第46話 北の山での依頼2

 テントで目が覚めると、やっぱりみんなテントの中に散らばっていた。昨日むぎゅっとして寝たと思うんだけど、もしかして……私の寝相が悪いんだろうか?


 ま、まぁ……それは良いとして起きて着替えてから、テントの外にそおっと出てクリーンを掛けた。


 今日のフードはタルトと同じパンダ耳付きフードだ。起きたらどんな反応するかな。


 それから朝ごはんを作る。今日のメニューは何にしようかな。ベーコンエッグ、昨日のスープ、パンで良いかな。後、お昼ご飯用に錬金でかぼちゃコロッケを作ってパンに挟んだ物をアイテムボックスに入れておいた。みんな沢山食べるので、多めに作っておいた。


 そろそろひぃろ達を起こそうとテントの方を向くと……涎が垂れそうな表情でじーっと見つめられていた。


(び、びっくりした。せめて声掛けて……)


『お腹空いたくまー』

『お腹すいたぴょん!』

『ハルがぼくと一緒で嬉しいぱん~。でもお腹ペコペコなのぱん』


「えっと、みんなおはよう。朝ごはんにしようね。タルトと今日はお揃いだね」


 みんなにクリーンを掛けて椅子に座らせてあげると、朝ごはんをみんなの前に出してあげて、ご挨拶をして食べ始める。


『ハル、さっきの錬金してたのはどこくま?』


『それも食べたいぴょん!』


『食べたいぱん~』


「えっと、錬金で作っていたのはお昼ご飯用だから、お昼に食べようね」


『くまっ!?』

『ぴょん!?』

『ぱんっ!?』


(そ、そんなにショック受けなくても……)


「えっと、お昼ご飯だよ?」


(あぁ……しょんぼりしちゃった……)


「え、えっと……1個ずつ食べる? でもまだ食べられるの?」


『食べるくま~!』

『食べるぴょん~!』

『食べるぱん~!』


(ダメだ、この子達に勝てる気がしない……)


 仕方ないので、1個ずつ出してあげた。喜んでいるのは嬉しいけれど、悲しそうなのは耐えられなかった。お昼はあるものを出せば良いしね。


 朝ご飯を食べた後は、お片付けをしてまた採取をしながら山を登っていく。今日は依頼品が見つかるといいな。


 登り始めて1時間ちょっと経った頃、やっとタルルの木を見つけた。かなり大きな木だった。確かに買ったタルルの木も大きかったものね。周りを見るとタルルの木がいくつも見えたので、安心して木を切ろう。

 大きな木だったので、予備も含めて2本だけ切らせて貰った。


『タルルの木があって良かったくまね~』


「本当だね。これで錬金ボックスは作れるね」


『後は魔力回復草だぴょん』


『どこにあるか難しいぱん』


「もう少し登ってみようか」


『分かったくま~』

『分かったぴょん』

『行ってみるぱん~』


 またひぃろ達に先導してもらい、私は鑑定を発動させて探しながら歩いて行く。なかなか魔力回復草は見当たらない。だけど、治癒草は所々に生えているので、採取しながら進んで行く。


 少し進むとまた景色が変わった。木が少なくなってきた。キョロキョロと見回していると、鑑定の矢印を見つけた。近付いてみると、魔力回復草だった。


「あったー!」


『それが、魔力回復草くまね。覚えたくま!』


 みんなで魔力回復草を探すと、さらに少し進んだ所に沢山生えていた。私の持っておく分も大分採取出来て良かった。

 私はひぃろとベリーが強いからあんまり魔力を使わないけれど、何かあった時用に持っておきたい。


『ハル、伏せてぱん!!』


 タルトの声に驚いて急いで伏せると、頭の上を何かが横切った。みんなにシールドを張り直してから見てみると、大きなドラゴン? だった。


「ええぇぇっ!! あれなに?」


『あれはワイバーンくま!』


『あれは美味しいって聞いた事があるぱん!』


『お肉! 倒すぴょん!!』


(ベリー、お肉じゃないよ。ワイバーンね)


