第7話 初めての依頼1


「ひぃろ、おはよう。準備したら朝ごはん食べに行こう。」


『ハル、おはようくま~』


 ひぃろと朝の挨拶をしてから、着替えて準備をして食堂へ向かった。今日の朝ごはんは何かな。


「キャルさん、おはようございます」


『おはようくま』


「ハルちゃん、ひぃろちゃんおはよう。今日も元気そうだね。ご飯準備してくるから座ってておくれ」


 ひぃろを抱っこしたまま席についてお膝に降ろすと朝ごはんが運ばれてきた。今日の朝ごはんはパン、スープ、オークベーコンと目玉焼きだった、とっても美味しそう。


「いただきます」


『いただきますくま~』


「ひぃろ、このベーコンと目玉焼き一緒に食べると美味しいよ、はいどうぞ」


『ハル、ありがとうくま。くまぁ~、すごく美味しいくま~』


 美味しい物を食べている時のひぃろが可愛い。ついついなでなでしてしまう。

 ビスさんのお料理は今日もとても美味しかったので、二人で大満足で食べ終えた。


「ご馳走様でした」


『ごちそうさまくま』


 部屋に戻って冒険者ギルドに行く準備をした。今日はどんな依頼があるかとても楽しみだ。キャルさんに行ってきますの挨拶を済ませ、宿を出て冒険者ギルドに向かう。


 冒険者ギルドのドアをそっと開けると、朝ということもあってとても賑やかだ。潰されそうでちょっと怖いけど、頑張って中に入っていく。


「えっと、依頼はあっちだよね。人が多くて見えるかなぁ」


「お嬢ちゃんどうした? 依頼出すならあっちだぞ」


 突然、後ろから声を掛けられてびっくりした。声を掛けてきたのは背の高いがっしりとした青い髪の冒険者のお兄さんだった。


「えっと、先日冒険者に登録したので依頼を受けようと思ったのですが……」


「おっと、すまん。冒険者だったのか。朝は人が多いからお嬢ちゃんにはちょっと大変だな」


「ハルと言います。こっちはスライムのひぃろです。よろしくお願いします」


『よろしくくま』


「ハルとひぃろか。俺はB級冒険者のアルスだ。よろしくな。依頼だったらこっちに来な」


 アルスさんは私の手をひいて依頼掲示板に向かっていった。


「小さい子がいるからちょっとあけてくれな」


「おう! こっちに来な。ここなら見えるぞ」


「ここ通っていきな」


 みんな道を開けてくれて、見える場所もあけてくれた。皆さん強面な方も多いのに、とっても優しくて嬉しくなってにこにことお礼を言った。


「ありがとうございます。ひゃっ!」


 掲示板を見ようと思ったら突然私の身体が宙に浮いた。後ろを振り向くとアルスさんが私を抱っこしてくれていた。一応12歳なのに…そんなに小さいのかな、私。


「あ、あのアルスさん?」


「これなら上の方も見えるだろう」


「ありがとうございます、でも重くないですか?」


「片腕で余裕なくらい軽いから、気にせず依頼見ていいぞ」


「ありがとうございます」


 やっぱりB級冒険者だけあって力があるのだね。まさか抱っこされるとは思わなかったけれど、気を取り直して依頼を見ていこう。


 私はFランクなので、一応Eランクまで受けられる。街の中のお手伝いから討伐依頼まで色々だ。せっかくなので、街の外の依頼を受けようと思うけど、何がいいかな。


 色々迷ったけれど、東の森で麻痺草の採取とウルフの討伐依頼にした。麻痺草は持っていないから自分用も沢山取って来よう。


「アルスさん、ありがとうございます。依頼決めました、東の森の麻痺草とウルフの討伐にします」


 そう言うと、アルスさんは降ろしてくれて依頼の受け方も教えてくれた。依頼の紙をはがして受付に持っていくらしい。アルスさんが依頼書を取って渡してくれた。


「気を付けて行って来いよ」


「はい、ありがとうございます」


『ありがとうくま~』


 私とひぃろは受付に行くと、サラさんがいたので、サラさんに依頼を受ける事を言って手続きをしてもらう。


「ハルちゃん、ひぃろちゃん。気を付けて行ってきてね」


「はい、ありがとうございます。サラさん、行ってきます」


『行ってきますくま~』


 冒険者ギルドを出て、東門へ向かう。


 東門へ着くと、門番さんに挨拶をして手続きをしてもらう。相変わらず小さいからかすごく心配されたけど、ひぃろと一緒だし冒険者という事でしぶしぶ手続きをしてくれた。


「ひぃろ、森に入るからサーチお願いしてもいいかな」


『大丈夫、任せるくま!』


 ひぃろがサーチしてくれるから、安心してひぃろについていく。薬草鑑定も忘れずに発動して、麻痺草と他にも使える物があるか鑑定して採取しながら歩く。


『あ、この先に3匹ウルフがいるくま!』


「ひぃろ、ありがとう」


 私はお礼を言うとシールドを張った。攻撃は森の中だしエアーカッターかな。


 先に進むとウルフが3体見えた。私は首を狙ってエアーカッターを連発する。ひぃろのおかげでゆっくり準備出来たので、3匹でもさくっと倒せた。毛皮とかお肉のアイテムがドロップしたので、アイテムボックスに仕舞っていく。


 その後も積極的に討伐をしながら採取もしていく。


『ハル~、お腹すいたくま~』


 ちょっと力のなさそうな声がして、お昼ご飯の催促がきた。今日はウルフのお肉をスパイス塩で焼いて、パンに挟もうと思っていたのだよね。


 コンロを取り出してお肉を取り出すと、包丁とまな板も出してウルフのお肉をスライスしていく。あんまり厚いとなかなか焼けないし、パンに挟んで食べにくいので薄目にスライスしていく。

 切ったお肉にスパイス塩で下味をつけて5分程味を馴染ませた。ひぃろが待ちきれないから早めに作ってあげないとね。


 フライパンを火に掛けて熱くなったら、お肉を焼いていく。途端に良い香りがしてお腹がぐぅぅ~となった。焼いている間に昨日作ったパンに切れ込みを入れる。パンに焼けたお肉を挟んで完成。


ひぃろには2つ、私は1つ作った。後は土魔法でコップを作って美味しいお水も入れてあげた。


『ハル~、良い匂いするくま、お昼は何くま? お腹すいたくまぁ~』


「出来たよ~。今日は昨日作った、スパイス塩で焼いたウルフ肉をパンに挟んだよ」


『わぁ、美味しそうくま! いただきますくま』


「いただきます」


 スパイス塩がウルフ肉にとても合っていて美味しかった。パンに挟むと、ちょっとスパイシーなのがとても良く合う。日本にいた時だったらビールとこのスパイシーなお肉が一緒に食べたかった。


『ハル、これ美味しすぎるくま! ぴりっとしたスパイスの味が、パンのほのかな甘みによく合っていくつでも食べられそうくま!』


 なんだか食通になってきたね、ひぃろ。美味しい物はいくらでも食べたいよねと思いながら、おかわりのもう1個をひぃろにあげた。ひぃろ用に2個作っておいたけど足りなかったかな。


「ひぃろ、足りた? 足りなかったらまた作るけど、どうする?」


『ん~、2個で大丈夫くま~。ハルありがとうくま』


 まだ足りなそうな気がするから、次からは3個作ってあげようと心に決めた。こんなに美味しく食べて貰えるなら、お腹いっぱい食べさせてあげたいしね。なんと言っても可愛いひぃろの為だしね。


 お片付けをした後は、また採取と討伐へ向かう。

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