第170話 ゲームのプログラミング

「そもそもの疑問があるんだけど……」


 僕はこの世界の仕組み、つまりゲームの仕組みを理解した時から気になっていたことがあった。

 それをアスミに問い掛けた。

 ただし、周りに聞こえない様に通信で行った。

 モンスターと地球ちきゅうの人間が紐づけられていて、モンスターを殺すと地球ちきゅうの人間が死ぬことを知っているのは僕とアスミだけだからだ。

 そんなことを皆が知る必要は無いし、僕が受けたショックを皆が受けて欲しくない。


「モンスターの難易度ってどうやって調整してるの?」


 強くしたり、弱くしたり、どうやって運営はそれを行っているのか?


「モンスターが強いと、地球ちきゅうにいる紐づけられている人間も強いんじゃないの? 逆もしかりで」

<ユウタ。その通りだ。モンスターの強さと地球ちきゅうの人間の強さは比例関係にある>


 つまり、最弱のスライムは地球ちきゅうでは最弱の村人が紐づけられている。

 強いボスモンスターは地球ちきゅうでは強い兵士が紐づけられている。

 そういうことだろう。


「じゃ、運営も難易度を操作出来ないし、その……ハッキングとやらをされても難易度を操作出来ないのでは?」

<モンスターの強さのベースは地球ちきゅうにいる人間の強さで決まる。だが、モンスターの特殊スキルや魔法は運営側でプログラミングすることで設定出来る。そうやって難易度を操作していた>


 例えば、地球ちきゅうの人間が手りゅう弾を投げつけてくれば、ゲームではそれは炎の魔法として発動する。

 普通じゃないのは、村人がただのパンチを繰り出した場合も、モンスターによっては炎の魔法として発動されることだ。

 地球ちきゅうの人間が弱くても、ゲーム側で発動されるスキルや魔法を強力にすることで、モンスターの難易度を変化させていた。

 アスミによるとその他にも調整出来る方法はあるとのことだ。


<運営としては、ゲームを面白くするためにやったことなんだ。敵が強い方が攻略し甲斐がある。プレイヤーは長くゲームにのめり込んでくれるから。国としては沢山の人にゲームに参加し、A国の人間を殺して欲しいからな>


 何とも、良く考えられた仕組みだった。

 狩り場に現れるモンスターが減っているのも、A国の人間が減っているからだろう。

 僕らによって殺されることで。


「でも、最後の世界更新アップデートでは、そんなこと関係なしに全てのモンスターが弱体化してるよ」


 全てのモンスターがアスミが言う難易度調整方法を無視して、ベースから弱くなっている。


「日本の兵器が強力になった」

<兵器?>

「この世界で言うところの、武器や防具だ」


つづく

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