 ベリーのシールドに強力な雷を纏わせといたけれど、きっと届かない。あの翼をどうにか出来ないかな……。あっ! あの翼を凍らせられないかな。


「ベリー、あの翼を凍らせられるか試すから、落ちるようだったらお願いね」


『分かったぴょん!』


「アイス!!」


 パキン! と音がして翼が凍ってワイバーンが落ちてきた。落ちてきた所にベリーのびりびりアタックでワイバーンが倒せたみたいだ。ぽふんとドロップが沢山落ちてきた。


「なんだかドロップが沢山なんだけど……こんなに出るんだね」


『ハル、普通はこんなに出ないと思うくまよ?』


「そうなんだ……あっ! そういえば運がすごく良かった気がする。それでかな」


『それだと思うぴょん』


『でも、おかげでお肉がいっぱい嬉しいぱん!』


 ドロップで魔石、皮、爪、牙、お肉がいっぱいあった。大量のドロップ品をアイテムボックスに仕舞った。皮とかはいらないから買い取りしてもらおう。


『ハル、まずいくま! ワイバーンがまた来るくま! 後3体くまー!』


「えぇぇぇ?!」


『ハル、今のまたやるぴょん!』


『ぼくは邪魔にならないように、お部屋に行ってるぱん』


「そうだね、危ないからお部屋にいてね」


 またベリーに強力な雷を纏わせて、私が次々とワイバーンを落としていくとベリーが、びりびりアタックで倒してくれる。いっぱい来てびっくりしたよ。でも美味しいお肉が大量でこれはこれで嬉しいね。


 アイテムは全部アイテムボックスに仕舞って、魔力回復草を採取して早く山を下りよう。

 魔力回復草がどうしてなかなかないのかと思ったら、高所でしか育たない、ドラゴン、ワイバーンの好物だそうだ。そんな事知らなかったからびっくりだ。



「よし、魔力回復草の採取終わったから、急いで戻ろう!」


『分かったくま!』

『分かったぴょん!』


「タルトに終わった事だけ教えてあげて貰っていいかな?」

『分かったくまー』

『分かったぴょん』


『みんな、怪我ないぱん?』


「うん、大丈夫だよ。ありがとうね」


 少し山を下りてから安全な所まで行ってから、お昼の準備をする事にした。


「魔力回復草はドラゴンとワイバーンの好物だったんだって。だから襲われたんだね~」


『あれはびっくりしたくま』


『ほんとだぴょん』


『怖かったぱん』


「でも、みんなのおかげでいっぱい採れたよ、ありがとうね」


 山を少し下りた所で、安全な場所に着いたので、お昼ご飯にする。今日は朝に作っておいたから簡単だ。土魔法で椅子とテーブルを作ってからみんなを乗せてあげると、朝に作っておいたかぼちゃコロッケパンをそれぞれの前に出してあげた。

 お茶は温かい紅茶に蜂蜜とミルクを入れたハニーミルクティーにした。


『このコロッケパンあまくって美味しいくま~』


『コロッケパンもミルクティーも美味しいぴょん』


『お代わりぱん!』


「はい、どうぞ」


 きっとひぃろとベリーも食べるので、それぞれお代わりを乗せてあげる。

 食べ終わったらお片付けをして、街へ向かう。今日中に帰れるように、少し急ぎ足で歩く。


 歩きながらもう1つの錬金ボックスは何が作れるようにしようかな。コンソメ、ケチャップ、ソース、後は、顆粒出汁の素も作れるようにしておこうかな。王都だから、もしかしたら材料が手に入るかもしれないし。


 そんな事を考えながら歩いていたら、王都に着いた。今日中に帰れて良かった。まずは冒険者ギルドに行こう。買い取りカウンターで買い取りと依頼のチェックをしてもらう。


「こんにちは、買い取りお願いします」


「なっ!? こ、これはワイバーンか! しかも4体も?!」


「はい、4体倒してきました」


「肉も買い取りしていいか?」


「半分くらいなら大丈夫です」


「ありがとな、ワイバーンのお肉も美味しいと評判だから助かる。魔力回復草も治癒草も沢山あって助かるよ。はいよ、これを受付に出してな」


「はい、ありがとうございます」


 用紙を受け取ると受付のリルさんの所へ向かう。


「リルさん、ただいまです」


「ハルちゃん達お帰りなさい。怪我はしてないかしら?」


「はい、大丈夫です。これをお願いします」


「えぇ?! ワイバーン4体も倒したの!? え~っと、確か依頼があったから、それも達成にしておくわね。でも無理しちゃダメよ?」


「はい、ありがとうございます」


 冒険者ギルドを出ると、宿に向かう。一旦部屋に戻りクリーンを掛けてから、食堂へ向かう。


「ハルちゃん、お帰りなさい。怪我はないかしら?」


「ステラさん、ただいまです。大丈夫ですよ~、材料も取ってこられました」


「ふふ、それは楽しみね。他にも調味料があるみたいだし、とっても楽しみだわ」


「明日にでも作る予定です。また裏をお借りするかもです」


「うん、いつでも大丈夫よ~」


 ステラさんにご飯を持ってきてもらい、みんなで仲良く食べた。今日のお夕飯はスパイス塩で焼いたウルフステーキだった。今日はお醤油のドレッシングで美味しかった。


 今日は疲れたので、お風呂にささっと入って、ひぃろ達とすりすりしていたらすぐに寝ていた。

 明日は錬金ボックスを作ろう。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る