第8話 初めての依頼2

 お昼ご飯を食べ終えた私達は、あまり奥に行き過ぎないように気をつけながら、また採取と討伐に向かった。


 そういえば、お料理に使えそうなハーブはないのかな。薬草とお料理に使えるハーブを見つけられるように鑑定を掛けなおすと結構そこら中にあった。


「ひぃろ、お料理にも使えるハーブがあるからそれも採取していくね」


『お料理くま! それは大事くま、ぜひ採取するくま!』


「ふふ、ひぃろは食いしん坊さんになったね。そんなに料理を喜んでくれると作り甲斐があるよ」


『くま~。だって宿のご飯も美味しいけど、ハルのご飯はもっともっと美味しいのくま~』


 いろんなハーブも採取しながら進んで行くとひぃろが突然止まった。


『ハル、まずいくま!』


「ん?どうしたの?」


『なんかウルフの群れがいるくま。しかも1匹は大きいっぽいくま! 気づかれないうちに下がるくま!』


「う、うん、分かったよ!」


 そっとゆっくり下がっていく。まだ気づかれていないからこのまま逃げられるといいのだけど。


『ハル! 気づかれたくま!』


「えーと、どうしようか……。うーん、倒せるかな……よし、シールドもあるし頑張ろう!」


『ハル、少しぼくが足止めするからその間に倒してくま』


「うん、頑張る!」


 まずはシールドを張る。それからいくつかエアーカッターを出せる準備をしていると、ウルフが見えた。


「えっ、でかっ!」


 群れの中の1匹が、普通のウルフの2倍くらいありそうだ。これは絶対ボスだよね。普通のウルフは15匹ほどいた。


「エアーカッター!」


 まずは準備していたエアーカッターでウルフを5匹減らした。隣でひぃろが土魔法で5匹囲んで出られないようにしてくれていた。


 もう1回! それぞれのウルフの首を狙ってエアーカッター5発分の準備をする。


「エアーカッター!」


「ひぃろ、囲んでいるの解除していいよ。エアーカッター!」


 残りはボスだけになった。このボスどうやって倒そうかな。自動追尾出来そうだよね、さっきウルフに出来ていた気がするし。さっきよりもさらに威力を増やしてボスの首を狙って追尾できるように思い浮かべていく。


「エアーカッター!」


きゃうん!


「ふぅ……なんとか倒せたみたいだね」


『ハル、強いくま! ブラックウルフが余裕で倒せたくま~』


「ブラックウルフ?」


『そうくま。群れのボスなのくま』


「やっぱりボスだよね……かなり大きかったし。倒せて良かったね。」


 倒した後にドロップしていたのは、黒くて綺麗な宝石、お肉、毛皮。ウルフの毛皮とお肉も沢山。ブラックウルフのお肉は普通のウルフよりも美味しいのかな。食べ比べしてみたいね。


