第178話 攻撃力計算プログラムの改ざん

「元々この世界を作ったのは運営なんだよね。なのに、魔王を弱くすることも出来なければ僕達を強くすることも出来ないんてクソ運営だよホント!」


 僕は取り乱した。

 周りの皆が突然大声を出した僕を見て驚いている。


<ユウタ。ハッキングされる前なら運営も自由にモンスターの強さを調整出来た。だが、今となってはそれは無理なのだ。今の状態で我々はどうにかして魔王、つまりA国の王を倒すしかない>

「でも、奇跡を起こしても勝てないかもしれないんだよね……」

<やれるだけのことはやる。それしかない>


 ここにいる生き残った全てのメンバーのスキル、魔法、攻撃を総動員して魔王と戦うしか無い様だ。

 その果てに、全滅が待っていたとしてもだ。

 何故なら、留まることは死を意味していた。


<ユウタ、ゲームに完璧な攻略法なんてないのだよ。そして、色々なクリアの仕方がある。だからゲームは人をひきつけるのだ>


 アスミの声は平板だが優しさを感じた。

 僕達はゲームの世界にいる。

 従って、ゲームの本質に従うしかない。

 アスミが言う通り、この世界はゲームで出来ている。


<あと20分しかない……>

「おい」


 リンネが割り込んで来た。


「モンスターは人間な訳だろ?」

<ああ>

「例えば、地球ちきゅうにいる兵士の一撃が、ここではゴブリンの一撃な訳だろ?」

<うむ>

「モンスターの強さが上がるってことは、地球ちきゅう側の人間が強くなったてことなのか?」


 リンネと僕とアスミで通信が始まった。

 リンネは何を聞き出そうとしているのか。


<地球ちきゅう側の人間は強くならない。元々本人が持つ強さのままだ>

「じゃ、どうしてモンスターはハッキングされたことによって強くなっているんだ? 元々紐づいている人間が弱ければハッキングされたとしても弱いままなのでは?」


 確かにそうだ。

 地球ちきゅうにいる人間がドローンを攻撃するから僕らはダメージを受ける。

 その人間自体の強さは、ハッキングしてサーバの中をいじくれたとしても変えることは出来ないのではないか。


<リンネ。モンスターが攻撃をして我々が受けるダメージは複雑な計算式によって決まっている。A国はその計算式を読み解いた。最弱の攻撃でも最大のダメージを受ける様に、その計算式が埋め込まれているプログラムを改ざんしたんだ>

「なるほど……」


 地球ちきゅうでは、最弱の村人が放つへなちょこパンチが、コツンとドローンに当たるくらいのものだ。

 が、この世界では、最高のメガトンパンチとして僕らにヒットする。

 リンネが目を瞑り、腕を組んだ。

 集中しているのが分かる。

 彼女の頭の中で脳が高速回転で回っている。


「……そのプログラムを、我々の側でいじることは出来ないのか?」


つづく

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