第54話 飛ぶテーブルから飛ぶこたつへ

 ひぃろ達に安全な場所に誘導してもらってから、お昼ご飯を作る準備をする。テーブルは毛皮も敷いてあるから、飛ぶテーブルを出す。板も付けたから座っても濡れないし、冷えもしないので助かる。


 今日のお昼ご飯は久しぶりにスコーンにしようかな。材料を準備してさくっと錬金して作っちゃう。後、生クリームも作ってジャムはアイテムボックスに入っているのを出してあげる。


「今日はスコーンだよ。生クリームとジャムを付けて食べようね。お茶はアイスティーにしたよ」


 みんなでご挨拶をして食べ始める。いつ食べてもスコーンは美味しいなぁ。


『スコーンのさくっとしたのがいいくま』


『紅茶と一緒に食べるの大好きぴょん』


『色々なジャムがあるから楽しいぱん』


「この後はどうしようか?」


『くふふ、このまま飛びたいくまー』


『あっ! それいいぴょん!』


『飛びたいぱん~』


「ふふ、それはいいね。ちょっと高い所を飛んでみようか」


『やったくまー』

『行くぴょん!』

『行くぱん~』


 テーブルの上の食べ終わった食器にクリーンを掛けて、アイテムボックスに仕舞っておく。温かい紅茶を入れなおして、みんなの前に置いてあげてから飛ぶテーブルを浮かせる。今度は木の上の方まで高く浮かせる。


「わぁ、高く浮いたね~」


『きゃー、楽しいくまー』

『凄いぴょん!』

『ハル、とっても高くて楽しいぱん~』


 そのまま少し早く飛ばしてみると……ダメだった。


「わわっ、風がっ!」


 急いでゆっくりにする。


(び、びっくりした……そうだよね、風が強く寒くなるの分かるはずなのに浮かれてた……)


「これは困ったね……風が強くなるし、寒いしどうしようかな」


 ベリーが突然消えたと思ったら、獣魔部屋の毛布を持ってきてくれた。


『ハル、これ使うぴょん』


「わっ、ベリーありがとう~」


 膝に掛けようとして少し考える。これ、テーブルの上に掛けたらこたつみたいにならない?寒い時でも温かいの良いね。


 後は、毛布の上に乗せるテーブルと風を軽減させないと……。テーブルを作った時に風の魔石を使っているから、そのまま錬金スキルで回りに風のシールドを張れないかな。一度降りてから試してみよう。


きょろきょろと降りられる所を探したら、少し先に開けた所があったのでそこに降りてみた。


「タルト、ここ危なくないかな?」


『大丈夫ぱん~』


「ありがとう」


 とりあえず、こたつ仕様にする為に毛布の上に乗せるテーブルを作る。後は、今作っている飛ぶテーブルに風の膜で風を防げるように思い浮かべて錬金してみる。


 光ったからちゃんと出来たかな。ローテーブルに毛布を乗せて、さらにテーブルを置いてこたつにしてみた。


「よし、これでまた試してみよう。みんな乗ってね~」


『くまっ!』

『ぴょん!』

『ぱん!』


 上の方までまずは浮いてから、スピードを上げてみると、風の膜が出来たのが分かった。おかげで、スピードを出しても風で飛ばされそうにならなくなった。無事に出来て良かった。


『ハル、凄いくま~!』

『飛ばされないぴょん』

『さすがハルだぱん!』


「これでスピードを出しても大丈夫だね、でも寒いね。ベリーが毛布を貸してくれたけれど、もう少し温かくしたいね」


 こたつみたいに温かく出来ないかなぁ。この飛ぶテーブル……飛ぶこたつ? を本当のこたつみたいに温かくするには火の魔石とか必要な気がするなぁ。


「ねぇ、火の魔石を持っている魔物って何がいるかな?」


『火の魔石くま? うーん……サラマンダーくま?』


『ファイアーゴーレムぴょん?』


『ファイアードラゴンぱん?』


(いやいやいや……ドラゴンは倒せないかと?!)


