公園で (2)
「ねぇ、いつかまた人間の身体に帰ってくるのよね?」
「人間に戻せるかは、まだ分からないよ」
たとえ新しい肉体を作って脳だけを戻しても、それはもう違う人間なのだと、暗に言っている気がした。
でも、今日の葬儀だってただのお遊びで、ここで本当にお別れなんて思えなかった。だって、マミは生きていて、今だって確かに私の言葉を聞いているのだから。
「だって、完全な球体があればあんたの魂を取り出せるんでしょう? それを肉体に戻せば――」
「魂と肉体が分離できるなんて、古典的な発想だね」
私の言葉を遮って、ぴしゃりと言い放つ。不意打ちの反論に面食らっていると、マミはそのまま言葉を続けた。
「私たちの肉体はずっとここにあるし、私たちの魂はこの肉体のためにある。取り出せるものじゃないよ」
魂は肉体に張り付いているからもう取り出せない。そうなのかもしれない。でも、そう考えると、やっぱり人間のマミとはここでお別れなんじゃないか。
アバター、魂、器……マミが動画配信の後に同じようなことを話していたのをふと思い出す。
「じゃあ、やっぱりあんたは死ぬの?」
「そうかもね。人間としては、死んじゃうのかも」
マミはそう言いながら立ち上がって、その場でくるくると回ってみせる。それはまるで、天国から迎えが来たかのようだった。
「でも、私は確かに私だから。それだけは覚えておいて」
夕日を背にして、マミが私に笑いかける。それが彼女から聞いた最後の言葉になった。
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