408話 機神進撃その1
───九大天龍。
《龍界》における最上位存在。その名の通り、最大で九体が確認されている。《
九体いるから九大天龍なのではない。九大天龍だから九体まで許されるのだ。
数が先にあり、そこに力あるものを当てはめる《九界》らしさはここでも現れている。
とにかく、ただでさえ強大な個体である《真龍》を圧倒できる九大天龍たちは、もしも君臨すれば《人界》を単独で滅ぼしかねないとすら噂されている。それが事実かは《人界》の民草には知る由もないことではあるが。
九大天龍たちが龍族のかたちをとって《人界》に攻め入ることは稀だ。彼らの《人界》での身体の代わりと成りうる《冥窟》を構築するのには莫大な労力と時間がかかるし、迂闊に暴れ回って聖究騎士たちが複数出てくれば万一ということも起こりうる。それならば《冥窟》は《冥窟》として運営し、《人界》から獲れるだけ獲ってしまった方が好都合なのだ。
《真龍》たちは際限なく成長し続けられる。そうやって《龍界》の資源を食い尽くし、更なる資源を求めて《人界》に進出してくるのだから───その補給経路を断たれるくらいならば妥協するも止む無しという判断である。
《冥窟》を失い《人界》からの補給が入らなくなれば、その個体は成長の余地を奪われる。彼(あるいは彼女)が停滞している間にも他の九大天龍たちは変わらず成長を続ければ───すぐに均衡は崩れる。進み続けられないものが置いてけぼりにされるのは、早い。
そういう理由から九大天龍たちは龍族として《人界》を貪ることは避け、人里離れた地にて《冥窟》としてちびちびと搾取を続けることを選びがちだ。では、そんな安全策をかなぐり捨て、龍族らしく限りない欲望の本領を発揮するときとは何時か?
《
もうオシマイ、奪うものもなくなるともなれば穏やかなやり方を採ってはいられない。どうせ終わる世界、どうせ潰える《冥窟》ならば最後に腹いっぱい暴食するに何の躊躇いもあるはずがないだろう。
《大いなる輪》が廻り、《人界》の劫が巡るまでのわずかな期間。
《人界》の空には、九大天龍たちが舞う。
終わりを告げる鐘声より何より、彼らの威容こそが《人界》の終わりの象徴であった。飛翔する彼らの目的はその劫における《人界》の中心地───今の劫ならば聖都イムマリヤ。そこには全てが集う。聖究騎士は危険極まりない敵手だが、喰らえればその存在熱量は際立っている。他の九大天龍に奪われてなるものか、喰らうは我ぞ───
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