385話 都市壊乱その8
───俺はいくつか、覚悟していたことがある。
《瞬く星のアセアリオ》と《幻妖》のクァリミンが眷属に仕立て上げられていて、ディレヒトと
俺を知っている人、あるいは俺が知っている人。その中で異端者と《信業遣い》は例外のはずだが、更にその例外にアセアリオが居るからややこしい。確かにあの《真龍》とは死闘を繰り広げたが、それが原因ならば眷属候補には結構な数の《信業遣い》たちが含まれることとなる。最悪なのは《割断》のロジェスと《鎖》のメール=ブラウ、それと《無私》のンバスク───俺がやりあったことのある聖究騎士たち。小神の神血を注がれた彼らならばシナンシスと同じように無事だと思いたいが、期待しすぎて遭遇したときに対処できないのは最悪だ。結果として、俺は死力を振り絞って眷属たちを解放する傍ら、常に魔王相当者たちを警戒する羽目となっている。
ただでさえ必死なのに、死ぬほど疲れる。
目前の相手に集中できないってのは気力がガリガリ削られる。そんな後出しで大物を出してこないだろうと思いつつも、いいや《暁に吼えるもの》ならばそういうことをやってくるとも思ってしまう。飛び出す人影に背筋が粟立つ。それが何ということはない市民眷属と分かって安心すると同時に、そんな自分を恥じるのも労力だ。
ついに我慢の限界が来て、俺は忙しなく駆けずり回っていた足を止めてぐっと腰を下ろす。返り血を浴びていない綺麗なままのアルルイヤが、揺らめいたかと思うと黒く炎上した。
「まだるっこしい、喰ゥゥゥらええええぇぇぇ!!」
俺はそのまま振り抜く。思い通り、魔剣の描く軌跡を黒の炎が嘗め尽くし、軌道上にいた眷属たちはばたばたと倒れ伏した。
《光背》の難点の一つはその形状、範囲の融通の利かなさだった。ある程度のところで止めることはできても、どうしても俺を起点に放たれる以上、そして超高速で伸びる以上、球形以外の形をとらせることは難しかったんだ。それが戦闘中ともなれば尚更。吹き飛ばす対象とそうでないものとを選り分けることも可能だが、細かい制御はアルルイヤに喰わせた時点で吹き飛ぶ。
そこで《火焔光背》。炎は物に沿い燃え広がるものというイメージを抱いているから、魔剣に纏わせるという
この燃える魔剣を振るっている間は《光背》での防御は使えない。けれどもそれも覚悟していたことだ。攻撃は最大の防御、出てくるはしから即座に焼き斬ってしまえばいい。聖究騎士だろうと何だろうと、どうせ操り人形なら負けるもんかよ!
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