もうすぐシュロマの街

 ヘーゼルさんと馬車と荷物についてお話を聞いてみよう。


「そうですね、確かに今とても困っております。先ほど、数体のオークに襲われて馬車を壊されてしまって、中の積み荷もダメになってしまったんです。あの、もしよろしければギルドカードを確認させて貰っても良いですか?」


「はい、どうぞ」


「こ、これは?! A級!? それにクラフティア国王様の紋章!? す、すみません、ありがとうございました」


 驚いたヘーゼルさんがギルドカードを返してくれた。これでちょっと安心して貰えたかな。


「あの、錬金スキルが使えるので、馬車を直しましょうか?」


「えぇっ!? な、直せるんですか!?」


「はい、大丈夫ですよ」


「それは、とても助かります。よろしくお願いします!」


 壊れた馬車の近くに行くと、木材も少し出して、他の壊れていない馬車を見てきちんと思い浮かべる。


「錬金!」


 馬車が光り、光が収まると馬車の修理が終わっていた。


「!!! す、すごいです!! ハルさん、ありがとうございます!!」


 馬車は直ったけれど、積み荷が大分ダメになってるね……。


「いえいえ、お役に立てて良かったです。でも積み荷は食べ物ですか?」


「そうですね、これだとまた王都に戻らないとですね……シュロマの街とパルムの街のみなさんに食材を届けに行く所だったんですが、足りなそうですね」


 それは街のみなさん、とても心待ちにしていると思う。私のアイテムボックスの中にある大量の食材を分けてあげたらいいかな?


「それは大変ですね。だったら、私が持っている食材を持って行きますか?」


「えっ?! いや、でもそんな大量には持っていないでしょう?」


「えっと、大量にありますよ?」


「はいっ?! あっ、さっき木材も出してましたし、もしかしてアイテムボックス持ちですか! それでしたら少し買い取らせて頂いてよろしいですか?」


「うーん、でもそれだとヘーゼルさんがかなり損してしまいませんか?」


「いえいえ、それは大丈夫ですよ。私はクラフティア王国から運んで来ているので、またそちらへ戻る事を考えたら、全然損ではないんですよ。それに馬車を直して頂いた代金もありますから」


「わぁ、クラフティア王国の方なのですね。私もクラフティア王国からランタール王国に旅しに来ているんです。尚更、私の食材を使って下さい! そしてシュロマやパルムの街の方に届けてあげてください。それと、馬車を直したのは気にしないでください。困った時はお互い様ですよ~」


「ハルさん、ありがとうございます」


「いえいえ。私達もパルムまで行くので、街に着いたら出しましょうか?」


「そ、それはとても助かりますが、良いのですか?」


「はい、もちろんです。私達もパルムまで行きますし、大丈夫ですよ」


 クラフティア王国の方と聞いたらお手伝いしたくなった。パルムは港町だけど同じ食材があるか分からないから良いかな。シュロマとパルムの街に着いたら食材を渡しに行く事になった。


 本当はお金要らないんだけど、商人さんにそうも言えないし……困ったね。私としてはみんなが大量に採ってくれた食材を、多くの人が喜んで食べてくれたらそれで満足なんだけどね。


 とりあえず、一度大量にある食材をヘーゼルさんに見せてみると、十分だと言うのでシュロマとパルムの街で渡す事になった。どうせ同じ街に行くので、新鮮なまま食べて貰えた方が嬉しい。



 ヘーゼルさん達と別れて、私達は少し進んでからバングルのお部屋に入ってお茶にする。


「みんな、お疲れ様」


『ハルもお疲れ様くまよ』


「ひぃろとタルトもありがとうね」


『いいのぱんよ~』


「アイスフルーツティーを入れておいたから一緒に飲もうね」


『やったくま~』

『やったぱん!』

『早く飲みたいぴょん~』

『たのしみぴよ!』


 みんなに準備をしてあげて、じゃがいもとハーブ塩を出してポテトチップスを錬金する。甘い飲み物にはしょっぱいものが良いよね。


『どっちも美味しいくま~』

『美味しいぴょん!』

『美味しいぱん~』

『おかわりぴよー!』 


 みんなでお茶をした後は、またシュロマの街を目指して森の中を採取しながら進んで行く。


 1時間くらい歩いた所で、シュロマの街が見えてきた。でも、今日はバングルのお部屋に泊まってしまった方が良さそうかな?


