クラーケンの討伐
手続きをして貰ったので、冒険者ギルドから出ようとした時、バタン!! とドアが開いて誰かが入って来た。
「大変だ!! クラーケンが出た!」
「えっ?! ギルマスを呼んできます!」
大変な事になったみたいだ。クラーケンって巨大なイカだっけ? 焼いたら何人前なんだろうとかのん気な事を考えてしまった。
さっきの受付のお姉さんがギルマスと一緒に階段を下りて来た。
「クラーケンが出たのか?! 場所と数を報告しろ!」
「場所は東門を出たすぐ目の前で、数は多すぎて分かりません!」
「なんだとっ?!」
うわぁ……そんなに何匹もいるの?!
「冒険者達は各自準備を頼む!」
まずは受付のお姉さんの所に行って、ポーション類を渡そう。
「あの、これ良ければ皆さんに使って貰ってください」
「ポーションをこんなに?!」
「作ったポーションなのでお気になさらず。それと、今日これから討伐なのですか?」
「今日はもう夜になってしまうから、明日だと思うわ。まだ小さいのに申し訳ないのだけれど、ぜひA級冒険者のハルさんには討伐に参加して貰いたいのだけど、どうかしら?」
「もちろん参加しますよ。味方に当たらなければ大き目の魔法を撃っても大丈夫ですか?」
「えぇ、もちろん大丈夫よ」
さて、明日の何時から討伐なのかを確認してからバングルのお部屋へ入ろうかな。
「クラーケンは陸には上がらないから明日の早朝5時にここに集まってくれ。以上解散!」
明日の朝5時に集合となると、結構早いね。私もお家に入って早めに寝よう。冒険者ギルドの外に出て、すぐ近くの路地に入る。それからバングルのお部屋に移動する。
「明日はクラーケン討伐だから、今日は早く寝ようね」
『そうくまね。どうやって倒すくま?』
「うん、まずサンダーレイン撃っちゃおうと思うんだよね。それから攻撃して貰えば倒しやすいんじゃないかな?」
『うん、それは倒すっていうぱんね』
『ハルが倒すぴょんね』
「いやいや……?」
『だってハル強いのぴよー!』
「えっと……倒しちゃうかなぁ?」
『くま! 多分倒すと思うけど、みんな怪我しなくて良いと思うくまよ?』
『そうぱんね。クラーケンは危ないから倒しちゃえばいいと思うぱん』
「そっか。じゃぁ、サンダーレイン撃っちゃうね。それでも倒せなかった時は頑張ろう!」
『くまっ!』
『ぴょん!』
『ぱん!』
『ぴよ!』
お夕飯をささっと食べて、お風呂に入ってみんなをもふもふしながらおやすみなさい。
朝5時集合なので、ささっとご飯を食べてバングルのお部屋を出て、冒険者ギルドへ向かう。冒険者ギルドに入ると、冒険者達が集まってきていた。
少し待つとギルマスが来て、まだクラーケンがいる事、これから討伐をする事、ポーションを持って行く事など必要事項を伝えた。
「よし、これからクラーケンの討伐に向かう! 東門の外に出たらまずは待機だ!」
私も他の冒険者達に続いて東門へ向かう。クラーケンがどれくらいの大きさで、数がどれくらいいるのか分からないけれど頑張ろう!
東門を出ると……目の前の海がクラーケンだらけだった。
(うわぁ……多すぎじゃない?? しかも1匹すっごく大きいのがいるし……)
昨日帰る時はいなかったのに、いきなり現れたよね? なんでだろう……すごく不思議だ。他の冒険者達もあまりの多さにドン引きしてるよ。
「うわっ、あの大きさのクラーケンってどうやって倒すんだ?!」
「海の中でどうやって戦うんだよ……」
そんな会話が聞こえている所で、ギルマスの号令が掛かった。
「これから討伐に入る! 負傷したら後ろに下がること!」
よし、冒険者達全員にシールドを掛けてから、まずはサンダーレインで減らそう!
「シールド!」
「サンダーレイン!!」
海に雷がいくつも落ちて、次々とクラーケン達に襲い掛かる。そして大きなクラーケンだけになった。
「ほら、大きいの倒しきれなかったよ?!」
『珍しいくまね~』
『ハル、ビリビリアタックしてくるぴょんよ~!』
「うん、お願いするね。でも気を付けてね」
『ライチもいくぴよー!』
「えっ、ライチも行くの?!」
『もちろんぴよ!』
「気を付けるんだよ?」
その間、ギルマスと冒険者達が唖然としていたのには全然気が付かなかった。ひぃろ達は気が付いていたみたいだけど……。
「タルト、他にもクラーケンいるかな?」
『今は、あの大きいのだけみたいぱんよ。ちょっとぼくも行ってくるぱん』
「そっか、ありがとう。ってタルトも行くの?!」
そういうとタルトも、すいすいーっと泳いでひぃろ達の方へ向かっていく。
ひぃろとベリーは、海の上をすいすいーっと泳いでクラーケンに近づいて行く。ベリーはどうやってびりびりアタックするのかと思ったら……巨大クラーケンに近づいた所でひぃろが土魔法で土台を作る。その上からベリーのびりびりアタックで、クラーケンに突撃している。
「びりびりアターック!!」
相変わらずひぃろとベリーの連携が凄い。そして気の抜ける技名を叫ぶベリーが可愛い。ベリーのびりびりアタックで巨大クラーケンはぽふん! とアイテムをドロップした。
(うん、全部倒したみたいだね~)
「おい、ハルだったか?」
「あっ、ギルマスさん。お疲れ様でした」
「いやいやいや……おかしいだろっ!?」
「ん? 何がでしょう?」
「そういえば……お前さんA級なんだったか?」
「はい、一応A級ですね」
(なんだか周りがざわざわっとしているけど、どうしたんだろう?)
