第2話 井の中の蛙
俺の病室は4つのベッドがある。その内の1つは使われていないらしい。俺のベッドは1番奥で、窓から外の景色が見える。隣はずっとカーテンがされていて、どんな人がいるのか分からない。斜め前のベッドにはおばあさんがいて孫らしき人がお見舞いに来ていた。しばらく経ち、陽が沈みかけてきた頃、隣のカーテンが突然開いた。そこにいたのは、夕焼けが当たって輝いた可愛らしい女の子だった。俺はその姿に釘付けになった。すると少女が口を開いた。
「初めまして。生田栞といいます。一応中学3年生です。」
一応ってどういう事だ?
「あの、お名前なんて言うんですか?」
「あ、俺は海野翼っていいます。高2です。
あの、一応ってどういう事ですか?」
「私、産まれた頃から心臓が弱くてずっと病院で暮らしているんです。一応オンラインで授業は受けてたりしてるんですけど、遠足とか体育祭とか、そういうの経験したことなくて…。まるで井の中の蛙みたいですよね。でも、いつか出来るようになるって信じてるので平気です!」
栞は笑いながらそう言った。だが、その笑顔の裏には声にならない悲しみの気配がした。
井の中の蛙は大海を知らない。だが、希望を抱く。 美野新一 @sorakaitoore0316
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