おお?

 少しやりすぎてしまったかもしれない、とは反省している。

 しかし、こっちに来て十九年、転生前と合わせると四十年近くためこんだ俺の欲望は容易にとどまることを知らず、セリーナと何度も何度も交わった。

 セリーナは処女だったため、通常であればそんなに何度もできるものではなかったはずなのだが、ここには傷薬ポーションというものがある。最初の一回が終わったあと、セリーナは傷薬ポーションで傷を癒し、すぐにできるようにしてくれた。

 また、当初はまだ男を受け入れる体になっていなかったのだが、数をこなし、傷薬ポーションで回復させていくうちに、体がかなり馴染んできた。今日が処女喪失日とは思えないほどに俺を受け止められるようになって、さらに、少しずつ女性としての喜びも感じられるようになっていった。

 始めは無理をしていたのに、逆にセリーナの方から求めてくるようにもなっていって、お互いに止まらなくなった。もはや空っぽのはず、となっても、セリーナが調合した特殊な薬で回復し、続けた。どうやら媚薬の類いらしく、飲むと力がみなぎった。力強くなりすぎて体が心配になるくらいだったが、若い男性なら飲んでも悪影響はないという。高齢で使うと危険があるらしいので、五十過ぎたら使わないように、とのこと。

 なお、スライムを原料とした避妊具は実に完璧に機能した。感触を損なうことなく、中身を漏らすこともなく。これなら売りに出しても全く問題ないと確信できた。


 そんな夢のようなひとときを過ごし、夕方。

 隣には、裸のまま俺に抱きついて眠るセリーナ。流れる金髪も麗しく、一切隠していない豊かな膨らみもあまりに美しい。もうこれ以上は流石に無理だ、と股間は訴えてくるが、心だけは先走って、まだまだいけるぜ! とやかましい。いや、本当にもう無理だから。

 セリーナの頭を撫でながら、ぼんやりと天井を眺める。

 今日は本当に良き日だった。素晴らしい時間だった。世の男女ってこんなことしたのか、と驚きと嫉妬が入り交じる。もう嫉妬する側ではなくなったはずなのだが、もっと早くしたかったぜ、と思わないでもない。


 余韻に浸ってしまい、今はまだ何かをする気になれない。ただ、そろそろソラの待つ家に帰らないといけないとも思う。なんだか浮気でもしている気分だが、そういうのではないのである。ソラは、その、家族みたいな? 妹みたいな? ねぇ?

 奴隷として買った子ではあるけれど、家族として大事にしようとは心に決めている。性的な関係になんてなれなくても構わない。ソラが家にいてくれて気づいたが、誰かを大事に思うのは、それだけで生活が一変する。気力は沸いてくるし、何事もきちんとやろうと思える。

 童貞捨てるまで死ねん、という気持ちだけで生きてきた、というのは大袈裟だが、それ以外にも生きていく強い意思が芽生えた。


「どっちの方が大事、とかはよくわかんないけどな。って言ったら、セリーナは怒るかな?」


 小声で話しかけても、流石に疲れきって目を覚まさない。無防備な寝顔も可愛い。このまま休ませてやりたいが、眠っている間に出ていってしまうのも気が引けるな……。

 セリーナの頭を撫でていると、スラミが俺の頭にぽよんと乗ってくる。


「おっと、ほったらかしで悪かったな」

『んーん。いいよー。ラルフの幸せがいちばん』

「ってか、スラミには全部見られてたんだな……。恥ずかしいなぁ」

『今さらー? いつも全部見てるよー』

「だなー。精通の日だって知ってるもんなー。一人でしてるときも一緒だもんなー。今さら隠してもなぁ」

『でも……』

「ん?」

『ちょっと寂しい』

「スラミはいつも俺の大切な相棒だよ。ずっと一緒だ」

『うん……。そうなんだけど……。もっと、ラウルと仲良くなりたいなぁ』

「これ以上、どうするんだよ」

『うん……。ねぇ、今日手に入れた核、ちょうだい?』

「ん? いいぞ。スラミが倒したようなもんだしな。食べるのか?」


 あの核なら、売れば一万ルクくらいになるかもしれない。しかし、お金には困っていないし、スラミが欲しければ喜んで渡す。


『うん。それで……まぁ、見てて』

「うん?」


 スラミが俺の荷物を漁り、黒い核の欠片を取り出す。欠片と言っても、半分に割ったスイカくらいはあるが。そして、それを取り込んでじっくりと消化していった。


『うん。やっぱりだ』

「やっぱり?」

『……こういうの、ダメかなぁ?』


 スラミがうねうねと蠢いて、次第に体を変化させていく。すると……最後には、素っ裸の美少女が出現した。見た目は十四歳くらい、あどけない柔らかな顔立ちで、瑠璃色の長い髪をツインテールにしている。体つきは幼いのに、その胸はなかなかにぽよんぽよんで、いわゆるロリ巨乳。半透明な体ではなく、肌の色も人間のものになっている。


「お、おお!?」


 スラミは、人型にすることは前から可能だった。しかし、少しデフォルメされた外見になるし、質感もスライムのもの。肌も青いまま。それが、今はほぼ完璧に人間に化けている。あの核の魔力を取り込んだからか、あの核に擬態の能力があるのか。どうだろう?


「どうかな? 可愛い?」


 セリーナに気を使ってくれているのだろう、小声で話しかけてくる。


「……しかも普通にしゃべってるし。まぁ、可愛いぞ」

「ラウルの好みそのままでしょ?」

「待て。おっぱいはともかく、そこまで若い子が好みってわけじゃない」

「そう? んー、もうちょっと大人っぽくするか……。でも、ボクがラウルと出会ってから十四年くらいだし、人間にするとこれくらいでしょ?」

「そうだなぁ。でも……そもそもスラミって、女?」

「ううん。ボクに性別はないよ。ラウルが女の子大好きだから、女の子の体にしただけ」

「そ、か」

「ねぇ。ボク、もっとラウルと仲良くなりたいな。核のおかげで人間らしい体も作れるようになったし、もう初めては終わったんだから、ボクとだっていいでしょう?」

「いやいや……スラミとはそういう関係になろうとは……」

「ボク、ラウルの精液だって飲んだことあるんだよ? お掃除でだけど。だから、もういいじゃない? 仲良くなっちゃおうよ。……セリーナが許せば、かもだけど」

「セリーナが許すかなぁ……」


 こっちでは一夫多妻も認められているが、一部の人がやっているだけで、一般人は一夫一婦が主流。セリーナも、俺が他の女と仲良くなるのは嫌がるだろう。


「と、とりあえず、戻れ。セリーナには後で話してみる」

「うん。わかった。……たぶんだけど、セリーナよりボクの方が気持ちよくしてあげられるよ? 人間よりも器用なはず。楽しみにしててね?」


 スラミがしゅるしゅると小さくなり、いつもの球体に戻る。ぽよんと俺の体に乗って、まったりする。


「……どうしたもんかなぁ」


 最高の一日だったが、ちょっとした悩みごともできてしまった。

 スラミの好意は恋愛感情とかでは無さそうだが……恋じゃないからエッチしても浮気じゃないよね、とはならないだろうし。

 スラミとは健全な相棒関係でいたかったのが本音。でも、スラミの意思も尊重してやりたい。それでも、今一番に考えるべきはセリーナの気持ち。

 セリーナは裏切りたくない。スラミも大事だが、それは確か。

 セリーナの安らかな寝顔を眺めながら、俺は一人で小さく溜息を吐いた。

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