「うーん……なんだか強そうなのばかりだね。しかもどこにいるんだろう?」


 火の魔石を確保するのが難しそうだ。どこかで火の魔石を手に入れられたらこたつにしよう!


 そんな事を話していたら、もう街に着いた。さすがに空を飛ぶと早くていいね。ただ、鑑定で色々探せないのが残念な所だ。行く時は低い位置を飛んで、鑑定を出来るようにして移動して、帰りはささっと帰ってくるとかなら良いかな。でもそれも木が多いと出来ないし困ったなぁ。


 少し離れた所に降りて、飛ぶこたつをアイテムボックスに仕舞ってから、歩いて西門へ行く。アイテムボックスからギルドカードを出して、確認してもらい街に入る。


 街に入ったら、冒険者ギルドへ向かって歩いて行く。冒険者ギルドに着いたら、まずは買い取りカウンターで討伐確認をしてもらう。


「クレアさん、ただいまです。これお願いします」


「ハルちゃん達、お帰りなさい。処理するから少し待っていてね」


「はい、お願いします」


「無事に連根の討伐終わったのね、お疲れ様でした。こちらもお返ししますね」


「ありがとうございます」


 ギルドカードをアイテムボックスに仕舞ってから、冒険者ギルドを出る。少し街を見て回ってから宿に帰る事にする。どこかに魔石を売っている場所があると良いのだけど、どうかなぁ。


 少し歩いていると、雑貨屋さんがあったので入ってみる。お店の人に魔石の事を聞いてみよう。


「こんにちは、少しお聞きしても良いですか?」


「こんにちは」


「火の魔石が欲しいのですが、ここら辺でどこに売っているか分かりますか?」


「火の魔石は難しいですね。うちでも魔石は扱っていますが、火の魔石は手に入らないのですよ。他の扱っているお店も多分難しいですね。王都に魔道具のお店があるので、そこにもしかしたらあるかもしれないですが……」


「そうなのですね、ありがとうございます」


「火の魔石は、なかなか手に入らないから難しいんですよね」


「やっぱりなかなか手に入らないのですね、ありがとうございました」


 うーん……やっぱり火の魔石はなかなか手に入らないみたいだ。こたつにしたかったのに残念。きっとひぃろ達も気に入ると思うのだよね。どこかで情報を手に入れたら倒しに行ってみようかな。


 そろそろ宿に帰ろう。宿について部屋に入るとクリーンを掛けてのんびりする。

 地図を出して考えてみる。どこなら火の魔石が手に入るかなぁ。


「ねぇ、火の魔石が手に入りそうなのはどこら辺だろう?」


『くま~、分からないくま~』

『分からないぴょん』

『ぼくも分からないぱん~』


「そっかぁ。教えてくれてありがとうね。王都へ戻ったら冒険者ギルドと商業ギルドで聞いてみようかな」


『それが良さそうくま~』

『それがいいぴょん!』

『それが良いと思うぱん。それとお腹空いたぱん~』


「あっ、そうだね。そろそろ食堂へ行こうね」


 みんなで食堂へ行ってお夕飯を食べる。今日もみんなで仲良く美味しく完食した。その後部屋に戻って明日の話をする。


「明日は次の街に行こうか?」


『そうくまね~』


「南の森を見ながらゆっくり進もうか。何もなさそうだったら早めに飛んでも良いね」


『それがいいぴょん!』

『空飛ぶの楽しかったから、とっても楽しみぱん~』


 明日はフォンダンの街へ向かおう。飛ぶこたつのおかげで移動が速くなって嬉しい。テントで寝るのも楽しいけれど、街でのんびり泊まるのはやっぱり疲れがちゃんと取れる気がする。


「むぎゅむぎゅしたい人~?」

『くまっ!』

『ぴょん!』

『ぱんっ!』


 見事に全員でした。なので、全員むぎゅーっと抱っこしてすりすりもふもふする。みんな普段はとっても頼りになるのに、こういう時は素直に来てくれるからとても嬉しい。

 みんなと沢山むぎゅむぎゅして遊んだ後は仲良く一緒に寝る。明日も楽しみだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る