第4話

「では続いて、こちらを見てくれ。…今回はネタは仕込んでないぞ」

 そう言って配られたのは「生徒会 対魔特別班の活動について」というプリントだった。

 俺達は早速それに目を通す。

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 注意事項: 1)異界について生徒会役員及び顧問以外に口外しない事

       2)武器は異界入口のロッカーに収納する事

       3)訓練は異界で行なう事

       4)異界侵入の条件は下記ランクに従う事

 ランク:  S…全階層を単独侵入可

       A…中層まで単独侵入可、下層は複数人で侵入の事

       B…上層まで単独侵入可、中層は複数人で侵入の事

         下層はSランク又は顧問随伴の事

       C…上層は複数人で侵入の事、中層はAランク以上

         又は顧問随伴の事、下層は侵入不可

       D…上層はBランク以上又は顧問随伴の事

         中層以降は侵入不可

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「君達は先ずDランクとして扱われる。私達上級生、又は森川女史の同行が必須だ。訓練は異界内で行なうので、必然的に君達単独での訓練は禁止となる。注意してくれ」

 生徒会長がそう告げると、今度は隣の部屋に移動しそのまま異界へと侵入した。

 彼女は一番奥の大きいロッカーを開けた。中には多種多様な武器が並んでいる。

「早速だが武器を選んで貰おう。御堂君は薙刀で良いか?」

「自宅から自分のを持って来たいのですが、良いですか?」

「ああ構わない。今日は此処にあるのを使ってくれ」

 そう言って薙刀が御堂さんに渡される。ちゃんと先端が刃になっており、長さは2メートル以上あるだろうか。

「次は龍ヶ崎君だが、何が良い?得意不得意は無いだろうから、好みで選んでくれ」

「んー。おお、これこれ!如何にもって感じでカッコ良くね?」

 彼が選んだのは両刃の直剣だった。ロングソードだろうか。確かにファンタジーの定番だ。

「さて、最後に桐原君だが…メイン武器は杖で確定となる。なのでサブ武器を選んでくれ。なるべく軽量の物を選んだ方が良いぞ」

 そう告げられ俺も物色する。ナイフやダガーは刃渡りが心許ないので、一先ずショートソードを選んだ。

「そして杖だが…これだ」

 そう言って渡されたのは、先端に金具と水晶が埋め込まれた木製の杖だった。長さは1.5メートル程だろうか。某映画のようなステッキ状では無いようだ。

「では御堂君と龍ヶ崎君は私に付いて来い。早速訓練開始だ。…森川女史、桐原君は頼みました」

「はーい。行ってらっしゃい」

 そう言い3人は異界を奥へと進んで行く。

「かーくん、私達はこっちね」

 案内されたのは通路沿いにある最初の小部屋だ。それでも教室より広い。

「じゃあ早速だけど、杖の構え方からね。先ずは地面に対し垂直に立てて、楽な位置を掴んでみて」

 言われるがままに杖の柄を持つ。すると結構先端の方を掴む事になる。

「そうしたら杖を持ち上げて、柄を腰骨の上に当ててみて。普段の状態はこれね、先端が安定するわ。攻撃する時は、そのまま腕を前に伸ばすの」

 杖を構え、前に突き出す。その動きを何度か繰り返してみる。確かに安定するようだ。

「てっきり長さからして、両手で扱うものだと思ったけど」

「両手だと槍のような持ち方になるから、小回りが利かないし死角も出来ちゃうの。だから片手で扱うのが基本よ」

「成程。敵の方向に素早く向ける為に、か。…逆に聞くけど、杖が無いと魔法って使えないの?」」

「凄く熟達した人で、杖無しでは何とか弱い魔法が発動する程度。理由は判らないけど、杖の補助が無いとまともに戦えないわ」

「…何だか魔法使いだけ不便じゃない?」

「その分、魔法を習得すれば遠近どちらも圧倒出来るわ。頑張りましょう?」

 そう笑顔で言われると、俺も頷くしかない。

「先に言っておくけど、魔法が使えるまでに長ければ1ヶ月以上掛かるわ。だから諦めずに継続してね」

「了解。…それまでの間は無収入か。食費を切り詰めないとなぁ…」

 生活費に余裕が無いので、稼げるようになるまでは大変そうだ。まあ飢え死にはしないだろうが。

「次は魔力の感知ね。丹田…おへその下辺りに魔力は存在するわ。手を添えて、目を閉じてみて」

 言われる通りにへその下に掌を当て、目を閉じる。

「掌に魔力の波と熱が伝われば、感知成功よ。まあ暫く掛かるとは思うけど…」

 …掌がぞわぞわする。強めの水流を受けている感じだろうか。徐々に体温以上の熱も伝わって来る。

「あー、何かぞわぞわ感じるよ。これがそうなのか判らないけど…」

「え、本当に?ちょ、ちょっと待ってね」

 そう言うと唯姉が背後に回り、俺の手の上に掌を重ねる。同時に、背中に2つの柔らかい感触が伝わる。…意識するな俺、今反応するのはマズい。

「…本当だわ。凄いわね…血筋かしら」

「…え、どういう意味?」

「何でもないわ。…これなら魔法を使えるようになるまで早そうね。次に行きましょうか」


 そう告げられ、手と背中の感触が離れた。代わりに良い香りが髪から漂った。

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