第3話 ティリスの街
また私はひぃろと採取しながらのんびり街へ向かう。
お仕事している時は、こんなにのんびりする事なんてほとんどなかったから、久しぶりののんびりを楽しみながら進んでいく。
途中で休憩も取りながら街を目指していると、森を抜けた所で街の入り口が見えてきた。もうすぐ夕方だからか入口に人が並んでいる。
「街が見えてきたね~。並んでいる人がいて混んでいるから、ひぃろは抱っこしようね」
『分かったくま。後もう少しくま~』
最後尾についた。結構並んでいるからかなり待つかなぁ。日が暮れるまでに宿が探せるといいのだけど。
門まで後もう少し。この世界に来て初めての街なのでとても緊張してきた。
とりあえず宿だね。冒険者ギルドは明日行こう。門に着くと私が小さいからか、門番さんにびっくりされた。
「こんにちは、初めてなのですが入れますか?」
「こんにちは、各ギルドが発行している証明書とかあるか?」
「いえ、ないです。これから登録しようと思っているのですが…」
門番さんは少し考えた表情をした後、プレートを出してくれる。
「そうか。そしたら、このプレートに手を置いてもらえるか? 犯罪歴が分かるからな」
犯罪歴が分かるんだ、魔法の世界はやっぱり不思議だね。私は石のプレートに手を置くと緑色に光った。
「犯罪歴もなし。銀貨1枚かかるが大丈夫か?」
緑色は大丈夫なのだね。私はアイテムボックスの中に神様が入れておいてくれたお金から銀貨を1枚取り出して差し出した。
「証明書を作成して持ってきてくれたら返せるから、忘れずに来るんだぞ。ようこそ、ティリスの街へ!」
「はい、ありがとうございました。あの、お勧めの宿ってありますか?」
「宿のお勧めは、冒険者ギルドの並びにあるビス亭がいいと思うぞ。ここをまっすぐ行くと冒険者ギルドがある十字路がある。そのまままっすぐ行って3軒目にあるぞ。飯も旨いしおススメだ」
「ありがとうございます、行ってみます」
宿を目指してまっすぐ歩いていく。
中世ヨーロッパのような石造りの街並みが不思議な感じだ。まっすぐ歩いて行った十字路には、冒険者ギルドと反対側に商業ギルドがあった。分かりやすくていいね。宿の名前はビス亭だね。
冒険者ギルドの並びで3軒隣にあるらしいので、きょろきょろ探しながら歩いていくと、ビス亭を見つけた。もう夕方だけど部屋空いているといいなと思いつつドアを開けた。
「こんにちは、一人部屋で良いのですが、空いてますか? 後、この子もいるのですが一緒に泊まれますか?」
「いらっしゃいませ、空いてるから大丈夫だよ。そのもふもふはスライムかい? 一緒に泊まれるから大丈夫だよ。大きい獣魔だったら外に泊まって貰うけど、小さい子は平気だよ。何泊にするかい?い?」
「はい、スライムです。じゃぁ、3泊お願いします」
「ここに名前を書いてもらえるかい?」
私とひぃろの名前を書いて、神様が入れておいてくれたお金を有難く使わせて貰って、手続きを済ませる。
「ハルちゃんとひぃろちゃんって言うのだね、私はキャルだよ。よろしくね。2階の一番奥の部屋だよ、夕食は6の鐘から食べられるからね」
「ありがとうございます、よろしくお願いします」
『よろしくくま~』
鍵を受け取り2階の部屋へ向かう。開けてみると日本のビジネスホテルのようだ。お風呂はないので私とひぃろにクリーンしてからベッドに座ると、ひぃろもベッドに降ろしてあげる。
少しごろんと横になってひぃろと遊ぶ。ツンツンしたりむぎゅ~っとしたり撫でたりしていたら2人とも眠ってしまっていた。
「ん?」
今日転生してきたばかりだというのに、なんだか盛り沢山だったからか疲れていたみたいで、ぐっすりと眠ってしまった。
窓を見ると、もう日が暮れていた。今何時かなと思っていたら遠慮がちにドアがノックされた。
「はい」
「起きてたかい? 6時になってもご飯食べに来なかったし、疲れた顔していたから寝てるかなと思って、一応声かけてみたんだよ。お夕飯は食べられそうかい?」
キャルさんだったので安心してドアを開ける。
「ありがとうございます。ちょうど起きた所で時間が分からなくて、お夕飯食べられるか考えていたところだったので助かりました、ありがとうございます。ひぃろを起こしたら食堂に行きますね。お腹空きました~」
キャルさんは笑って下においでと言ってくれた。お昼にアプルしか食べていなかったので、ちゃんとしたご飯が食べられるのは嬉しい。どんなお夕飯なのか楽しみだ。
とりあえずひぃろを起こさないと。
「ひぃろ、ご飯食べに行くから起きて~?」
『ハル、おはようくま~。食べるくま~』
ひぃろを抱っこして食堂に向かう。
「私のお膝の上にいてね。一緒に食べようね」
宿のご飯は、キャルさんの旦那さんのビスさんが作っているのだって。今日のご飯は、オーク肉のステーキとスープ、パンだった。
オーク肉初めて食べるけど、まんま豚肉でした。でもジューシーでとっても美味しかった。ビスさんの味付けもとっても美味しくて沢山食べたかったけど、12歳の身体だからかすぐお腹いっぱいになってしまって、思ったよりも食べられなかったのが残念。
でも、ひぃろと一緒に食べるからちょうど良かったのかも。
『ハル! これ、これ美味しいくま~!』
「ふふ、良かったね。お昼は別の物食べたけど、一緒に食べるともっと美味しいよね」
ひぃろは、こういうご飯は多分初めてだろうからびっくりしたみたい。これから一緒に美味しい物が食べられそうで嬉しいな。
「ごちそうさまでした、とっても美味しかったです」
『ごちそうさま、おいしかったくま~』
「お口にあったみたいで良かったよ。明日の朝も6時から朝ごはん食べられるからね。お休みね」
「おやすみなさい」
お腹いっぱいになった私達はお部屋に戻ってきた。
「ひぃろ、明日は朝ごはんを食べたら冒険者ギルドに行って登録してこようね。後は、お買い物できるかなぁ」
『お買い物、何買うくま?』
洋服も欲しいし、食材やそのまま食べられるものもアイテムボックスに入れておきたいし、調理器具もあれば助かる。それにバッグも持っていないからバッグも準備しなきゃ。なんだか沢山買う物があるけど、お金もどうにか稼がないとだね。
「うーん、ちょっと考えただけで沢山買いたい物があったけれど、まずは冒険者ギルドに登録して、ポーションが売れたら売ってこよう。それから、時間があったらお買い物しようか。さっき寝ちゃったし、もう少しポーション作っておこうかな」
アイテムボックスを確認したら、薬草類も沢山あったからそれぞれ20本作っておいた。沢山買いたい物があるし、お買い物の資金になるといいのだけど。さて、そろそろ寝よう。
ひぃろをむぎゅぅっと抱き締めて一緒に寝る。ひぃろを抱き締めると気持ちが良い以上に、心が穏やかになる。1人じゃない安心感ですぐに眠くなってきた。
「ひぃろ、おやすみ」
『ハル、おやすみくま~』
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