園校舎のA棟とB棟を結ぶ渡り廊下の所で何やら話し合っている2人の男子生徒が居た。その2人は誰なのかと言うと、


「そうか~やっぱり、如月さんはフラれてしまって居たんだ! でも、あの如月さんをフルなんて驚きの一言に尽きるよな~」

「そうだろう、俺も土岐田先輩が如月穂乃花をフってしまう場面を目撃した時は衝撃が走ったんだよ!」


 如何やら、先日の穂乃花の様子が不自然に思った隼人が真意を質すべく、岸本和也を昼休みに渡り廊下の所へと連れだして話を聞いて居たのだ。


「ちょっと待って和也! 如月さんがフラれた場面を見て居たと言ったけど、もしかしてコッソリと何処かに隠れながら様子を伺ってたって事なんだね?」


「実は、そうなんだよ。俺は一度、土岐田先輩から帰る様に言われたんだけど、後に成って茂みを伝って戻って来て隠れて見てたんだよ」

「やっぱり、そうか~君も中々、やるね! でも、その時の如月さんは、かなりショックを受けてたんじゃないのかい?」


「そうなんだよ、コッソリと見て居たお陰で、あの如月穂乃花がフラれる瞬間に立ち会ってしまったんだよ。フラれてから暫くの間、涙を流して立ち尽くして居た彼女を見ていたら可哀そうで可哀そうで、俺まで泣きそうに成ってしまったんだよ」


「やっぱり、フラれたショックが大きくて泣いてしまってたんだね。……でも、恋敵の土岐田さんが如月さんをフッてしまって、和也として見たら良かったんじゃないのかな?」


「そりゃ俺は如月穂乃花が好きだから、フッてくれてホッとして居るのかと思われてしまうだろうが、フラれてしまった如月穂乃花が可哀そうで仕方がなくて同情してしまうんだよ。

 それに、渡そうとしたプレゼントも受け取らないなんて、土岐田先輩も酷な事をするもんだよ。交際を断ったとしても、せめてプレゼントを受け取る位はしろ! ってんだよ。そう思わないかい、隼人!」


 恋敵が穂乃花をフッてくれたのは良い事なハズなのに、プレゼントさえも受け取らづにフッてしまった土岐田に憤激してしまい、隼人の方を向き力説する岸本。


「そ、そうだね、交際を断るのは仕方がないとしても、そこは用意して来てくれたプレゼントを受け取る位はしてやらないとね。それは余りにも如月さんが可哀そうだよ~」


「そうだろ、そうだろ、そう思うだろう! 余りにも可哀そう過ぎるんだよ。隼人が以前【失意のどん底に陥って居る如月さんの前に、彗星の様に岸本が現れて優しく接してあげるんだよ】って俺に言っていたじゃないか。

 その失意のどん底に居る彼女を慰めてあげる事が出来るのは、世の中で一番に如月穂乃花を好きな僕しか居ないって事だよ!」


(おいおい以前に言った僕の言葉を、そのまま真に受けて実行しようとしてるんだな。でも……あれだな、一昨日に会った時の如月さんは何か吹っ切れた様にして居て、立ち直って居る様に見受けられたけど。もう、和也が彗星の様に現われなくても大丈夫じゃないのかな?)


「和也は、そんなにも如月さんの事が好きなんだね。まあ、それなら君が現われて優しく接して上げても良いんじゃないかな。……でも、今の如月さんは自分の趣味の事に夢中に成って居て、立ち直って来て居る感じに成ってるかな。

 近々、イベントも控えていて燃えて居る様だし……あっ、まづい、今の話は取り消しね、、」


「んん? 今、何て言ったんだ。如月さんが立ち直って、趣味のイベントに燃えている? って言ってたよね、隼人! ど、如何ゆう事なんだ、何か俺の知り得ない如月穂乃花の秘密が有るって事なんだろう。

 教えてくれ、いや、世界で一番彼女が好きな俺が知って居なければ成らないんだ。だから、俺には秘密を知る権利が有るんだよ!」


 隼人は、山楽部内での個人同士の持っている秘密の事を、うっかり部外者である岸本和也に口走ってしまったのだ。その、うっかり口にした事に直ぐさま反応して隼人の目前に自分の顔を近づけ、如何ゆう事なのか問い質す岸本。


(まづい、まづいよ。山楽部内での個人の秘密を、うっかり口走ってしまったよ。如何しよう、このまま白を切って通した方が良いよな。うん、そうしよう)


「いや~僕は、何か言ったかな? まあ、趣味は誰にでも有るって事を言いたかったんだよ、、」

「もう、そんな白を切る様な事をしても無駄だぞ! 早く俺に如月穂乃花の秘密を教えるんだよ、隼人!!」


 白を切ろうとした隼人であったが、時すでに遅く、岸本のキツイ追及の目にさらされてしまう隼人。その岸本の威圧感に観念したのか、とうとう口を開くのだった。


「分かったよ、観念するよ。だけど、これは山楽部内の個人同士の秘密だから、大きな声では言えないんだ。お願いだから、絶対に他の人には言わないでくれよ。……和也、ちょっと耳を貸してくれないか?」


