see you again
2563年、とつぜん宇宙人が攻めてきた。いまだ太陽系を脱出できていなかった人類にとっては非常に分の悪い戦いだったが、なんとか侵略を免れることができた。しかし代償は大きく、何百発と打ち上げられた核爆弾の汚染から逃れるため、人類は一度、地球から離れることを決意した。大急ぎで宇宙船が作られ、生き延びた人たちはこぞって荷物をまとめて乗り込んだ。無重力の世界で人類はさらなる繁栄をつづけた。星間航行技術は超光速を実現し、あらゆる汚染の浄化法を開発し、もろい肉体を捨て機械の体に適応し、望郷の思いを忘れないよう記憶と記録をデータ化して不滅を実現した。
『あと一分で、超光速航行を終了します』
アナウンスを認識して、わたしは電波を伝って視覚をシャトルの先端カメラに移した。みんな同じことを考えていたみたいで、回線はめちゃくちゃ混んでいたけれど、なんとか自分をもぐり込ませる。やがてパッと目の前に青く輝く惑星が現れた。細くつながる共感覚ネットワークから、壁を蹴ったときみたいに歓喜がわくのを感じる。これが、地球。わたしのなかの、三億六千年前のバックアップデータが、郷愁のコマンドを連打している。いつもは下層に押し込まれて現れることのないその声をズームして、噛みしめた。
『着地点探索のため、地表スキャンを開始します』
シャトルは惑星軌道上を移動しながら、つぎつぎに地上のデータを取っていく。人類が飛び立ってから長い時間が過ぎたのだ。今のわたしたちにとって、放射線も大気汚染も大した問題ではないけれど、きっとこの歳月は、ほろびかけた地球を緑のうつくしい星へと修復するのに十分だったはずだ。
『スキャン終了。最適ポイント抽出。降下開始します』
傾き始めたシャトルの中で、わたしたちは上がってきた映像データに飛びついた。濃く輝く木々の緑、深い海の青色、そこに住むたくさんの動物たち。こころを弾ませながら眺めるわたしたちは、やがて不思議な生き物に気づいた。巨大な岩を寄せ集めたような場所のすき間にうごめく大量のなにか。同じ体格のそれは、色とりどりのひらひらしたものをそれぞれ被っていて、うぞうぞと動いている。全体像からより詳細なスキャンデータに移っていくにつれて、だんだんとその形が分かってきた。頭があり、手が二本あり、足が二本あった。
『飛翔物接近。スキャン。爆発物と推測。対デブリ砲発射します』
轟音が鳴った。わたしたちの見つめる先で、激しい爆炎が上がった。飛んできた先を見ると、不思議な生き物たちが慌てふためくようにうごめいていた。
『対象を人類と認定。迎撃システム起動不可。砲台をロックします』
超望遠レンズ越しに、彼らとわたしたちは見つめ合った。彼らはわたしたちが捨てた薄オレンジの顔を伏せると、銃口をぴたりとこちらに向けた。
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