開店!

 数日準備をして、今日はとうとう店のオープンの日。

 朝起きると、みんなもソワソワしている。みんなにもお店を手伝って貰うので、楽しみだったみたい。


 朝ご飯を作って朝ごはんをささっと食べたら、お店を開ける準備をしよう。


「ふふっ、楽しみだね~」


『楽しみくま!』


『ライチもおてつだいするぴよ!』


「ふふっ、ライチもみんなもお願いするね。でも疲れたらすぐに休んでね。キッチンに、ご飯とおやつとお茶の錬金ボックスが置いてあるからね」


『わかったぺん~』


『わかったこん!』


 お茶の準備やアイスの準備も済ませると、なんだかソワソワしちゃう。でも、お店を開けたからと言って、すぐに誰か来てくれるわけでもないとは思うので、お茶をしてちょっと気持ちを落ち着けよう。


『なんだか落ち着かないぴょんね』


「そうなんだよね~」


『あっ、ハル。ポーション置いたぱん?』


「あっ、忘れてたー! ポーション出して置いてくるね!」


 ポーションはダメにならないように、直前に置くようにしたんだった。すっかり忘れてたよ。

 みんなでお茶をしたら、そろそろお店を開ける時間だ。


(よし、頑張るぞー!)


 お店を開けると、アルスさん達が居た。オープンすぐに来てくれるとは思わなかったから、とっても嬉しい。カレンさんがお花を持ってきてくれた。


「わわっ、ありがとうございます!」


「ハル、おはよう。もう良いのか?」


「はい、どうぞです~」


 アルスさん達はお茶をしていくというので、まずはメニューを注文して貰ってから、こたつに案内しよう。


「これは凄いな。ハル、この可愛いのは食べられるのか?」


「はい、アイシングクッキーと言って食べられるんですよ。それとこっちはアイスのベリーとシフォンです」


「可愛すぎる……俺がこれを食ってたら怒られないか?」


「ふふっ、確かにザックさんがこれをかじってたらびっくりしちゃいますね。でも甘いのが好きだったら美味しいですよ?」


『え~、食べて欲しいぴょん!』


「うっ、わ、分かったよ。じゃぁ、このベリーのクッキーとアイスティーで頼む」


 ザックさんはベリーの誘惑に負けたみたいだ。ザックさんも優しいよね。


「じゃぁ、俺はひぃろにするかな。それと俺もアイスティーを頼む」


「はい!」


『くふふ、アルスはぼくを食べるくまね~』


(ひぃろ、それは逆に食べにくいよ?)


「うぅ……選べないよ~!? ハルちゃん、お持ち帰り出来る?」


「はい、クッキーとか焼き菓子なら大丈夫ですよ」


「じゃぁ、全員分持ち帰りをお願い! 後、今食べるのはシフォンちゃんのアイスと温かい紅茶をお願い!」


「ふふっ、分かりました!」


 カレンさんは、この可愛いクッキーを選べなかったみたいだ。気持ちはとっても良く分かる!!

