398話 不帰光芒その3
「そうだ、来いッ! お前をぶつけてこい! お前のすべてを、俺に───!」
「うるッせェェェェえええええ───!」
……本音を言えば、分からないでもないんだ。ロジェスの言う、『勝ちたい』って気持ちはそりゃあ、俺にだってあるさ。そんなこと言ってられない戦いが多すぎるだけで、意地ってやつは思わぬところで顔を覗かせる。だいたい、魔剣を求めてジニアと出会ったのだって、まさにロジェスに完敗したのが発端だ。
再び聖究騎士とあいまみえる時を見越して対抗できる武器を欲していたのは理性で、感情はもっとシンプル。
───悔しかった。
ああも真っ向からねじ伏せられた経験はなかった。生まれて初めて正面から負けた。いつか必ず、絶対に目にもの見せてやると心に誓ったんだ。だから、だからこれは───
でも、なにも! 何もこんな事態で仕掛けてくることないだろうがよ!
「どうして今なんだッ、《人界》が終わるかも知れないって危機なんだぞ、お前だって人族だろうが!」
「知ったことか!」
「──────ッ」
即答に怖気が走る。詰め寄る俺と対照的に後退しながら剣を振るうロジェスの瞳が見える。そこに宿る光で、その後に続く言葉が聞かずとも予想できちまう。
「言ったろう、俺はお前を斬りたい、他には何も要らない! どうでもいいんだッ! これ以上待ってお前が信庁にでも殺されてみろ、俺はどうなるか自分でも分からん! ここで決着をつけるのが、誰にとっても一番いいんだよ!」
無茶苦茶な理屈を吼えやがる。
どうでもいいと言ったそばから『誰にとっても円満だ』なんて、矛盾していることに気づいちゃいないし、やはり心底どうでもいいが本音なんだろう。ともすれば自分が一瞬前に吐いた台詞を覚えているかも怪しい。それくらい、ロジェスの顔は肉食獣のそれと酷似していた。
自分が積み上げてきたこれまでを一顧だにせず、思うがままに閃く剣は美しかった。俺よりよっぽど自由で楽しそうで、俺はそれが無性に羨ましい。こっちの気持ちも知らないで好き勝手しやがって、俺だって、俺だって───
「俺だってなァァァァ───!」
お前は初めて会った時から気に喰わなかったし、ムカついたし、ぶっ飛ばしてやろうと思ってたんだよ!
《光背》も何もなしに、全力を飛び込む俺自身に振り絞る。ロジェスの造り出す空間断面をかいくぐって思いっきり、
「喰らいやがれえええええッ!!」
剣はまだ振り抜く途中、もう一本備えている様子もない。───
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