第169話 転生したゲームの世界がハッキングされた件

 鱗に覆われた巨人のステータスを確認した。


 オサカナクソン

 HP:99999

 MP:99999

 攻撃力:99999

 防御力:99999

    :

    :

 素早さ:1000


「な、何てステータスだ!」


 魚座の段のボスモンスター、オサカナクソンの主なステータスの限界を示していた。

 否、正確にはこの世界で99999以上を見たことが無い、と言った方が正確なのかもしれない。

 唯一の救いは素早さが劣っているというところか。


「もしかしたら魔王より強いんじゃないのか!?」


 そう言いながら竜神の剣を構えるマリアンの攻撃力は89000だった。

 

 オサカナクソンが持つ凸凹した鉾は、よく見るとフジツボがびっしり張り付いていて、何ともグロテスクだった。

 尖った口をパクパクさせながら、その鉾を振り回す。


全防御壁オール・ディフェンシブ・ウォール!」


 後方に控えていた付与術師のロドリゴがそう唱えると、パーティメンバー一人一人の前に光の壁が現れた。

 オサカナクソンの重い一撃がその壁にぶち当たる。

 光の壁にひびが入った。

 その壁のお陰で僕らはダメージを受けずに済んだ。


「皆、一旦、下がろう!」


 ロドリゴが後退しながら叫ぶ。

 皆、頷いた。



 モンスターから10メートル離れれば逃走は成功する。

 オサカナクソンは素早さが劣るので、僕らに追いつくことが出来なかった。

 僕らは逃走に成功した。


「難易度が下がったんじゃないのか!?」


 マリアンが床を蹴りながら、アスミに文句を言う。

 アスミは何も答えない。

 彼女は目をつぶったまま、何かを待っている様だ。


「おい、何とか答えろ!」


 マリアンに襟をつかまれ揺さぶられたアスミは、ゆっくりと瞼を上げた。


「さっき、運営からの通信が来た」


 皆、彼女の方を一斉に向いた。


「一体、何と?」


 僕は問い掛けた。


「難易度が上がった」


 周囲がざわついた。


「アスミさん、もう少し詳しく教えてくれませんか?」


 ガイアが眉根を寄せ詰め寄る。

 先程のオサカナクソンの不気味な顔が脳裏を過る。


「厳密に言うと、地球ちきゅうに存在する魔界プロジェクトのサーバがA国からハッキングされた」


 サーバ?

 ハッキング?

 その言葉の意味を、アスミはこう説明した。


「この世界、つまり魔界プロジェクトはサーバという機械の中で作り出された電子的な世界。それがハッキング、つまりA国から遠隔で攻撃され乗っ取られた」

「つまり、この世界は敵の思うとおりになったということか?」


 アスミは首を横に振った。


「運営も黙って見てはいない。国からの指示を受け対策を講じている。ただ、今のところモンスターの強さに関してはA国の思うとおりになっている」


つづく

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