第179話 作ったプログラムはテストしろ!

 アスミ曰く、

 運営によると、ダメージ計算式が実装されたプログラムはA国によって改ざんされた。

 今、そのプログラムは、プロテクトを掛けられ元の状態に戻すことが出来なくなっているらしい。


「つまり、A国はモンスターを自由自在に強く出来るということか」


 リンネはそう話をまとめた。

 アスミは頷いた。


「では、運営にこんなことが出来るか訊いてみてくれ。今のダメージ計算式が実装されたプログラムをコピーし、我々用の物を作る様に」

「リンネ、それは一体?」

「我々、人間のためのダメージ計算式を用意する。人間がモンスターを攻撃するとその計算式が発動するようにプログラムを作ってもらう。人間とモンスターがMAXでぶつかり合うことになるが、それしかあるまい」

 

 なるほど。

 毒をもって毒を制すか。

 リンネの意図を理解したのかアスミは目を閉じた。

 きっと運営と通信しているのだろう。


<出来る>


 おお。

 僕は思わず手を叩いた。

 「だが」とその後、アスミは続ける。


<タイムリミットが迫っているから、実装までしか出来ない>

「別に問題ないのでは?」


 実装出来るなら、その計算式で戦える。

 問題ない。

 僕はそう思っていた。


<ユウタ。プログラムというものは本来、作って終わりという訳じゃないんだ。普通はテストをして不具合を見つけ出してからリリースする>

「え?」


 テストって何?

 不思議そうな顔をする僕を見たアスミは、説明する。


「実装したプログラム、今回はダメージ計算式が書き込まれたプログラム。これを動かしてバグが無いかを確認する作業だ」


 なるほど。

 バグがあっては使い物にならないのか。


<作って、実装し、テストする。そこでやっとリリースされる。定期的に行われた世界更新アップデートも、同じ過程を長い時間掛けて行い、リリースされていた>


 僕はアスミと話して分かった。

 この世界、つまりは魔界プロジェクトはプログラムの塊だった。

 それは多くの開発者が携わって創り上げた、電子の世界。


「でも、これまでの世界更新アップデートにだってバグはあったし、ちょっとのバグなら平気だよ。それに今は時間が無い」

<ユウタ、そんな簡単なものじゃない>


 アスミは首を振った。


つづく

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