「ひぃろ、なんか綺麗な宝石があるけど何かな?」


『それは魔石くま』


「魔石?」


『強い個体には魔石が出来るくま。高く売れるらしいくま~』


「そうなんだ、高く売れるなら売っちゃおう」


 ウルフも沢山倒して討伐依頼もこなせているから、そろそろ帰ろうかな。


「ひぃろ、そろそろ街に向かおうか。途中で開けた所があったら、そこでおやつ食べよう」


『食べたいくま~。昨日のクッキー美味しかったのくま。早く行くくま~!』


 ぽよんぽよんと急いで跳ねて行くひぃろ。ぷるぷる震えるひぃろの後ろ姿が可愛い。ついにこにこして追いかけちゃう。少し街に近づいた所で開けた場所に出られた。


『ハル、ここら辺でおやつ食べようくま!』


 お茶を買い忘れたから、アプルとお水でアプルウォーターを作ってあげる。さっぱりと飲みやすいはず。


「そうだね、ここなら周りも見えて良さそうだね。はい、美味しい方のクッキーとアプルウォーターもどうぞ」


 お皿にクッキーを5枚乗せて、アプルウォーターと一緒に出した。やっぱりこのクッキーとっても美味しい。食べると、さっきの緊張が解けてほっとする。


『美味しいくま~。アプルウォーターもさっぱりと美味しいくま。クッキーとも良く合って、ぼくこれ好きくま』


 喜んでくれて良かった。美味しそうに食べているひぃろに3枚あげて、2枚は私がもぐもぐ食べた。


「明るいうちに街へ帰ろう。ひぃろまたサーチと道案内お願いしてもいいかな?」


『任せるくま~』


 行くときに薬草は採取したから、帰りはのんびり歩いて行く。1時間くらい歩くと街の門が見えてきた。冒険者カードを提出して中に入れて貰い、そのまま冒険者ギルドに行く。


 冒険者ギルドについたら、サラさんがいたので声を掛けた。


「サラさん、ただいまです」


『ただいまくま~』


「依頼の達成はどうしたら良いですか? 麻痺草とウルフの討伐なのですが」


「ハルちゃん、ひぃろちゃん、おかえりなさい。怪我もなさそうで良かったわ。買い取りカウンターで出して貰えばいいわ。その後また私の所に戻ってきてね」


「はい、わかりました。行ってきますね」


 買い取りカウンターへ向かうと、昨日のポーションの件で、ブラウさんに名前を憶えて貰えていたみたい。


「ハルか。今日は何の買い取りだ?」


「今日は依頼で麻痺草とウルフの討伐があったので、確認と買い取りお願いします」


「おう、じゃぁここに出してくれな」


 麻痺草とウルフの素材を出していく。ブラックウルフの素材も出す。


「こ、これはブラックウルフ!? もしかして倒したのか?」


「はい、気が付かれちゃって逃げられなかったので倒しました」


 それを聞いた買い取りカウンターのブラウさんは、大きな声でサラさんに告げた。


「サラ、ハルのランクアップの準備頼むな。それでブラックウルフの素材も買い取りでいいのか?魔石もあるけど」


「はい、全部買い取りで大丈夫です。ブラックウルフのお肉とウルフのお肉は1つずつください」


「おう、了解だ」


 魔石が高いのとブラックウルフの毛皮も高いので、買い取り金額が結構高額で助かる。


「じゃぁ、この紙を渡してサラの所でランクアップしてな。おめでとう」


「はい、ありがとうございます」


「サラさん、買い取り終わりました。これお願いします」


「お預かりしますね。冒険者カードも出してくださいね」


 紙を渡すと、ランクアップの手続きをしてくれた。赤のプレートになった。まさか1回依頼を受けただけでランクアップするとは思わなかった。ブラックウルフの討伐のおかげだそうだ。


「おめでとうございます。EランクになったのでDランクの依頼まで受けられるようになりましたよ。ブラックウルフを倒せるなんて、ハルちゃんとひぃろちゃんは凄いのね。でも無理しないでね」


「はい、ありがとうございます」


『ありがとうくま~』


 冒険者ギルドを出て宿へ向かう。宿を取ってるのが今日までだから、もう少し延長しないとだね。後1週間くらい泊まろうかな。まだ行きたい所もお買い物もしたいしね。


「ねぇ、ひぃろ。宿を後1週間くらい延長しようと思うのだけどどうかな?」


『良いと思うくま。ハルに任せるくま~』


「延長が出来たらお願いして、またお買い物してお菓子も作ろうね」


『やったくま! ハル大好きくま~』


 宿について延長をお願いしたら、ちょうど今のお部屋が空いているからそのまま使っていい事になった。


 一度部屋に戻ってクリーンをしてから、お夕飯を食べに食堂へ向かう。


「今日のお夕飯は何だろうね。ビスさんのご飯美味しいから楽しみだね」


『とっても楽しみくま~!』


 今日のお夕飯はココ肉のトマト煮込みとパンだった。今日も仲良くひぃろと一緒に食べていく。

 ココ肉って何かなと思ったら日本の鶏肉と同じだった。


『ココ肉がほろほろだし、トマトの酸味とよくあって美味しいくま~』


「本当に美味しいね。パンとも良く合うからパクパク食べられちゃうね」


 ひぃろと一緒に完食した。今日もとっても美味しかったです。


「ごちそうさまでした。キャルさん今日もとっても美味しかったです」


『美味しかったくま~』


「今日も美味しそうに食べてくれてありがとうね。こっちまで嬉しくなっちゃうよ」


「だっていつも美味しいのだもの。ね、ひぃろ」


『くま! とっても美味しいのくま~』


 部屋に戻って寝る準備をするとひぃろを抱っこしておやすみなさい。

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