 山楽部内の秘密事だから他言しない様にと釘を刺した後、和也の耳元に近寄りヒソヒソと話し出す隼人。その穂乃花の秘密を耳元で聞いた岸本は雄叫びを上げた。


「何にいー! 如月穂乃花がコスプレイベントに出るんだって!! そうかそんな趣味を持って居たのか、あっ……」

「おいおい、そんな大きな声でしゃべるなよ和也! これは山楽部内の秘密事なんだよ。お願いだから、他言しない事を約束してくれ!」


 せっかく、他の人に知られない様に耳元で話したにも関わらづ、大声を発する岸本の口を手で塞ぎに掛かる隼人。


『お前は、何でそんなにストレートに口に出すんだよ。大きい声を出すと周りの人に聞こえちゃうじゃないか。せめて小声で話してくれないかな』


 隼人と岸本が居る場所は渡り廊下の所である。教室ほどではないが時折、行き来する生徒達が居るのだ。そんな状況の場所だからこそ、せめて小声で話して欲しいと懇願する隼人。


『分かった、分かった、小声で話す様にするし他の人には絶対に他言しない様にするからね。だが、もう俺は秘密を知ってしまったんだ。だから、山楽部の一員に成ってしまった様なものさ。それでさ、隼人はイベント当日は何の役割をするんだよ?』


『あ~それがね、僕はライブイベントの応援役に指名されたから、当日は女子達のライブの盛り立て役に徹する様に成ってるんだよ』


『何々、ライブに出る女子達を応援する様に成っているんだね。そうか良い事を聞いたな……あのさ~俺からのお願いが有るんだが』


『何なんだよ、和也! かしこまって聞いて来たりして。何なんだい。言ってみてくれるかな?』

『そのさあ、俺からのお願いと言うのはね、俺も隼人と一緒にライブの応援に加勢したいなって事だよ』


『何だって! 僕と一緒にライブ応援をしたいのかい? それは困ったな~山楽部でない和也がライブ応援に参加するとなると、女子達に許可を取って来なきゃ成らないんだ。だが、僕は山楽部の秘密を和也に喋ってしまった身だからな。その様なお願いをして聞いて貰えるかとても不安だよ~』


『そこを何とかして欲しいんだよ。俺は山楽部の秘密を知った以上、他の人には他言しない事を誓うから、その事も女子達に伝えれば許可を出してくれると思うんだ。俺は如月さんの応援がしたいんだ。頼むよ、この通りだ!』


 和也から自分もライブ応援に参加したいと言う進言を聞いた隼人は、目を丸くして驚き慌てふためいて居るのだった。だが、隼人の慌てる様子をものともせず、何とか自分もライブ応援が出来ないものか両手を合わせて懇願する和也。その必死の形相に、降参した隼人は口を開くのだった。


『分かったよ、和也。口が滑って君に秘密を漏らしてしまった僕にも責任が有るからね。こうなったら、秘密を漏らしてしまった事を素直に謝った上で、和也がライブ応援に参加しても良いか聞いてみるよ』


『そうか、有難う! 君は話の分かる人だよ。では、話は決まったな。宜しく聞いてくれよ、隼人!』


『まあ、頑張って女子達に聞いて、和也のライブ応援の参加許可を勝ち取って来るよ。……あっ、そろそろ昼休みが終わってしまうよ。教室に戻ろうか、和也』


『おう! 吉報を待って居るよ、隼人。では、もう次期ベルが鳴るから、急いで教室に戻ろうぜ!』


 ライブ応援の参加が出来るか女子達に口を利いて貰う事の話を取り付けた和也は、上機嫌で隼人と肩を組みながら教室へと戻って行くのだった。

 だが、上機嫌な和也とは正反対に、隼人は山楽部の秘密を漏らしてしまったと言う後ろめたい気持ちで居たのだ。果たしてライブ当日は、和也の応援参加が叶っているのかどうかが見ものである。


 そして月日は流れ、7月25日のライブ当日がやって来た。女子達は3週間のライブ練習期間を終え万全の態勢を整えて、沼津キララドーム入りを果たして居た。えっ? その後に岸本和也のライブ応援の参加の願いが叶ったのか? と言う事を読者様は気になさって居るのですね。

 では[コスプレイヤー穂ノン]のブースを見てみる事にしましょう。果たして和也の姿が有るのか! ……おお~と! 隼人の隣にスポーツ刈りのガラの悪そうな少年が居るぞ。この出で立ちは、まさしく岸本和也ではないか。そうか、女子達の許可が下りて念願かなってライブ応援の参加が出来たんだ。良かったね、和也! 

 ……んん? 良く見ると穂ノンのブースの近くで、緑のハット帽子と黒縁メガネ、紺色のコートを身にまとい、顔にはマスクを付けて、建物の柱の陰に隠れる様にして立っている背の高い怪しそうな男が居るぞ。この、ひと目見て誰もが怪しそうに感じしまう男は一体、誰なのだろう? 

 と、この男が誰なのか気に成るところで有りますが、その正体は次回に明かされますので皆様、乞うご期待!!

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