「今日はバングルのお部屋でお泊りして、明日シュロマの街へ入ろうか?」


『そうするくま~』

『あっ、それはいいぴょんね』

『ハルのご飯食べたいぱん~』

『それがいいぴよ!』


 みんなもそれで良いというので、お部屋に入ってお夕飯の準備をする。今日はみんなの好きな物を焼く鉄板焼きにしよう。テーブルの上にコンロを出して、鉄板を置いて準備をする。


 みんなにもクリーンを掛けてテーブルの椅子に座らせてあげて、お茶の準備もしてみんなで食べ始める。


 次から次へと、みんなの食べたい物を焼いていく。これはこれで楽しいし、好きな物を食べて貰えるのでみんなにこにこで嬉しそうだ。


 私も色々焼いて食べた。みんなもお腹いっぱい食べたので、食後のデザートはやめて甘めのお茶だけにする。


「明日はシュロマの街に入れるね。ヘーゼルさんと待ち合わせしている商業ギルドに行こうね」


『その後はどうするくま?』


「どうしようか?」


『依頼見てみたいぴょん!』


『ライチも依頼行きたいぴよー!』


「あっ、それは良いね」 


『商業ギルドの後、冒険者ギルドくまね~』


「そうだね」


 そういえば、今日はお風呂がないからクリーンだね。みんなのブラシはどうやって作ろうかな。日本にいた時はペットにはスリッカーブラシとか動物の毛のブラシを使うけれど、スライムはどうなんだろう?


 でも、痛くないのがいいよね。やっぱり毛を使ったブラシが良いかなぁ。アイテムボックスの中にある毛皮を見てみると、少し硬めのボアの毛皮があったのでそれを使ってみよう。後は木を準備して良くブラシを思い浮かべる。


「錬金!」


 材料が光り、光が収まるとひぃろ達用ブラシが出来ていた。これでクリーンを掛けてからブラッシングしてあげてみよう!


『ハル、何を作ったくま?』


「これは、みんなの身体をふわふわにしてくれる……はずのブラシだよ!」


 みんなの目がきゅぴーん! と光った。私がふわふわが好きなのよく知っているものね。


『ハル、やってくまー!』

『私もぴょん!』

『ぼくもぱん~!』

『ライチもぴよー!』


「クリーンを掛けてからにしようね」


 みんなにクリーンを掛けてこたつに入る。まずはひぃろからブラッシングしていく。


(こ、これはなんて素敵!!)


『ふふ、ハルが嬉しそうな顔になって来たぴょん!』


「わわっ、ベリーったら見ちゃだめ~!」


『本当ぱん!』

『なにぴよ?』


 ブラッシングをしていると、ひぃろがどんどんふわっふわになっていく。やっぱりブラッシングってすごい! どうして今まで作らなかったのっ?!


『どうくま? ぼくふわふわくま?』


「うんっ! ふわっふわで可愛いよ!」


『えへへ、嬉しいくま~』


 次はベリーをブラッシングする。ベリーは長いお耳もあるから、優しく丁寧にブラッシングしてあげる。


(ふふふ、ベリーもふわふわになってきた!)


 ブラッシングが終わるとふわっふわのベリーになった。


『ハル、ありがとうぴょん!』


 次はタルトをブラッシングして、最後にライチをブラッシングをしてあげると……みんなふわっふわのもふっもふになった。


(ブラッシングパワー恐るべし!)


『ふふふ、行くくまー!』

『抱っこぴょん~!』

『むぎゅむぎゅしちゃうぱん~』

『すりすりしちゃうぴよー!』


「きゃー! ふわふわもふもふだぁ!」


(ふふっ、気持ち良すぎる~)


 その後、ベッドに入ってもみんながもふもふしてくれるので、気持ち良く寝てしまった。

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