第53話 飛ぶテーブルの試作

 お昼を食べ終わったので、お片付けをして飛ぶトレントをひぃろに探してもらう。


 そういえば、ベリーのシールドに雷を纏わせているけれど、他の属性も纏わせられるのでは? ウィンドカッターとかウォーターカッターとか纏わせたらもっと強そうだよね。

 あっ、でも飛ぶトレントには届かないからちょっと難しいかな。今度出来そうな時に試してみよう。


 その後、飛ぶトレントを5体倒した所で良い時間になったので、街へ向かう。街に着いてまずは冒険者ギルドへ向かう。

 冒険者ギルドの買い取りカウンターで討伐確認をして貰って、依頼分の飛ぶトレントの素材を納品した。


「クレアさん、ただいまです。これをお願いします」


 買い取りカウンターで出して貰った討伐記録とギルドカードをクレアさんに渡した。


「ハルちゃん達、お帰りなさい。手続きするわね。はい、ギルドカードを返すわ、お疲れ様でした」


「はい、ありがとうございました」


 冒険者ギルドを出て、宿に向かう。宿についたらもうお夕飯の時間になりそうだったので、一度部屋に戻りみんなにクリーンを掛けてから食堂へ向かう。


 今日のお夕飯はボアのトマト煮込み、サラダ、パンだった。ここのご飯もとても美味しかったので、みんなで全部綺麗に食べ終わった。

 食べ終わった後は、部屋に戻ってみんなで飛ぶ物の相談をする。


「どんなのが飛ぶと良いかなぁ?」


『ハルが座ってられるといいと思うくま』


「そうだね、飛んでいる間座っていられると助かるね」


『お茶出来たら素敵ぴょん!』


「わぁ、それはいいね。移動しながらお茶出来るって素敵だね」


『それはとっても良いぱん~』


 お茶が出来るって事はテーブルは必須だね。椅子じゃなくて床に座るように座っていられると、ひぃろ達とものんびり遊びながら移動出来るかな。

 あっ!低いテーブルにしたら座って移動出来て、お茶も出来るね。テーブルの脚が付いている物もそのまま浮くように錬金したら出来るかな? でも、その前に材料が何だろう?


 空飛ぶテーブル:材料(飛ぶトレントの木材、風の魔石、床素材)


 風の魔石? そんなの聞いたことないな。魔石にも属性ってあるのかな? 風の魔石を思い浮かべてアイテムボックスを調べてみると……あった! 鑑定で調べてみると、ワイバーンの魔石だった。確かにワイバーンは空飛んでいたものね。


 座るのに良さそうな物何かないか、アイテムボックスの中身を探してみると毛皮が残っていた。それと飛ぶトレントの木材を出して、ローテーブルを思い浮かべて、テーブルの足が付いている物も一緒に浮かぶように思い浮かべる。


「錬金!」


 材料が光って、光が収まると、毛皮の上にローテーブルが出来ていた。この毛皮部分に座って移動出来るかな。さすがにここでは試せないので、明日試してみよう。


「一応試作品が出来たから、今日はもう寝ようか。明日何か依頼を受けてから試してみようね」


『ハル、凄いくま~』

『飛ぶの楽しみぴょん!』

『とっても楽しみぱん~』


「明日試すのがとっても楽しみだね」


 明日の為に、今日はもう寝る事にした。みんなでむぎゅむぎゅ~っとして眠りに就いた。


 朝になって、今日はみんなすっきり目が覚めた。みんなも楽しみで仕方なかったみたいだ。朝ごはんを食べてから早速冒険者ギルドへ行ってみる。


「クレアさん、おはようございます」


「あら、ハルちゃん達おはよう」


「西の森の依頼って何かありますか?」


「西の森だと……あっ、これなんてどうかしら。この連根の討伐と採取なんだけど、どうかしら?」


「連根? この漢字間違ってませんか? 食べられるんですか?」


「ん? 間違えてないわよ。連根はシャキシャキして美味しいんだけど、討伐がちょっと大変なのよね」


(えっ?! 蓮根じゃなくて連根? 討伐? 大変????)


「なんだかよく分からないけれど、行ってみますね」


「場所はここら辺よ」


 クレアさんが地図を開いて見せてくれた。少し距離はあるけれど、一日で帰ってこられそうだ。


「はい、行ってきますね」


「えぇ、気を付けて行ってきてね」


 冒険者ギルドを出て、西門へ向かう。西門を出て少し行ったところで、飛ぶテーブルを出して試してみる事にした。


「まずはこの毛皮の上に座ってみようか。ちゃんと浮くと良いのだけど……」


 みんなも毛皮に乗って準備万端だ。


(どうやって飛ぶのだろう? うーん……念じてみる?)


