第131話 美少女5大ギルドマスター、救世主に対するそれぞれの反応は?

「そして、救世主のユウタ」


 姫がユウタを、皆に紹介する。

 私が紹介された時よりも、多少大きな拍手が起こる。

 あのマリアンまでもが手を叩いている。

 変わり身の早さに驚かされる。


「皆さん、よろしくお願いいたします」


 ユウタがペコペコと頭を下げる。

 美しい女に囲まれて、照れているのか?

 救世主なんだから、美少女ごときにおろおろするな。

 もっと堂々としろ。

 卑屈過ぎるとなめられるぞ。

 そして、だ。

 ちょっとは私のことも考えろ。

 腹が立つ。


「まだ16歳なんですねぇ。私より年下が救世主とは。よろしくお願いいたします」


 『ジャヴァ・パイソン』のギルドマスター、アスミがユウタに会釈する。

 伸ばし放題の黒いぼさぼさの髪。

 前髪が丸眼鏡のレンズに覆いかぶさっている。

 これがギルマスかと思う程、華奢で一見弱そうだ。

 職業はプログラマだとステータスに表示されているが、そんな職業初めて見た。


「ユウタ、久しぶりですわね。リンネも」


 めんどくさい敬語を使ってくるのは、かつての私のバック、つまり鉄騎同盟の親ギルド『絶対成敗』のギルドマスター、モモ。

 鉄騎同盟の頃に彼女の姿を何度か見たが、その服の趣味は相変わらずの様だ。

 黒髪ツインテールに白いエプロンで黒のメイド服。

 ところどころにフリルやレースがあしらわれている。

 この世界では、一見すると戦闘向きではない格好が、実はそうではないことがある。

 モモのエプロンは銀龍の髭が編み込まれていて、防御力が高い。

 かく言う私の黒装束。

 これも一見防御力が低そうだが、高難度クエストを攻略しないと手に入らない布が素材として使われている。

 要は素材が良く、創作力が高ければ、メイド服は鋼鉄の鎧をも凌駕する防御力を有する。

 妖術師である彼女は、重い鎧などを装備出来ない代わりに、こうした軽くて丈夫な防具を高価だが好んで使用している。

 暗殺者である私は、素早さを重視しつつも、防御力が欲しいのでこの黒装束姿が気に入っている。


「救世主、魔王を倒すのに何か必要な武器は無いか? 仕入れて来あげましょう。ただし、救世主といえど、ちゃんとお金は払っていただきますよ」


 そこかしこで笑いが起こる。


「がめついな、ロゼは」


 誰かがそう言った。

 手もみしながら言うのは、『富の会』のギルドマスター、ロゼ。

 商人である彼女は、この世界にある様々な素材、武器、防具、アイテムを安く仕入れ、高値で売りさばくことで莫大な富を得ていた。

 マリアンと同じように、この世界での生活を好き好んでいる者の一人だろう。


「……」


 ただ一人、マリアンだけは何も言わなかった。

 もうすでに、ユウタと私、そして彼女はお互いのことをある意味知り尽くしていた。

 あれほど命の奪い合いをしたのに、こうして同じ場所で大人しく向かい合っているというのは、何だか妙な気分だ。

 お互い思うところはあるが、今は利害が一致しているので行動を共にしているだけだ。

 話がひと段落したのを見計らったように、姫が一言、


「すでに顔見知りの者もいるだろうが、ここは私の顔に免じて皆、魔王討伐に向け建設的な話し合いをして欲しい」


 姫はまるで私達のそれまでのことを知っているかの様に、そう言った。


つづく

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