傘の花
雨が好きだ。
いや、そこまで好きという訳では無いが。
なんというか、小雨ぐらいの雨が好き。濡れても特に困らないし、幻想的だからだ。
目に映る世界全てにフィルターがかかって、なんだか、現実世界じゃないように見える。
目の前を横切る人々は皆、色とりどりの傘の花をさして足早に次の目的地への移動をする。赤や青、黒や無色透明。皆が皆、週の真ん中ということも含めて疲れた顔だ。
「…あ、あの人、綺麗だな。」
とか
「夜勤明けなのかな……?お疲れ様です。」
とかとか。
その人を見ては何か一つ、新たなストーリー。フィクションが綴られていく。
空っぽの手を振り、長靴のせいで歩き慣れない道を精一杯進み、この雨の中、まだ。私は歩く。
傘の花は、咲かせず、蕾のままで。
気まぐれストーリー 譲羽 命 @raasa
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