第168話 設定が高校生だったら、付き合う話になってる
「リンネ、今は進むことだけを考えよう」
僕は彼女の肩に手を置き、前を指差した。
「ゲームクリアしか道はないんだ。それでどうなるかはハッキリ言って僕も確信は持てない。だけど……」
僕は息を吸い込んだ。
「僕の命に代えてでも、皆を
もう運命を掌の上で転がされるのはごめんだ。
最後の最後は、僕が僕の意志で決めた世界にしてやる。
「ユウタ……」
リンネが僕をじっと見ている。
無表情だった。
だけど、それは揺れる気持ちを必死に抑えているかのような無表情だった。
彼女はその感情を僕に悟られまいと一生懸命に無表情であろうとしていた。
「リンネ、僕には……」
「分かってる。お前にはフィナがいるのは」
前を行く皆がだいぶ遠くなってしまった。
そろそろ追い掛けなきゃ。
否、今はそれよりもリンネとこの時を過ごすことが大事だ。
「ユウタ、
「え……?」
確かにNPCのフィナは、
だから、リンネがそう言ってくるのも必然だった。
リンネの頬は真っ赤に染まっていて、長いまつ毛には涙のしずくが付いていた。
彼女の表情はもう、その内に秘めた感情に染まっていて、ずっと溜め込んでいたものが一気に噴き出したかのようだった。
僕はこれほどまでに想われていたことが嬉しかったし、リンネのその泣き顔が可愛いのでドキドキした。
だけど、どう返答していいか困っていた。
「きゃー!」
フィナの叫び声が聞こえる。
パーティが進んで言った方向だ。
「リンネ、今は……」
彼女は小さく頷き、走り出した。
僕の横を通り過ぎる時、涙をぬぐっていた。
ごめん、リンネ。
今はまだ、はっきりした返事をすることが出来ないよ。
「つっ、強い!」
後ずさりするマリアンの赤い髪が目に飛び込んで来た。
彼女の前には身の丈10メートルはあろうかというモンスターが、塔のようにそびえ立っていた。
一瞬、トロルっぽい巨人を思わせた。
巨人は巨人だが、頭が魚だった。
焦点の定まっていない両目に、尖った口。
身体は鱗で覆われていて銀色に光っている。
右手に矛を持ち、左手には盾を持っている。
「ここのボスモンスターです」
ガイアが僕の側に来て、説明する。
このモンスターの後ろには扉があり、それは開いていた。
そこには魔王の段へと続く階段が見えた。
つづく
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