第130話 メイド服の侍女は天然エルフの扱い方に慣れっこです

 翌日。


『ラストダンジョン攻略会議』 


 姫主催の会議。

 そう銘打たれた打ち合わせに私は呼ばれた。


「リンネ様、お初にお目にかかります。姫の侍女をしているシィダと申します。よろしくお願いいたします」

「うむ」

 

 メイド服にメガネで黒髪の真面目そうな女が出迎えてくれた。

 姫はNPCだが、侍女である彼女は人間だった。


「そちらは、ユウタ様に、ガイア様、……そして、ことらは?」


 シィダが背伸びし私の頭越しに、目を細める。

 視線の先には尖った耳と緑の髪。


「フィナだよ。エルフの」


 明るい声でフィナが応える。


「リンネ様、これは一体?」


 亜人間のフィナを見て、シィダはどうすべきか迷っている様だ。


「僕の大切な人です」


 ユウタがすかさずフォローに入った。



「ガイア様とフィナ様は、ここでしばらくお待ちください」


 姫がいる大広間の扉を前にして、シィダが頭を下げる。


「え~!? なんで!? ユウタと一緒がいい」


 フィナは地団駄を踏み駄々をこねる。

 石畳に彼女の足踏みが鳴り、円形の天井にこだまする。


「秘密は多くの人間の前で話してはならない。少ない人数で共有すること。それが情報漏洩対策だと姫は仰っています。ご協力ください」


 人の口に戸は立てられぬ。

 フィナにそんな難しいこと言っても分からんだろう。

 案の定、彼女は目が点になっている。

 そして、すぐさま表情が険しくなる。

 難しいことを言われても理解出来ないが、仲間外れにされた疎外感は感じている様だ。


「フィナ、大人になれ。今から大事な話なんだ。ただの内緒話とは違うんだよ」


 ユウタにそう言われても不服そうな顔のままだ。

 私はフィナが2000歳だとはどうしても思えない。


「フィナ様。別部屋にてケーキを用意しています」

「え!? ホントぉ!」


 急にフィナの顔が明るくなった。

 シィダは出会って数分でフィナの扱いに慣れた様だ。

 私もそんなスキルが欲しい。



 円卓の中央に座るは、黒髪の美少女。

 頭頂部に出来たツヤはまるで、天使の輪の様だ。

 彼女の瞳に、私が映り込んでいる。

 この世界の人間を統べる者である姫の姿を、私は初めて見た。


「リンネが地球アースのギルドマスターになりました」


 凛とした姫の声が響く。

 パラパラと拍手が起こる。

 招集された5大ギルドメンバーが私に向かって目礼する。

 私は初めて見るメンバーが全員美少女だということに驚いていた。


つづく

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