 まずは浮いて~!! と念じてみる……その瞬間少し浮いた気がして、きょろきょろと周りを見回してみる。


『浮いたくま~』

『ハル、凄いぴょん!』

『もっと浮かせてほしいぱん!』


 もう少し浮いている所を想像してみると、さらに浮いた。


(おぉ、楽しい。なるほど、やっぱり私の意志の力で浮くのだね。動くのもきっとそうだろう)


 落ちても危なくないように、50cmほど浮かせて動かしてみると、すーっと動いた!


「これは、楽しい!」


『ハル、もっと動いてくまー』

『楽しいぴょん!』

『もっと早くしてぱん~』


 タルトの言うように、もう少し早くしてみる。結構スピードも出せそうで、移動が速く、楽になるね。


『きゃー』

『楽しいぴょん~』

『コロコロするぱん~』


 毛皮なので、下がふにゃふにゃして乗りにくい……そしてひぃろ達が転がって落ちないかひやひやする。速度をゆっくりにして、改良を考える。


 みんなが落ちないようにしないと危ないわ。下に板を置くかな……でもちょっと痛そうだ。板の上に毛皮かなぁ。ずっと座っていると痛いかな? どうしたらいいかなぁ。


 あっ! 綿があったら板と毛皮の間に入れたら柔らかいかな。端にはクッションで転がり落ちないようにしたら完璧じゃない?

 一度降りて、せめて板だけでも作る事にする。飛ぶトレントの木材を出して、毛皮を張り付けて端っこに落ちないように段差を付けた物を思い浮かべる。


「錬金!」


 とりあえず、今はこれでいいかな。もう一度みんなで乗って試してみよう。

 今度はひぃろ達が転がらなかった。すぐお尻が痛くなりそうだけど、今日はこれで行く事にした。毛皮があるので、温かいし、硬さは少し和らいでいるから、長時間じゃなければ大丈夫そうだ。


「これなら転がり落ちないから少しスピードも出せそうだね」


『これならお茶出来るぴょん!』


「そうだね~。温かい紅茶いれようか」


『やったぴょん!』


 みんなで温かい紅茶とクッキーでお茶をしながら、依頼の場所まで向かう。ゆっくり飛んでいても、歩くよりは全然早いし、お茶しながら進めるだなんて幸せすぎる。帰りは高い所を飛んでみようかな。


 みんなでお茶をしていると、泉についた。ここが連根の討伐? 場所みたいだ。さっそくみんなにシールドを掛けてから近づいてみる。


 ヒュン! ビシビシビシッ!!


「きゃっ!」


 何かが飛んで来て、シールドにビシビシ当たっている。


(何これ?!)


『ハル、大丈夫くま?! アースウォールくま!』


「ひぃろ、ありがとう~。……今のは何だったんだろう」


『あれは連根の攻撃くま。種を飛ばして来ているのくまよ』


「種だったんだ……」


 そう話している間も、アースウォールにビシビシ種が当たっている。もしかして種を連射してくるから連根ってこと?!


 少しして種が当たる音が収まったと思ったら、ベリーが帰って来た。


『ハル~、採って来たぴょん』


「えぇぇぇぇ!? ベリーいつのまに!?」


『ハル達が攻撃を引き付けてくれている間に、泉に潜って採って来たぴょん』


(ベリーって泳げるんだ……スライムだからかな?)


「ベリー、ありがとう。種が飛んで来てびっくりしたよ」


『まだ連根いっぱいあるから、ひぃろとタルトも手伝ってぴょん』


『分かったくまー』

『分かったぱん』


「え、えと……お願いします」


『ハルは、シールド張って待っててぴょん』


 みんなが連根を取りに行ってくれている間に、ふと周りをみると連根の種を見つけた。もしかしたら錬金で連根作れないかな? 鑑定で見てみると、思った通り錬金で作れる事が分かった。


 シールドを広めに張って、種を拾っていく。レンコンだったらお料理に沢山使えるからいっぱい欲しいな。きんぴら、レンコンチップス、唐揚げ、摺り下ろしてももちもちして美味しい。


 私が拾っている間に、ひぃろ達は沢山連根を採ってきてくれた。さっき沢山種を投げられたので全部だったみたいだ。みんなが怪我しなくて良かった。


『ただいまくまー』

『ただいまぴょん』

『ただいまぱん~』


「みんな、おかえりなさい。採ってきてくれてありがとう」


 みんなにクリーンを掛けてあげてから、採ってきてくれた連根をアイテムボックスに仕舞っていく。本当に沢山あった。


 アイテムボックスに仕舞った後は、少し離れて安全な所まで戻ってからお昼ご飯にしよう。

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