410話 機神進撃その3
聖都の上空を轟音が突き抜ける。
機神ミオトの砲撃でどうなったか、直後に認識できていた者は殆どいない。多くの者はあまりの衝撃に『機神ミオト様の裁きが下って我々は死んだのではないか』と半ば以上本気で錯覚すらしていた。
それほどの威力。
砲声のみで近隣住民を慄かせ、薄い硝子に至っては割れてしまうほどの一撃は、過たず空の彼方の《真龍》に命中していた。左半身を木端微塵に粉砕されれば、いくら《信業》の恩恵で飛翔する超常生命体といっても空に留まることなど不可能だ。
墜落していく九大天龍を観測する《鎖》のメール=ブラウは、さすがに己の頬が引き攣っているのを自覚していた。
「いやはや、壮絶だなァ。……っと、機神サマ、追い打ちのトドメまで全部自分の手でやらないと気が済まないらしい」
こりゃ俺たちの出る幕はないな、と傍らに声をかける。観測塔につめていた
もっとこう、分かりやすく面倒くさい連中の方が絡み甲斐があったなと思いを馳せる。それこそそう、同じ聖究騎士でも《割断》のロジェスや《火起葬》のニーオあたりは、彼の絡みに対して良かれ悪しかれ激しい反応をしめしてくれた。淡々と無視するよりはよほど突く意味があるというものだ。
かたや先の叛乱で粛清され、かたや緊急事態にも関わらず完全に姿を晦ました。メール=ブラウはロジェスがどうなったかの顛末を知りはしないが、何となく、彼はもう戻らないだろうことを予感していた。
そういう瞳をしていたのだ。
少年が夢に出逢ったような、あるいは魔術師が実現可能性だけはある理論を見出してしまったような、そんな純粋で危険な光。いつか、ディゴールが探窟都市から前線都市になったころ、聖都に戻ってきていたロジェスの瞳に宿っていたのはそういう狂気だった。
その正体が知りたくて、メール=ブラウはロジェスの妨害をしてみて───遭遇したあの青年に、何があったのかを理解させられた。
ユヴォーシュ・ウクルメンシル。こいつが、ロジェスの心に火を点けたんだ、と。
ガンゴランゼのときも、ニーオリジェラのときも、《人界》が大きく搔き乱されるところには必ず彼の存在が感じられた。《妖圏》送りになって穏やかになったかと思えば、今度の大騒動。これは彼が戻ってきた証に他ならない、と確信できる。ロジェスは一足先にそれを感じ取って、信庁に見切りをつけて彼のところへ向かったに違いない。
目的は言うまでもない、決着だ。ロジェス・ナルミエという男に他意はなく、彼の実力は同僚であるからよく理解している。いくらユヴォーシュとて勝ち目はない。万に一つも。
神聖騎士筆頭、《燈火》のディレヒトは《人界》最強と名高い。おそらくそれは真実であろうが、もしも勝ち得るとすればそれはロジェスであるはずだ。
……少なくとも、俺や
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