Seg 08 狭間の世界~ミラクルワンダーランド~ -03-

「あ、あああのミサギ殿どのに友人がおるやって!?」


「? 普通ふつう? じゃないかな、友達ともだちなんて……?」

 今度はユウの方がおどろく。


「ふ、ふっつーに友人なんて! 天変地異もええとこやわ! あの……あのミサギ殿どのにとっととともともと……」


「『友達ともだち』?」


「ありえへ~ん!!」

 頭をかかえてさけぶ。


「なんで!? ユウどんのにいちゃんってどんな大物やねん! あの唯我独尊ゆいがどくそん傍若無人ぼうじゃくぶじん恐怖きょうふの大王すら平伏ひれふすといわれる……食物連鎖しょくもつれんさならぬ人類のピラミッドの頂点におるようなミサギ殿どのと対等地位かいなー!!」


 ものすごい言われようである。


「ミサギさんと友達ともだちだっていうのは、そんなすごいことなの?」


「すごいどころか未知の世界やで! ヌシ、大丈夫だいじょうぶか……!?」


「……何が?」


「いくら紹介しょうかいとはいえ、あのミサギ殿どのの下で魔法士まほうしの修業なんぞ? 死ぬよりつらいで絶対」


「マホウシ?」


 ユウの頭上に疑問かぶ。


 いつの間にか、落下速度はゆるやかになり、辺りもずいぶんと明るくなっていた。


「何じゃ、おヌシ魔法士まほうしを知らんかったんか?」

「だ、だから勉強しにきたんじゃないかっ」

「あー、そうじゃったな」


 みっちゃんは自分の額を軽く打ち、

「ならば! 魔法士まほうしに関しちゃペカイチの拙者せっしゃがお教えしんぜよう!」

 ふんぞり返って大見得を切った。


「で……魔法士まほうしって何?」

「うぬ! それはな――」


 ――きたよ


 ユウの頭の中で、そんな言葉がふとよぎる。


「え?」


 気付くとそこは、ユウがていた部屋へやの、ユウがねむっていたベッドの上だった。


「何やってんの、ユウ君?」


 ユウが目の前の光景にキョロキョロとしていると、ミサギが、ドアを開けて軽くノックしていた。


 みっちゃんがいない。


 みっちゃんが飛び出してきたゆかの割れ目を探すが、フローリングはきれいな木目を見せているだけで、割れ目など微塵みじんもない。


「早く着替きがえておいで。一緒いっしょに食堂まで行くよ」

 ミサギに言われて、着替きがえたはずの自分の格好を見る。

 パジャマのままだ。

「あれっ? 確かに着替きがえたはずなのに?」

「なにしてるの? あまりにおそいなら案内しないよ?」

 かされて、ユウはあわてて本日二度目の着替きがえをした。


 ミサギは木戸を連れて歩き、ユウはその後ろをついていった。

 食堂へは、階段を降り左に曲がってたりまで歩くの道のりで、ユウもすぐ覚えた。

 その中は全面カーペット張り、豪奢ごうしゃなシャンデリアとまではいかないものの、間違まちがいなくオーダーメイドのおしゃれなあかりに、繊細せんさい彫刻ちょうこくほどこされた椅子いすとテーブルのセットがしつらえてあった。


「うわ……すごい……!」


 ユウがおどろいたのは、部屋へやの広さと豪華ごうかさはもちろんだが、テーブルに並んだ朝食だった。

 ふわっふわの白パンにデニッシュ、サクサクのクロワッサン、パンだけでも数種類あった。


 飲み物は牛乳、オレンジジュースといった、ユウが飲みそうなものからコーヒーといったミサギが飲むものまで用意されており、その横にはミニコンロとフライパンがーー。


「!?」


 ユウが見たのは、いつの間にかコックの姿をした木戸であった。

 卵を片手で三つ持ち、ボウルへ器用に割り入れる。

 大柄おおがらな体格とは裏腹に小さく細かい手つきで卵をほぐし、熱々のフライパンに流し入れる。バターがほどよくみ、食欲をそそるかおりが辺りに満ちてくる。


 そっとお皿に移された卵は、フワッとやわらかなオムレツへと変身した。


「ありがとう」

 当たり前のようにミサギが受け取り、食事の席につく。

 呆然ぼうぜんとしたユウに、

「何しているんだい? 君も好きなものを食べていいんだよ」

「え?」

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