第2話 色なし
ほとんどの人には魔術適正がある。それがどこに出るかと言えば髪だ。炎が得意な人は赤髪、水が得意な人は青髪、風が得意な人は緑、土が得意な人は茶髪などそれぞれ特徴がある。
だがまれにどの属性にも適性を持たないものがいる。それがリオンであり、
またあくまでも髪の色は属性魔術の適性であって、必ずしも魔術が使えるとは限らない。魔術を使えるのはもっぱら10人に一人ぐらいである。そんな魔術を使える人材がエルライト王国で目指すのがリデア魔術学園である。
国随一の魔術師育成期間であり、その倍率は非常に高い。それだけに生徒のレベルは高く、入学できたら一流の魔術師になれること間違いなしと言われるほどだ。
魔術は未だにすべて解明されたわけではない、教師たち自身も研究を行っているほどだ。そしてこのリデア魔術学院には広大な図書館が存在する。魔術に関する書物がたくさんあり、中には貴重な研究結果などを記載されているのもある。
そしてこの図書館の素晴らしい点として生徒なら基本的にどの本でも読めるということだ。他国からの留学生などもいるので流石に軍事機密に関わるような本は読めないがそれ以外の本は生徒であれば基本的に何でも読める。
そんな学園の正門へと足を踏み入れたリオンだが早速帰りたくなっていた。
「ねぇ、あの子がうわさの…。」
「色なしがいるぞ。」
「いったいどんな手で入ったんだろうな?」
「金でも積みまくったのかもな。」
周囲からは散々な言われようであった。もちろんリオンは金など積んでないし、実力で合格した。だがこの反応は当たり前ともいえるものだった。
色なしと呼ばれる人たちはほかの人に対して大きなハンデとなる。何せ属性魔術が一切使えない。この差は非常に大きい。それに対しリデア魔術学園の倍率は非常に高い、そんな大きなハンデを抱えてどうやって入学するんだと思うのも自然である。
色なしの人たちはほかの人たちから蔑まれている。リオンもこの事実は知っていたがここまでのものだとは知らなかった。
リオンは生まれた時から王城とは無縁な普通な暮らしをしていた。最初こそリオンの母が平民だからなのかと思っていたがすぐに自分が原因であると気が付いた。
エレメンツと呼ばれる家系がある。雷のエルライト、炎のソルニア、水のヴァ―ジア、風のエアリー、土のオズモンドと呼ばれている。エルライト家が王家でそのほかの家が公爵家となっている。
王家から生まれたであろう子が色なしとは非常に外聞の悪いものだった。だからこそリオンは、王城とは無縁な暮らしを強制させられた。それでも時々お忍びで会いにきたり、プレゼントを用意してくれた。今考えてみれば殺されてもおかしくはなかったのだ。優しい王もとい父には感謝しかない。
そのためリオンはリオン・マイヤーという名で入学している。これは母の旧名でエルライトとの関係を疑われないようにするためのものだ。
そんなこんなでリオンは入学式の行われる体育館へときていた。
(大きいし、人も多い。どちらかというとパーティー会場じゃないか?これ。)
リオンが入学式が行われる体育館でまず最初に思ったことがこれだ。部屋全体には、豪華な飾りつけがされており、とてもきらびやかだ。周りを見ればとても誇らしげな表情をしている子とびくびく震えている子の二通りが見られた。
リオンは、案内された席に座り入学式が始まるまでしばらく考え事をしていた。
脳裏に浮かぶのは3年前の帝国との戦争だった。
(僕は確かにあの時と比べたら強くはなっただろう。でもこの力は僕のじゃなくて姉さんのものだ。)
手の平にうっすらと電撃を浮かべながらリオンは力強くこぶしを握る。
(でもエリン様だって一応僕の妹なんだ。もう二度と家族を失いたくないんだ。)
リオンは、髪色のせいもあって母と姉のアリシア、それから国王であるローガスを除いて他の王族にあったことがない。
逆にリオンの姉であるアリシアは天才であった。そのため、姉が王族の一員であったことは隠されていないし何ならエリンとだって何度もあっている。
リオンはそんな姉からいろんなことを教わった。その中には王城での勉強のことやほかの兄妹の話なんかも出てきた。アリシアは別に王族として恥のないようにしっかりと教育された。王城で暮らしてもいいといわれていたが彼女はリオンや母と一緒に暮らすことを選んだ。
彼女は勉強の際には王城へと行き、普段はリオンのいる家で過ごすという他人から見れば何とも不規則な暮らしをしていた。でもリオンにとってはそんな姉が大好きだった。
アリシアはエリンとも仲が良かった。アリシアからよくエリンのことを聞くことも多かったこともあるのでエリンにとってリオンのことはわからないかもしれないがリオンにとってはエリンのことも一人の大切な家族であると思っている。
リオンがそんな風に決意を固めていると、正面から膨大な魔力の圧が広がるのを感じ取った。
(これは。)
先ほどまではがやがやと騒いでいた人たちも一瞬であたりが静まり返った。
それと同時の一人壮年の男性が姿を現した。
偽りの英雄 七草 みらい @kensuke1017
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