背中狙え背中

春嵐

全1話 終

 実際の戦場では、少しでも何かがかすれば死ぬ。電子空間が戦場になっても、それは変わらない。


『ゲームスタートです。体力設定1。相手を倒して得た能力リソースは攻撃にのみ使用可能です』


 先頭領域に、弾き込まれる。


「うわ」


 平面。起伏がない。遠くまで見通せる。


「うわうわうわ」


 撃ってきた。レーダーを見ながらの適当撃ちか。

 当たらない。大丈夫。

 余計なことにリソースを割くわけにはいかない。手持ちの能力は、いつも通り100。防御と体力には振れない。


 索敵も切った。平面なら、目視確認でいい。隠密迷彩は防御扱いで使えないはず。


 攻撃に振った。とりあえず、長めの刀を作る。槍がよかったけど、間合いと硬さを考えると刀にするしかなかった。しかも剣ですらない。斬れるのは片側だけ。受け太刀何回かで壊れる。


 撃ってくる。飛んでくる弾丸で、なんとなくの方向を予測。ゆっくりと、いながら、近付く。まずは誰か倒さないと。


 無駄撃ちしている相手。意外と近くにいた。そのくせ、弾丸は当たっていない。レーダーを見ているわけでもなさそうだった。這った姿勢から、一気に跳躍。半回転しながら、そのまま斬撃。深く入った。一人撃破。


 入った能力を、そのまま索敵に使用。


「ん」


 足許。敵の判定がある。跳んだ。地面から、弾丸。


「なんだ、最近は銃が流行ってるのか?」


 地面の中。索敵で横の位置は分かるが、深度が分からなかった。ただ、この分だと、弾丸に当たっても致命傷にはならなそうだった。


「いやいやいや。あぶない」


 体力設定1だった。何か掠ればゲームセット。


「じゃあ、さっきのも無理して跳躍斬撃しなくても」


 銃撃。

 左の腕を。

 掠める。


「あっやべつ」


 すぐに左腕を切り離して別枠にする。


「あっぶねえ」


 間に合った。ゲームセットになるところだった。四肢は当たった瞬間判定外にして切り離せば、なんとかできそうだ。


「右腕だけか」


 余計に刀がしんどくなってしまった。相手。こちらが倒れなかったのを見て、びっくりしている。


 隙があった。左脚で踏み込み、間合いを詰めて右逆 袈裟けさ。相手の足に掠った。そのまま倒れる。


「まあ、知ってるか知らないかの差だよな」


 得た能力は、まだ使えない。地中にひとりいる。索敵で横軸を合わせて。撃った直後を狙う。後ろに退いて、弾丸をかわし。地面に刀を突き立てる。手応えがあった。倒したらしい。能力が入ってきた。


「よしよし」


 能力を使って、刀を槍に。片手でも使えるように、穂先だけ判定があるようにした。残りは棒。当たっても相手の体力は奪えない。そうすることで重さを少し軽減できる。


「さて」


 ひとりずつ、ゆっくり後ろから刺していくか。

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背中狙え背中 春嵐 @aiot3110

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