第164話 名も無いパーティのある戦い

 街から1kmほど外れにある砂漠。

 そこに平均レベル20のパーティが狩りをしていた。

 戦士、妖術師、武闘家、治癒魔法使い、侍といったオーソドックスな構成だった。

 丁度、一行は砂漠の真ん中にある泉に差し掛かったところだ。


「おお! 恵みの水!」


 お調子者の戦士がそう叫び、大きなガタイを宙に躍らせ泉に飛び込む。

 激しく飛び散った水しぶきを浴びた治癒魔法使いの女が嫌そうな顔をする。


「おい、気を抜くな! クエストの最中だぞ!」


 規律を重んじる性格の侍の少年が叱る。


「いいじゃねぇか! ちょっとは息抜きも必要だ!」


 戦士は泉の中を泳ぎ始めた。

 彼らは『砂漠の忘れ物』というクエストの最中だった。

 このクエストは街の商人(NPC)から依頼を受ける初心者向けの者だった。

 その商人はサンドウオームの触手を集めていた。

 触手は防具の素材として市場では高値で取引されている。

 クエストの内容は、砂漠にいるサンドウオームがドロップする触手を5個集め商人に渡すことだった。

 彼らは既に4つ集めていて、最後の一つを探していた。

 つまり、サンドウオーム遭遇の旅の途中だったのだ。


「おっ、おい! 後ろ!」


 武闘家の青年が指差す先には、黒くて大きな穴が広がっていた。

 正確には粘液をまき散らすサンドウオームの口が戦士を飲み込もうとしていた。

 巨大な腸の様な体が砂の中から突き出し、先端が大きな空洞の様になった生き物。


「何だよ! ハハハ!」


 戦士は気付かない。


炎鉄砲ファイアガン!」


 妖術師の女の手から炎のつぶてが放射された。

 サンドウオームの口に灼熱の玉が殺到する。


「げぴ!」


 口を統べ目、長い体をのけぞらせる。

 体中から一瞬無数の触手が飛び出す。


「うわ! 気持ち悪い!」


 治癒魔法使いの女子が口に手を当てる。



 その頃、地球ちきゅうでも同じように戦いが行われていた。

 それは、魔界プロジェクトと違う。

 人間と高性能AIと銃器を積んだドローンとの戦い。

 人間の兵士はドローンに搭載された機関銃の放射を受け、右手を吹き飛ばされた。

 痛みに耐えながらも兵士は、手りゅう弾を投げ、応戦する。



 戦士はサンドウオームが口から吹き出した粘液でどろどろになった。


「うわ! なんだこれ!」


 べとつく粘液は当初、気持ちが悪いだけで害はないと思われた。

 それが油断に繋がった。


「骨が、骨が見える!」


 メンバー達が戦士に泉の水を掛けるが、まとわりつく粘液は取れない。

 戦士の身体は見る見る溶け、肉が削げ落ち、骨だけになっていた。



 ドローンは攻撃を受け墜落した。

 だがあと4機のドローンが兵士を囲んだ。


つづく

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