Seg 47 カミノヨ作戦 -02-

 冷気が暴風になってくるおどる。それでもアスカが平気なのは、近くにユウがいるからだろう。


「そんなおこらないでよ。

いやあさすがミサギ君だよ。アヤカシの消滅しょうめつ逃走とうそう、一気に二つのパターンデータが取れて、ぼくもウッハウハ♪」

「で?」


「うん、それでね、逃走とうそうしたアヤカシをぼくのお手製のドローンで追跡ついせきさせたところ、なんとこれがばっちりドン!」

 ドン、のセリフに合わせて、かれ背中せなかから突如とつじょバズーカーが飛び出す。

 空砲くうほうを鳴らし、部屋へやふるわせた。


「これでアヤカシの特殊とくしゅ魔力まりょくを波形情報としてとらえて、そこから可視かし化できるようになったってわけ! ねえ、すごいでしょ!」


 すごいのだろう、前人未踏ぜんじんみとうなのだろう。だが残念な事に、そのすごさはアスカの奇行きこうにかき消され、ユウたちに一ミリも伝わらなかった。

 反応にこまって、とりあえずうなずく一同。


「あー、いいのいいの。このすごさはぼくだけがわかればいいの。

 ……おっと、わすれるとこだった。

 でね、すぐに地球の表面をまるっとサーチしてみたら――」

 話が一気に地球規模きぼになった。


「なんと類似るいじした反応が、げた犬をふくめ十ヶ所もあったんだ。うち五ヶ所は国内で確認かくにんされている。

 これって、大型のアヤカシが少なくとも五体はいるってことになるよね」


 その場にいる全員が固唾かたずをのんだ。


 アスカは咳払せきばらいをし、「ここからは政府からの方針ほうしんを伝えるね」と付け加えて言った。


「この報告に、政府は大型のアヤカシを『アラミタマ』と呼称こしょう緊急きんきゅう対策たいさくとして、国内にある五ヶ所を至急しきゅう調査し、捕獲ほかくもしくは討伐とうばつ対象と見なして早急さっきゅう対処たいしょせよとのことだ。

 あ、ちなみに筆頭の行動部隊と指揮しきけんはイズナね。これは特命だよ。

 この大規模だいきぼ作戦計画は、今後『カミノヨ作戦』として各機関に通達される。

 フウガ君が頑張がんばってくれたおかげで、作戦名とイズナの名前をだせば、予算・人員・時間を問わず全機関が協力をしまないそうだよ」


「あれっ? わたしがつけた作戦名は……?」

 作戦の協力に一番苦労した本人が、不安そうにたずねる。


「ああ、あの『キョダイアヤカシ大作戦』てゆーの? あれ、却下きゃっか

「え?」

「あれは、政府の方針ほうしんにそぐわないという理由で、却下きゃっかされました!」

「ガーン!

 ……子供こどもにも読めるようカタカナで表記したのに……」

 がっくりひざをつく。

「いや……ネーミングセンスだと思うよ……」

 アスカは言葉の刃物はものをブッスリとした。


「そんなわけで、ぼく早速さっそく力になるよ。これからよろしくたのむね!」


 アスカはにっこり笑った。


 ◆ ◆ ◆


 外は時が過ぎ夕焼け、アヤカシのひとみめられた空が広がっている。

 建物のかげ領域りょういきを広げ、街をやみに包みこもうとする。


「うぅ……おナカすいた」

 そこにうごめかげが一つ、むくりと起き上がり空をあおいだ。

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