42章ー4
「フールルは本当に死なないのかな?? 再生能力とか凄いの? それともそもそも傷が付かない?? 死ぬとしたらどれくらいから? どれくらい切り刻んでも大丈夫かな? どれくらいの大きさなら再生できる?」
「あ、殺してくれそうな人だ」
「なりません!!」
パッと表情を明るくするフールルに、青ざめる白の子と呼ばれる男。
魔族の少年も嬉しそうにふにゃんと笑う。
「ナニナニ、ボクら相思相愛~?? やったぁボク、フールルの事、頑張って殺してみるね!」
「お願いします。そうですね、まず手始めに首、斬ってみます?」
「よっしゃあ~。じゃあ、ぐっばいおぶ首ぃ!」
鼻歌でも歌わんばかりに楽しげに、漆黒の刃を取り出したるは魔族の少年。なれど直ぐさま白の子と呼ばれる男の刃に弾き返される。
流れる動きで少年の首を執拗に断とうとする男。
白刃は踊り、首を狙う。
しかし刃は少年の首を斬るも、水を断つ手応えしかない。
その断面は影のようにただ黒く。鮮血もなく骨も肉もありはしない。
人間の身体では有り得ぬ現象、やはり彼は魔族なのだ。
クスクスと少年は笑う。
「弱体化が酷いね~。ボクのこと、殺せないんだ?」
「見える事象で誤魔化されると思っているのか? 化けの皮なら剥がれているぞ、死に損ない」
男に一切の動揺はない。
フールルの目には、少年に特に外傷は見られないが、執事を名乗る男の様子だと中々の手傷を負わされているようだ。されど魔族の少年は飄々と、何の損傷も見受けられない所作で肩をすくめる。
「えーバレてんのつまんない~。はぁい分かりました~。今日の所は殺さないです-」
「残念です。次の機会を楽しみにしておきますね」
「うん。直ぐ回復して殺しに行くから待っててね」
言うなり少年はザックリ頭を斬られていた。
フールルの目には剣が頭をすり抜けたようにしか見えなかったが。
いたいーと気の抜けた声で訴えている辺り、それなりに痛かったのだろう。傍目にはどれ程の損害なのかちっとも分からないが。
そんな魔族の少年に頓着する事無く、白の子と呼ばれる男は忌々しげに溜息を吐く。
「どうしてフールル様には頭のおかしい輩ばっかり寄ってくるのか。私以外の男は皆死ぬべきでは??」
(いや、貴方がそれ言う??)
「? 何か仰いましたか?」
「いえなにも」
「あはは。シロノコ、あったまおっかし~い☆」
「お前が言うな!」
さて、と白衣に付いた埃を払って魔族の少年は言う。
「思い出したら定期診察に来ちゃうから、その時は細切れから始めてみようか?」
こてんと首を傾げる姿はとても可愛らしかった。
「はい。お待ちしてます」
「2度と来るなよクソ魔医者!」
その瞬間、魔族の少年に電撃が走った。
「魔医者……魔医者! 君天才じゃない?!」
「はあ?」
「ボク固体名マイシャーっていうんだよ。魔医者のマイシャー。これ天才の名乗りなのでは??」
「お前の名前など知るはずもないだろう」
「知らない癖ににマイシャー魔医者て呼んだんだ……! ぷぷぷ、無駄に奇跡ってるぅ」
「っふふふ。凄いわ白の子。天才的駄洒落なのでは……!」
「あんまり嬉しくないですフールル様……!」
42章 どうして君は生きているのか?(1) 終
→ 104章 愚帝来訪
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