「と、とりあえず、クラーケン討伐してくれてありがとうな。おかげで誰も怪我しなくて助かった」
「いえいえ、お役に立てて良かったです」
ギルマスさんとにこにこお話をしていたら、ライチが戻って来た。
『ハルー、タルトからでんごんぴよよー!』
「ん? ライチどうしたの?」
『かいていにダンジョンがあるって言ってるぴよ』
「なんだとっ?!」
「えぇぇ?! 海底にダンジョン?!」
『ダンジョンをこうりゃくしないとって言ってるぴよよー!』
「えぇー?!」
「海底ダンジョンだとっ?! そんなの攻略出来るわけないだろう?! もしかして、今倒したクラーケン達はダンジョンから溢れたのか?!」
「そうかもしれませんね。他の子達が帰って来ないと情報が分からないので、少し待ってくださいね」
えーっと、これは私が行かないとダメっぽいですね。私だったら海底歩けるし……うちの子達、そもそも息しないみたいだしね。
「えーっと、私が行ってきますよ?」
「はっ? いくらお前さんでも無理だろう?」
「水の中進めますし大丈夫ですよ。うちの子達も水の中でも全然動けるから大丈夫ですよ」
「はぁ……非常識すぎるぞ……」
「はう……す、すみません」
「いや……だが、状況的には凄く有難い! 行って貰えるとすごく助かる! 何も出来ずに街を追われる事を考えたら全然良い!」
ギルマスに商業ギルドにヘーゼルさんが来る事、食料を渡す約束をしている事を伝えたら、商業ギルドの人に馬車を持ってきて貰える事になった。そして、諸々の手続きもしてくれるというので、アイテムボックスから食料を出して、馬車に乗せて行く。
「すみませんが、よろしくお願いします」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。お預かりしますね」
そんな事をしていたら、ひぃろ達が帰って来た。
『ハル、ただいまくま~』
『ただいまぴょん~』
『ただいまぱん。ライチに聞いたぱん?』
「おかえりなさい。うん、聞いたよ。クラーケン達はそのダンジョンから溢れてたの?」
『そうぱんよ。だからダンジョンを攻略して減らさないとまだまだ溢れると思うぱん』
「やっぱりそうなんだね。そういえば遅かったけど、どうしたの?」
『アイテム拾ってきたぱんよ~』
「あぁ、そっか。サンダーレインで倒しちゃったから広い範囲にあったよね、ごめんね。大変だったでしょう、ありがとうね」
『大丈夫ぱんよ』
『大丈夫くまよ。それでハル、ぼくたちが行ってくるくま?』
「もちろん私も行くよ。ひぃろ達も一緒に行ってくれる?」
『くまっ!』
『もちろんぴょん!』
『ぱんっ!』
『いくぴよー!』
「ということで、ダンジョン行ってきますね」
「あ、あぁ……よろしく頼む。所で、装備はどうするんだ?」
「えっ? このままですよ?」
「行ってきますねー!」
『行ってくるくまー!』
『いってきますぴょん』
『いってきますぱん~』
『いってくるぴよー!』
全員にシールドを張る。私用には息が出来るように、外の海から空気を入れ替えられるようにしてずっと潜っていられるようにちゃんと思い浮かべてシールドを張る。
シールドもちゃんと張れた所で、歩いて海に入っていく。みんなに場所を教えて貰いながら海の中を歩いて行く。
***** その頃のギルマス達は…… ******
ハル達が海に潜って行った頃、冒険者達は茫然と海を見つめていた。
「えっと……俺達一体何を見たんだ?」
「そういえば、王都であんな女の子の話を聞いたな……」
「それにしても、クラーケンって本当にいた……のか?」
「夢……だったかな……?」
「よし、お前ら。とりあえず、配布したポーションはせめてもの礼で、そのまま持って行ってくれ。よし、解散! あっ、それと今見た物は口外禁止だ、いいなっ!」
「ギルマス……言っても誰も信じないって」
「まぁ、そうだろうが念のためだ」
帰ってきたら王国にS級にランクアップ申請しないとだな。というかあれは絶対ダンジョン攻略して帰ってくるはずだから申請しとくか。
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