445話 最終決戦その6
「───舐めてくれるなよ」
胴体ド真ん中を穿つはずだった神火はしかし、寸でのところでユヴォーシュに回避されていた。当たればなるほど《光背》は貫けると確かめられはしたものの、手の内を読まれていない初撃で仕留めたかったのだがそうはいかなかったか。
ならば次だ。
「俺がニーオから目を離すはずがないだろう! ───そっちも、見えてンぞッ!」
踏み込み一閃、ロジェスの剣をしっかと受け止める。鍔迫り合う火花よりも速く退いたそこを、メール=ブラウ───を模した《輝きの騎士》の鎖が打ち据える。
いずれも必殺、なれど不発。
単発の聖究騎士、《神血励起》では決めきれない。やはり付き合うしかないのか、と思う。きっちり組み立てていって、神聖騎士と聖究騎士と自分自身、三位一体でユヴォーシュ・ウクルメンシルを追い詰めるしかない。最も手間がかかるが、事ここに及んでは致し方ないと判断する。
なにせコイツは慣れている。こうして複数人の《信業遣い》を相手どるのはこれが初めてではないと身を以て証明する立ち回り。それもそのはず、一対多の経験は大魔王マイゼスと《暁に吼えるもの》の眷属がある。どちらも死線をくぐった先にまた別の死線が待ち構えているような極限の戦いだったから、ユヴォーシュはすっかり鍛え上げられてしまったのだ。今や彼は、《人界》で最も対《信業遣い》戦闘の経験が豊富な男と言って過言ではない。
総毛立ちそうだ。背筋を伝う冷や汗が気色悪い。聖剣を握る手は、震えていないだろうか。
感情は押し殺せ。すべては《人界》と信庁のために。そう思えば、どれほどの苦難であろうとも乗り越えるべき壁でしかない。
あの日果たせなかった決着をつけるだけだ。そう考えたディレヒトの胸に、ちらりと熾る感情の火。その色は使命感や信仰とは異なるものだったが───彼はまだ、それに気付かない。
共に征くべき《
迎え撃つは孤軍奮闘のユヴォーシュ。
もう幾度目か数えるのも馬鹿馬鹿しい剣戟と同時に、彼方に見える聖堂の一つが爆ぜた。
───戦っているのは彼らだけではない。この聖都イムマリヤを舞台として、今いくつもの交戦が繰り広げられている。
ヒウィラ・ウクルメンシルと、《醒酔》のナヨラの戦いも、その一つ。
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