493話 最終決戦そ 11
───瞬間、《輝きの騎士》たちがかき消えた。
薄々そうじゃないかと思っていたんだ、呼び出すときは一律にせーのじゃないと駄目なんじゃないかって。おおむね生命を喪失するダメージを負った《輝きの騎士》は光の粒になって消える。《輝きの騎士》たちの顔ぶれの中に俺が斬ったやつはいなかったから。ロジェスの《輝きの騎士》を斬ったのは無駄じゃなかったんだと思うより先に、俺はディレヒトを叩きに突っ走る。
再展開するつもりか、面白い。ディレヒトとてこの隙をそのまま隙として甘受するつもりではなかろうが、乗っかった上でねじ伏せる。
「ぜあああああッッ」
ディレヒトが聖剣《列聖するもの》を突き立てる───俺が飛び掛かる。
聖剣から光が迸る。初回よりも展開速度は格段に上だ。あれはデモンストレーションであって本気じゃなかったのか───魔剣アルルイヤが貪欲に吼え猛る。
爆発的な光と共に、《輝きの騎士》たちが姿を現す───《背教》で創った魂を注がれて、アルルイヤが黒刃を閃かす。
新生した《輝きの騎士》たちが、立ち並ぶはしから両断されてアルルイヤの黒に呑みこまれていく。
ディレヒトの知っているすべての神聖騎士の再現と使役。なるほど凄いさ、確かに初見は驚きもしたし楽しかった。けれど俺がやりたいのは信庁との全面戦争じゃない、俺はディレヒトと戦って勝ちたいんだ。
だから何度もワラワラ湧いてくるんじゃない!
展開中のディレヒトを斬ろうと最初考えはしたんだ。けれどそうじゃない、幾度作り出そうと結果は一緒だと思い知らせたくなって、俺はこういう手を採るしかなかった。
俺の魂に正直に。
それが自由ってことだって、証明したいから。
ディレヒトの前に辿り着いた。
さあ覚悟しろ、もうお前を守ってくれる仲間はいないぜ───言葉にする代わりに視線で射抜くと、意外なことにディレヒトはその視線を受け止めて睨み返してきた。その瞳にあるのは決着することへの恐怖ではなく、純粋な勇気。
一歩、踏み出すための意思の力。
まさか
とは、とても思えなかった。
「ッぐ!」
声は無理に身を捩ったからだけではなく、傷の痛みによるもの。魂だけの俺に剣を届かせ、確かに反撃を成功させてきやがった。浅い傷なのは間一髪で回避に専念したからで、あのまま肉を斬らせて骨を断とうとしていれば魂がばっさりいかれていただろう。
そんなことはありえない───なんてこともない。思い当たる節はあった。
ロジェス・ナルミエ。《輝きの騎士》の方ではなく、前線都市ディゴールで挑みかかってきたため止む無く《九界》の外に放逐した本物の話だ。彼の全力は俺の左腕を魂ごと奪ったから、前例と言えばそうなのだが。
問題は、あのときの彼は───
「……驚いたな。まさか、神聖騎士筆頭のアンタが?」
「笑いたければ笑え。私も笑う」
神聖騎士筆頭。
《人界》最強。
信庁を担う者。
───《燈火》のディレヒトが、《真なる異端》となったなんて。
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