 その後、みんなをこたつへ案内する。


「ハル、これは靴を脱ぐのか?」


「そうなんです。こたつと言って中が温かいので気持ちが良いですよ。それと、脱いだ靴もこたつの中に入れると、クリーン魔法と除菌で靴も綺麗になりますよ~」


「「はっ?!」」


「えっ!? ハルちゃん?」


 アルスさんだけじゃなく、ザックさんとカレンさんにもびっくりされた。そんな効果を持つ魔道具なんてないって言われた。


「ふふっ、ぜひこたつを試して欲しいな~と思って、色々考えてみました! 普段靴を脱がないから抵抗があるかもですが、試してみて貰えたら嬉しいです」


「あぁ、試してみよう」


「靴を脱ぐのがちょっと抵抗はあるけれど、ハルちゃんのいう事だもの。試してみるわ!」


「あぁ、ハルの言う事だからな!」


 アルスさんもカレンさんもザックさんも試してみてくれる事になった。


「わぁ、ハルちゃん。これ、凄いわ! 足がとっても綺麗になった気がして、気持ちが良いわ!」


「しかも、このこたつの温かいのもまた良いな」


「さすがハルだ! これは足がすっきりして良いぞ!」


 3人とも気に入ってくれたみたいだ。靴も足も綺麗になるから、気持ちが良いんだよね~。


 シフォンのアイスを作ったら、ベリーとシフォンとひぃろがトレーを頭に乗せて待っているので、それぞれの頭にクッキーとアイスを乗せて運んでもらう。私はお茶を運ぼう。


「きゃー、シフォンちゃん。ありがとう!」


「ははっ、ひぃろ。ありがとうな!」


「ベリー、ありがとよ!」


「お茶もお待たせしました。ごゆっくりどうぞ!」


 次に来たのは、キャルさんだった。


「ハルちゃん、開店おめでとう!」


「キャルさん、ありがとうございます」


 キャルさんは持ち帰ってビスさんと一緒に食べるんだそう。やっぱりみんなのクッキーを全種類と焼き菓子をいくつか注文してくれた。


「どれも可愛いお菓子だね~。なんだか食べちゃうのがもったいないね」


「ふふっ、美味しく食べてくれたらみんなも喜んじゃいますよ~」


 キャルさんは、持ち帰りの準備をしている間お店の商品を見ていたら、髪留めに目を留めた。


「ハル! これはなんだい!? この効果は本当に?」


「えっ!? はい、そうですよ。少しなので、どれくらいの効果かちょっと分からないですけど……」


「ハルが作ったのかい?」


「はい、そうですよ~」


「よし、なら大丈夫そうだね。どっちが良いか……」


 キャルさんが悩んでいると、カレンさんも気になったのか見に来た。


「キャルさん、どうしたんですか?」


「あら、カレン。それがこの効果を見てみな。悩ましいだろ?」


「えぇ!? ハルちゃん、これどっちも下さい!」


「やっぱり両方だよね! ハル、私にも両方おくれ!」


「わわっ、ありがとうございます!」


 2人とも目の色が違います……やっぱり髪が少し綺麗になるのと、肌が少し綺麗になる効果は女性には欲しい効果みたいです。


 キャルさんはお持ち帰りの袋を持って帰って行った。カレンさんはそのまま他のアイテムも見ていると、効果を見て凄く困った顔をしている。


「ハルちゃん……これは凄すぎよ?」


「えっ!? でも、どれも効果が小さめのしか作ってないんですよ?」


「それでもよ! どれも欲しくて悩むわ!」


「あっ、でも冒険者にはこれが良いかと思うんですよね」


 そういうと、アイテムボックスになっているボタンを見せる。カレンさんは驚いて固まってる。その様子をこたつから見ていたアルスさんも見に来た。


「カレン、どうした?」


「……アルス、これ見て」


「……ハル、相変わらずの規格外だな。これ作ったのハルだろう?」


「はい、そうですよ」


「さすが、ハルだな。しかし、アイテムボックスなんて作れるのか……」


「これは下級と中級の付与しかしてないんですよ。一応自重したんですよ?」


「ははっ、そうだな。一応自重したんだな、えらい!」


 そいういうと、アルスさんは頭をなでなでしてくれた。アイテムボックスはたまにダンジョンで落ちるだけだそうだ。容量が大きくて時間停止のはほとんどが国宝級なんだそう。


「ということは、もしかしたら材料を持ってくれば作って貰えるとか?」


「材料あるので、個別に作るなら作れますよ~」


「ハル、このアイテムボックスは上級の付与になると何が出来る?」


「容量無制限で時間停止まで出来ますよ」


「……上級の宝石を落とす魔物は?」


「火山のファイアードラゴンとか海底ダンジョンのシーブルードラゴンとかドラゴン系が上級の宝石を落としますね~」


「ハルちゃん……それを知ってるって事は倒した?」


「はい。どっちも倒したので上級の宝石持ってますよ~」


「……はぁ。さすがにドラゴンを倒すのはこの人数じゃ厳しすぎるな。中級のアイテムボックスを買っていくか」


「そうね。それでも十分すぎると思うわ」


 そういうと、アルスさんは中級のアイテムボックスが使えるボタンをお買い上げしてくれた。一応アルスさん達もダンジョンのドロップ品でアイテムボックスは持っているけれど、容量はそこまで大きくないし、時間もそのままだそう。


 その間ザックさんはクッキーとお茶を飲んでいて、こたつから出られなくなってました。そして、いつのまにかバニラを膝の上に乗せてこたつにのんびり入ってる。


「ハル、これはダメだ~……出られねぇ!」


「あははっ、このぽかぽかを知っちゃうと、出るとひやっとするんですよね」


「そうなのよね。さっき出る時もちょっと気合がいったわ!」


「確かに、おれも出にくかったなぁ……」


 その後も色々な人が来てくれるけれど、みんなこたつからなかなか出られなくなっていた。分かっていてこたつにしたから良いのですけどね?

 みんな出る時に困った表情になるのが、見ていてなんだか微笑ましいです。


 商業ギルドのマリーさんはギルマスと一緒に来てくれました。冒険者ギルドのサラさんも他の受付のお姉さんと一緒に来てくれて、やっぱりこたつから出られなくなってました。

 でも、みんなクッキーは選べなくて、全員分お持ち帰りが多かったです。


 そして、髪を少し綺麗にするのと、肌を少し綺麗にする髪留めなども大盛況です。作っても作ってもすぐになくなるくらいで、結構大変な騒ぎになりました。

 本当はそれ以上が出来るけれど、それくらいでちょうど良いんだと思います。みんな嬉しそうに付けてくれるので、色々な種類を作るようになりました。


 みんなが頭にトレーを乗せて持って行ってくれるのもとっても好評で、思ったようなもふもふカフェになりました。みんなも、なでなでもふもふしてくれるのがとっても嬉しいみたいで、毎日楽しそうに運んでくれてます。


 たまにお店を休んで冒険にも行きますが、毎日みんなと楽しく暮らしてます。

 この世界に来た時はどうなるかと思ったけれど、大事な家族が沢山出来て毎日とっても嬉しくて幸せです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る